2月11日の英ガーディアンの記事より
・theguardian.com
新型コロナウイルスの公式発表数値は以下のようになっています。
2020年02月12日 午前9時 (公式発表数値)
患者数 44,794人
死者数 1,112人
致死率 2.4%
重症者 7,345人
経過観察対象者 185,037人
密接な接触での追跡者数 451,462人
公式発表の数値は、医療機関で感染が公式に確認された人の数ということで、中国国内で、自宅や地域に隔離されている人たちの数の多さ(報道によってまちまちですが、1億人から最大 4億人)から、これらの数値は現在ほとんど実態とは無縁ではあります。
冒頭の英国ガーディアンの記事にあるものですが、香港大学公衆衛生医学部長のガブリエル・レウン(Gabriel Leung)教授は、WHO での専門家会議に向かう途中で、ガーディアンの取材に応じ、
「世界人口の 60%が新型コロナウイルスに感染する可能性がある」
と述べたことが伝えられています。
実際、公式発表の数値だけを見ましても、1月後半からの 3週間ほどで感染者数、死者数共に指数関数的に増加しており、今後もこの状態が続いた場合、ガブリエル教授の主張も大げさではないかもしれません。
日本においても、感染者は増加していて、2月11日までの時点で 160人となっています。
また、国内でも複数の重症者が出ていることが報じられています。
国内で複数重症者 新型肺炎、容体深刻な人も
時事通信 2020/02/12
日本国内で確認された新型コロナウイルス感染者のうち、複数の人が重症になっていることが11日、関係者への取材で分かった。呼吸困難となるなど容体が非常に深刻な患者もいるといい、感染者の拡大が続く中、各地の医療機関で懸命の治療が続いている。
関係者によると、重症者は複数おり、高齢で深刻な基礎疾患を持つ人が含まれている。そのうちの1人は2月上旬、発熱の症状があり、インフルエンザの検査をしたが陰性だった。その後、新型ウイルスの検査で陽性と確認された。
厚労相によると、クルーズ船の感染者のうち、人工呼吸器を使用したり集中治療室に入ったりしている人が 4人いるとのことです。
なお、2月12日午前9時の速報として、「横浜港のクルーズ船、さらに39人感染…検疫官1人も」という報道がありましたので、日本での感染者は、ほぼ 200人に達したようです。
先ほどのグラフでは、中国国内で公式数値としての患者数が 100倍に達した期間が約 3週間でしたので、日本国内で同様の感染が起きれば、3月までには患者数が数万人に達する可能性があるのかもしれません。
あるいは、先ほどのガブリエル教授の「全人口の 60%に感染する」という主張に沿って推移するならば、最終的には、日本でも数千万人が感染するという可能性も、まったくないわけではなさそうです。
その場合、現在の致死率である 2%程度から考えますと、かなり厳しい状況となる可能性もあります。
なお、WHO は、
「新型コロナウイルスへのワクチン開発に18か月を要する」
と発表していますが、しかし、現実的にはワクチンは「そんな短期間では開発できない」と思います。
なぜなら、WHOは、SARS の時にも今回と同じような発言をしていまして、たとえば、以下は 2003年の WHO のプレスリリースです。
2003年11月5日のWHOプレスリリースより
15カ国から集まった50人以上の第一線のSARS研究者らは、安全で有効なワクチンが、現在のSARSのコントロール策の重要な補完策となるとの結論に達した。しかしながら、 ほとんどの専門家達は、今年の年末にもしSARSの流行が 再発生したとしても、ワクチンは利用することができないであろうと言う点でも合意した。(略)
不活化SARSワクチンの最初の臨床試験は、早ければ2004 年1月には開始される可能性がある。しかしながら、いつワクチンが利用可能になるかについては明言することは難しい。SARSの再発生が起こったならば、この過程を加速させ、 2年以内にワクチンが完成する結果となるかもしれない。
WHO がこのようなリリースを出してから、すでに17年が経っているのです。
しかし、 SARS のワクチンはいまだに存在しません。
新型ウイルスは、基本的に SARS と同じ系統のコロナウイルスですので、ワクチンの開発は難しいと思われます。
これらの RNA ウイルスと呼ばれるウイルスのワクチンの開発は難しいようで、エイズウイルスもエボラウイルスも RNA ウイルスですが、出現からこれだけ期間が経っているのに、ワクチンが存在しないことからも、これらの種類のウイルスに対してのワクチン開発は容易ではないようです。
ですので、今後、ウイルスが変異により自己消滅するというようなことが起きない限り、感染拡大が続くと考えたほうが合理的だと思われます。
以下の記事でふれましたように、新型コロナウイルスにおいて、事実上の空気感染(エアロゾル感染)が起きている可能性が高いです。
「どこからでも感染する」:中国の科学者が新型コロナウイルスを「ドアノブ」から検出し、スマートフォンを含むあらゆる日常品が感染経路となる可能性を警告。また、エアロゾル化した糞便による大気感染も懸念される
現在起きているクルーズ船内での感染力の高さも、このエアロゾル感染が起きていることを示しているように感じます。
というのも、まさかこのような状況で、乗客の方々が他の方々と濃厚接触しているとも思えず、室内などに止まっているのだと思いますが、それでも感染は拡大しています。
冬期ですので、おそらく船内では空調が使われているでしょうが、エアロゾル感染であるなら、それで船内全域にウイルスが拡散される可能性があります。実際、武漢や上海での工場や医療施設では、すでに空調の使用を停止していると伝えられています。
武漢では病院内での医療従事者の感染率が非常に高いことが示されていますが、今後、日本や他の国でもこれが起きる可能性はあるのかもしれません。
日本の病院の医師や看護師さんたちが、どの程度の防御態勢で医療に取り組まれているのかはわからないですが、武漢の医療の状況を見ていますと、そのことが懸念されます。