6月としての記録を破る超高温
今年は、アメリカの小麦生産地で「雨が少なすぎたり」あるいは「雨が多すぎて、植栽が遅れたり」といったことが春から続いていたことは何度か取りあげたことがあります。
最近では、以下のような記事があります。
[記事] アメリカで小麦生産量が最も多いカンザス州やテキサス州の冬小麦収穫が、雨不足により過去最低レベルになる見通し…
地球の記録 2022年3月22日
小麦の栽培には、「冬小麦」というものと「春小麦」というものがあります。
冬小麦:秋に種をまき、初夏に収穫する
春小麦:春に種をまき、秋に収穫する
というもので、一般的なのは「冬小麦」のほうですが、アメリカでも北部など、冬の寒さが厳しい土地では、春に種をまく春小麦の栽培が行われています。
アメリカでの最もメジャーな冬小麦の生産地は、アメリカ農務省の資料によれば、カンザス州、オクラホマ州などとなっています。そして、「春小麦」の最大の生産地は、北部のノースダコタ州となっています。
位置関係は以下のようになります。
アメリカの春小麦と冬小麦のメジャー生産地
この位置関係を念頭に、今後の予測も含めたアメリカの最近の気温の推移をご覧下さい。
赤くなればなるほど気温が高く、「100」は、華氏 100度のことで、摂氏では 37.7℃です。 100以上が示されている場所はそれより気温が高いことを示します。
まず、6月24日のアメリカの最高気温の予測です。
2022年6月24日のアメリカの最高気温予測
NOAA
冬小麦のメジャーな生産地であるカンザス州やオクラホマ州が熱波に包まれる予測であることがわかります。
そして、以下は数日前となる 6月18日のアメリカの最高気温です。
2022年6月18日のアメリカの最高気温
NOAA
アメリカの春小麦のほぼ唯一といえる大生産地であるノースダコタ州が 40℃に近い気温を示していまして、何より「全域真っ赤」となっています。
「これは…」と思いましたけれど、ただでさえ雨不足が続いていたこれらの小麦生産地の干ばつがさらに進行する可能性がある上に、いくらなんでも 6月に 40℃近い気温となれば、小麦の品質にも影響が出るのではないでしょうか。植物というのは、種類にもよりますが、暑さそのものには強いものでも、あまりにも季節を逸脱した気温には弱い部分があります。
6月としては異様なこの熱波は、アメリカの中部、北部、そして東部全域に広がっていまして、農業生産だけではなく、「エネルギーの問題」も言われています。
冷房需要の急増により、最悪は停電する可能性があると見られていますが、夏前からこのような気温が繰り返されているようでは、この夏は本当に厳しくなるのでしょうか。
現在ヨーロッパでも 6月としては異例の熱波に見舞われているようで、もともとフランスやスペインなどの西ヨーロッパでも干ばつが深刻だったのですが、そちらもさらに進行する可能性があります。
世界中で農業生産に対して容赦ない気候が展開されているようです。
アメリカのこの熱波について米ゼロヘッジの記事をご紹介して締めさせていただきます。
「危険な」ヒートドームが米国東部に移動し、南東部で三桁 (37.7℃)以上の気温が予想される
"Dangerous" Heat Dome Shifts Eastward, Triple-Digit Temps Expected For Southeast
zerohedge.com 2022/06/20
アメリカの平野北部を襲っていた熱波ドームは今週初めに東部に移動し始め、米国の南部と東部地域全体で 38℃以上の気温をもたらすと予想されている。
国立気象局による気象見通しによると、気温は、米国中部から南東部、平野中央部から中西部上部まで通常よりもはるかに高くなり、アメリカでの記録破りの危険な暑さが予想される。
熱波の中心は 6月21日にさらに、東部の五大湖に移動し始め、35℃以上になると予測されており、平年より最大(華氏)15〜20度高い予報が出されている。
この暑さは、高温多湿に加えて、夜にも暑さからほとんど解放されない見込みだ。6月22日には、南東部全体の気温も上昇し、最高気温は 38℃前後になると予想されている。
高湿度を考慮に入れると、最大熱指数は中央湾岸に沿って 43℃に達する可能性があると国立気象局は述べている。
この平均以上の気温は、家庭や企業の冷房需要を増加させ、電力網に負担をかけると共に、数千万人のアメリカ人の電力コストを上昇させ、最悪の場合、停電を引き起こす可能性がある。