2015年、米アイオワ州では2700万羽の鶏が殺処分されました。立ち尽くす養鶏家。indystar.com
何というかこう、感染症が流行し始めると、
「とにかく動物を殺せばいい」
ということになっている世の中ですが、最近でも、以下のような記事で、数百万、数千万単位の動物が「感染症の拡大抑制」の名目で殺されています。
ヨーロッパ、ロシア、イスラエル、日本などで高病原性鳥インフルエンザの拡大に伴い、数十万羽の鶏が殺処分
2020年11月7日狂気…:デンマークで1100万頭のミンクの殺処分が完了。農場ではコロナに感染した猫も殺されている模様
2020年12月1日
最初の「ヨーロッパで数十万羽の鶏が殺処分」という記事の日付は「 11月7日」であり、1ヶ月前です。現在はその頃に逆戻りどころではなく、大幅に拡大しています。
このことだけでも、「殺処分は世界的な鳥インフルエンザの流行の拡大の阻止や抑制に果たして意味があるのか」と思ってしまいます。
そして、それから1ヶ月後の日本の報道は以下のようになっていまして、日本での鳥インフルエンザでの殺処分数が過去最大となったことが伝えられています。
高病原性鳥インフルエンザでの殺処分、過去最多の200万羽超
農林水産省は4日、西日本の養鶏場で多発している高病原性鳥インフルエンザで、鶏の殺処分数が計200万羽を超え、統計の残る2003年度以降、最も多くなったと明らかにした。 (読売新聞 2020/12/04)
世界ではすでに数百万羽が殺処分されたと報じられています。
この「見つけたら(感染していなくても)すべてを殺す」という方法は、これは、新型コロナウイルスでの「三密を避けよう」というのと同じほど意味がないように思える理由は、
「鳥インフルエンザウイルスは鳥によって世界中を循環している」
ものだからです。
以下はアジアからロシア、ヨーロッパ地域での「渡り鳥の飛行ルート」です。赤いドットは、12月4日までに鳥インフルエンザが検出された地点です。
ユーラシアの渡り鳥の回遊ルート
geopoliticalfutures.com
ラインの色訳は以下のようになっています。
このマップを見ますと、ヨーロッパとロシアで著しい流行となっていて、ロシアだけでも 180羽が殺処分されたとされていますが、この「壮大な渡り鳥の回遊ルート」を見ていますと、地域的な殺処分が鳥インフルエンザの流行を食い止めるための根本的な手段になり得るとは思えないのです。
たとえば、日本を通過するライン(薄い青)は、オーストラリアから日本、そして、人がほぼいないようなロシア極東から北極地域を通って、ロシア、中国、東南アジアと渡り鳥が回遊していることがわかります。
この地域の中に「無人のような場所がどれだけあるか」ということなどを考えてみましても、主要国の人の住んでいるような場所でだけ大規模な殺処分をおこなったところで、何がどうなるものではないのではないかと。
この渡り鳥の経路マップを世界的な規模で見ますと、おおむね以下のようになっています。
このように世界中を周回しているウイルスを「人為的に」阻止する?
たとえば、豚コレラなど移動範囲が比較的狭いものであるならば(それでも効果は疑問ですが)、殺処分という理屈も通る筋もあるのかもしれないですけれど、世界中を回っている鳥インフルエンザウイルスの拡大阻止に「人が暮らしているようなところでだけ殺処分をする」というのは道理に合わない。
しかも、マップのルートを見ますと、それぞれの渡り鳥の回遊ルートが多くの地点で、
「交差」
しています。
簡単にいえば、「世界中のあらゆるところから鳥インフルエンザウイルスはやってきて、あらゆるところに広がる」ことは宿命のように思います。
今年は、 12月の時点でこれだけの流行となっているわけで、鳥インフルエンザもまた気温の低下と共に流行が拡大するものです。
そう考えると、これからが流行の本番ということもあり、一体これから何千万羽の鳥を殺処分し続けるのかという話になってしまうと思います。
日本での今年の鳥インフルエンザの発生も、先ほどの回遊マップの「ルート通り」となっていて、12月8日時点の日本での鳥インフルエンザの発生は以下の場所となっています。
2020年12月8日時点で鳥インフルエンザが検出された場所
Avian Flu Diary
世界中から渡り鳥がやってきている間は、今後の流行も防ぎようがないはずです。
現代社会の私たちは「大量に殺せば何とかなる」という幻想にとらわれすぎていて、デンマークのミンクもそうですが、今や人類はほとんど意味のない殺戮をする存在となってしまいました。ひたすら悪夢のように動物を殺し続ける。
少し考えれば、それは基本的に過ちであることがわかるはずです。