ロシアとウクライナのふたつの国の穀物の輸出量は、世界で 3分の1から 4分の1を占めていました。
世界の穀物輸出量の割合
Bloomberg
そのうちのウクライナが、すべての穀物の輸出を禁止したことを以下の記事で取りあげました。
[記事] 世界第5位の小麦輸出国であるウクライナが、小麦を含む「すべての穀物の輸出を禁止」する緊急命令を発表
地球の記録 2022年3月10日
そのウクライナは、現在、春の作付けシーズンですが、肥料、殺虫剤、農業危機の燃料などの深刻な不足に見舞われており、今年の収穫状況に影響が出ると見られていると報じられています。
そのような中で、一大穀物輸出国であるロシアが、どうやら正式に、
「すべての穀物の輸出を禁止する」
という措置に出るようです。
ロシアのインターファクス通信が伝えていました。
以下のように報じています。
ロシアは3月15日から6月30日まで小麦、ライ麦、大麦、トウモロコシの輸出を禁止する可能性がある
ロシアは 3月15日から 6月30日まで小麦、ライ麦、大麦、トウモロコシの輸出を禁止する可能性があると農業省は述べた。
同省の報道機関は、「農業省は、産業貿易省とともに、今年の 3月 15日から 6月30日まで、ロシアからの基本的な穀物の輸出を一時的に禁止する政府決議案を起草した」と述べた。
一時的な禁止は、3月15日から6月30日までの小麦、ライ麦、大麦、トウモロコシの輸出に適用される。 (Interfax)
これにより、ウクライナの輸出禁止と合わせて、世界の3分の1ほどを占める小麦の他国への輸出が消えることになります。
問題は、このようなロシアとウクライナの措置に対して、他の国でも「自国の穀物を保守する動き」が出てきた場合です。つまり、「輸出禁止が拡大する」という懸念です。
というのも、先に、ロシアは「肥料の輸出禁止」を発表しています。
[記事] 肥料の原料「硝酸アンモニウム」の世界最大の輸出国であるロシアが、輸出を停止
地球の記録 2022年2月28日
この措置により、ロシアから肥料原料を輸入していた多くの国が、肥料不足にすでに陥っている可能性が高く、以下の記事では、アメリカでさえ肥料が不足している可能性が示されています。
[記事] 肥料パニック : アメリカの多くの農家の人々が「肥料を手に入れられていない」模様
地球の記録 2022年3月14日
現在の肥料の高騰あるいは不足は、地域的な問題ではなく、全世界的な問題となっているはずで、状況が「世界全体の穀物生産の縮小」に向かっている可能性もないとはいえず、結果がわかってくるのは、半年後などではありますけれど、結構とんでもないことになるのではないかという懸念はあります。
また、ロシアの穀物輸出禁止と聞きますと、12年前にあったことを思い出します。
2010年にも、ロシアは小麦の輸出を禁止したことがあるのですが、当時、国連の世界食糧計画は、その小麦の「 95%」をロシアからの輸入に依存していました。
現在はまた違うとは思いますが、ロシアからの小麦輸入が途絶えた場合、世界食糧計画の活動にも影響は出るとは思います。最初に影響を受けるのは、食糧援助を受けているような国や地域の人々だとも考えられます。
以下は、当時の報道を翻訳した記事です。
ロシアの小麦輸出禁止は食糧援助にむち打つものだ - 世界食糧計画
Dow Jones Newswires 2010/08/10
ロシアの小麦輸出禁止措置により、発展途上国に届けられる食糧援助の量が削減されることになり、世界のもっとも貧しい何百万人の人々は飢えていくことになるかもしれないと世界食糧計画( WFP )は警告した。
WFP のスポークスマンがダウ・ジョーンズ・ニュースワイヤーに語ったところによると、ロシアの輸出禁止によって小麦価格が急騰しており、このままでは小麦の入手が滞る恐れがあり、現在、ロシア側に人道支援用に関しての小麦輸出禁止の免除の方策を探しているという。 WFP は国連の機関で、人道的な食糧援助機関としては世界でもっとも大きい。
「この高い小麦価格がさらに多くの人々を飢えさせていくのは明白だ。現在、私たちは、人道援助のための輸出禁止の免除を求めている」と、 WFP のスポークスマン、キャロライン・ハーフォード氏は述べた。
WFP は2009年、人道危機や紛争地帯を含む73の国に食糧を供給した。 WFP が2009年に購入した食糧260万トンのうちの3分の1以上は小麦で、小麦の不足は、非常に多くの人道援助に影響する。
WFP の小麦の約95パーセントは、ロシアの黒海周辺で生産されたもので、この地域は、世界の小麦の約4分の1を生産している。しかし、この地域一帯は今年、猛烈な干ばつによって、多くの収穫を失った。そして、ロシア政府は、8月15日からロシアからのすべての穀物の輸出を禁止すると発表した。
ここまでです。
しかし、今回の場合は、影響は主要国も含めた全世界に及ぶはずで、それは、半年後、1年後かもしれないですが、たとえば、日本の次の小麦価格の決定時期の 9月にどのようなことになるのか想像もできない感じです。
それでも、いくら高値でも、手に入るならまだいいのかもしれません。それ以上の事態も考えられなくもないです。