加工食品と冷凍食品の生産ラインが停止する可能性
世界的に食料について、あまりいいとはいえない状況が続いていますが、これまでは、主に、
・ロシアのウクライナ侵攻による農作物の輸出と供給の問題
・干ばつや豪雨など気候的な問題による農作物自体の問題
が言われていました。
しかし、特にヨーロッパに関しては、現在、壊滅的なエネルギー危機にある中で、
「そのうち食品の生産施設の運営そのものに問題が出るのでは」
というようには思っていました。
加工品などを含めた食品の生産にもまた、多大なエネルギーが必要です。
ヨーロッパでは、食品より以前に、金属関連企業や肥料生産企業などが次々と生産を縮小あるいは、「停止」という事態に陥っていることが報じられています。
[記事] 天然ガス価格高騰で次々と肥料の生産が停止。世界最大の英国肥料企業の子会社と、EUで二番目に大きなポーランドの肥料メーカーも操業を停止すると発表
投稿日:2022年8月28日
[記事] エネルギー高騰のため、全世界で「金属製錬施設」が次々と操業を停止。その全リスト。食料、肥料に続き、金属製品も危機的な状況に
投稿日:2022年9月8日
[記事] ドイツの4分の1の企業が、エネルギーコストの安い国外へ拠点の移転を検討。10分の1の企業はすでに事業を停止か縮小
投稿日:2022年9月9日
最近、ドイツ最大の報道メディアのひとつであるディ・ヴェルト紙が、
「ドイツの食品加工業界が壊滅的な危機にある」
ことを報じていました。
エネルギー価格の高騰により、多くの食品企業が「間もなく生産ラインの操業を停止せざるを得ない」という状況にまできているのだそうです。
業界はドイツ政府に支援を要請していますが、その回答は不明です。
このことは、エネルギー危機は、このように「食品生産」への直接的な影響となることを示していまして、採算がとれないまま加工食品を作り続ける企業はあり得ないように、冷凍食品などを含めた加工食品生産ラインが次々と生産の停止に追い込まれる事態となり得ることがわかります。
これは、他人事ともいえず、エネルギー政策に対して、対ロシア制裁に加担している日本なども、いつかはこのようになる可能性もないではないかもしれません。ロシアからの天然ガス等の供給が途絶えないとはいえないからです。
ヨーロッパは先行して何もかも破壊されていますが、日本などの東アジアも今後のことは不透明なままだと思われます。
実際には、現代の食料流通は「多くが電力に依存している」わけで、冷凍、冷蔵の存在しない食料流通は、全体の一部だと思われます。
ドイツの報道を取りあげていた記事をご紹介します。
ドイツの生産者が食糧不足を警告 – ディ・ヴェルト紙
German producers warn of food shortages – Welt
RT 2022/09/23
ドイツの冷凍食品と生鮮食品の両方のメーカーは、エネルギーコストの高騰に対処できないと述べる
ドイツの新聞ディ・ヴェルト (Die Welt) によると、ドイツの冷凍食品と生鮮食品の生産者たちは、エネルギー価格の上昇により、間もなく操業を停止せざるを得なくなる可能性があると警告している。
業界は公開書簡を発行し、そこで以下のように述べた。
「ドイツの人々の毎日の食料供給には大きな供給ギャップがあります。状況は深刻というレベルを超えています」
「多くのドイツの食品企業の生産ラインが間もなく停止し、食品流通用の冷蔵物流センターが閉鎖されることを恐れています。破産の可能性に備えている生産者たちさえいるのです」
この書簡は、ドイツ冷凍食品協会とドイツ冷蔵・物流企業協会によって発行され、他の 5つのドイツの業界団体によって署名された。
書簡は、オラフ・ショルツ首相、ロバート・ハベック連邦経済大臣、ジェム・オズデミール連邦食品大臣に宛てられた。
書簡の著者によると、食品生産者の財務状況は日々悪化しており、近いうちに業界の倒産の波につながる可能性があると述べている。彼らは、この状況を救うには政府の介入が必要であると警告している。
特に、急速冷凍チェーンにおけるエネルギー集約型の中規模生産者への財政的支援を求めている。
書簡は以下のように警告する。
「現在、食品業界は第二次世界大戦後最悪の危機に直面しています。破綻までの時間はもう 1分もありません。今すぐ行動しなければ、ドイツ国民の冷蔵庫と冷凍庫はすぐに空っぽになってしまうでしょう」
ドイツは、他の幅広い EU諸国と共に、対ロシア制裁の強化と、ロシアからの燃料放棄政策の中で、エネルギー価格の急激な上昇と、記録的なインフレ率の急上昇に直面している。
この状況はまた、急速なエネルギー不足につながる可能性がある。冷凍食品業界は、冷凍庫を電力に大きく依存しているため、特にエネルギー供給の問題の影響を受けやすくなっている。