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アメリカで小麦生産量が最も多いカンザス州やテキサス州の冬小麦収穫が、雨不足により過去最低レベルになる見通し。しかもカナダからの肥料の流入も停止中

投稿日:2022年3月22日 更新日:


AG WEB




 

先日の以下の記事で、 NOAA (アメリカ海洋大気庁)によるアメリカの春の気象状況は、「西部と中央部で極端な水不足となる」と予測されていることを取り上げました。

[記事] 米海洋大気庁が、アメリカ西部から中部の全土の60%近くが「7月まで雨がほぼ降らない極端な干ばつ」と予測。その一方で東部では春の洪水リスクが高いと発表
 地球の記録 2022年3月20日

 

その後、アメリカの作家マイケル・スナイダー氏のウェブサイトの記事で、

「すでにアメリカでは、干ばつにより冬小麦に影響が出ている」

ことを知りました。

小麦には、「冬小麦」と「春小麦」いう区分があり、冬小麦は、秋に植えられ、冬に休眠状態となった後、春に芽を出し成長していくというもので、この時期には、「十分な水分」が必要ですが、冬小麦の生産地域では、冬から現在までの時点で、

「深刻な干ばつ」

が示されています。

以下は、3月17日時点でのアメリカの干ばつ状況です。赤や茶色の地域は、極めて厳しい干ばつとされる場所です。

アメリカの干ばつ状況

US Drought Monitor

 

そして、この赤や茶色のエリアの中に、アメリカで最大の小麦生産地域であるカンザス州、オクラホマ州、テキサス州などが含まれています。

農業情報サイトによれば、現時点で、過去4年で最悪の収穫状況が予測されていますが、今後気候に改善がなければ、さらに悪化していく可能性があるようで、状況として、今年のアメリカの小麦生産はかなり厳しい局面にあるようです。

 

また、これは別の話ですけれど、アメリカの多くの州では、「肥料」をカナダから輸入しているそうなのですが、そのカナダとアメリカを結ぶ鉄道が、「労働者たちのストライキで停止している」ため、「肥料がアメリカに入らない」と報じられています。

[報道] カナダ太平洋鉄道の停車は米国の農業に打撃を与える可能性がある (2022/03/22)

> カナダ太平洋鉄道などの 3,000人以上の責任者、エンジニア、労働者たちは、双方が深夜の締め切りまでに合意に達することができなかったため、運行を停止している。

> カナダ太平洋鉄道はアメリカ中西部の大部分への輸出をカバーしており、農業用のカリと肥料の大規模な荷主だ。

 

干ばつに加え、「作付けの時期に、肥料がアメリカに入ってこない」という事態にも直面しているようで、緊迫した状況は拡大しています。

カナダの問題以前に、アメリカの農家の方々が十分な肥料を入手できていないことについては以下の記事などで取りあげています。

[記事] 肥料パニック : アメリカの多くの農家の人々が「肥料を手に入れられていない」模様
 地球の記録 2022年3月14日

 

アメリカの冬小麦の状況について、農業情報大手である AG WEB の記事をご紹介します。


平野部の干ばつが米国の小麦の収穫を抑制しており、世界的な供給の懸念が増している

Plains Drought to Curb U.S. Wheat Harvest, Adding to Global Supply Worries
agweb.com 2022/03/14

ロシアのウクライナ侵攻が世界の供給を圧迫しているが、米国平原南部での干ばつの悪化がこの地域の冬小麦の収穫を脅かしている。

米国の小麦生産量が最も多い州であるカンザス州南西部の一部では、10月以降、測定可能な雨や雪がほとんど降っていない。冬小麦は秋に植えられ、冬に休眠状態となり、春に緑の芽を出し始める。作物が成長するためには、この段階で適切な土壌の水分が重要だ。

国立干ばつ緩和センターによると、カンザス州の半数以上が、3月8日の時点で、2018年以来最も乾燥した状態となっており、深刻な干ばつは「極端に悪い」状態に分類された。

この深刻な干ばつはまた、オクラホマ州の 4分の3とテキサス州の 3分の2以上を覆っている。どちらの州も大規模な小麦生産地帯だ。

また、昨年 12月には、米国の小麦地帯の一部の表土を一掃し、一部の農地に損害を与えた異常な暴風雨からも影響を受けており、その中でこの極端な干ばつが発生している。

米国の冬小麦は、米国全体の小麦生産量のほぼ半分を占めており、主にパン粉用に製粉される。これらの小麦収穫量の減少は、国連食糧農業機関(FAO)が 2月に史上最高であると述べた食品インフレを、さらに悪化させる可能性がある。

FAOの食品価格指数は先月平均 140.7ポイントで、前年比 20.7%上昇し、2011年の記録を上回った。

ロシアとウクライナの紛争が、これらの世界最大の小麦輸出業者 2社を市場から追い出したため、米国の小麦先物は先週初めに 14年間で最高水準に急上昇した。

現在、小麦の輸入国が代替の供給源を求めて争っている。

その一方で、世界最大の穀物生産国である中国の今シーズンの冬小麦は、大雨により作付けが遅れた後、史上最悪の収穫になると予想されている。

(※) これについては、過去記事「中国の冬小麦の収穫が「国の歴史上最悪」であることを農業当局が発表」にあります。

 

米国の冬小麦は 6月と 7月に収穫される。

現在の冬小麦の問題は、干ばつに襲われた 2番目の連続した米国の小麦作物だ。通常 3月から 5月の間に植えられる、2021年の春小麦の収穫も、乾燥状態によって抑圧されている。

米国農務省によると、3月6日の時点で、カンザス州の小麦のわずか 24%が良好な状態かそれ以上であり、39%が不良から非常に不良と評価された。これは、シーズンのこの時点で、過去 4年間で最低の評価だ。

カンザス州立大学のルーカス・ハーグ氏は、今後数週間が平野部南部の小麦の収穫にとって重要になるだろうと語った。多くの農家は作物の可能性を最大化するために肥料を使用するが、植物の根に肥料の栄養分を運ぶためには水分が必要であるという。

農業気象グループによると、作物にストレスを与えるこれらの乾燥した気候は、今後、16日から 30日の期間にわたって平野部の小麦地帯の約半分にわたって持続すると予測している。







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