EUの予測の現実化
今年の春に、EU が、「世界的な食料危機がさらに進めば、ヨーロッパは、移民の波で崩壊する」と述べていたことを、以下の記事でご紹介したことがあります。
［記事］ すでにアフリカの飢餓人口は2億8000万人に。これ以上飢餓が進行した時に起きる可能性がある「数千万人の移民によるヨーロッパの壊滅」
地球の記録 2022年8月5日
この EU の予測は、ほぼ現実化しているようで、最近も、ドイツへの移民・難民の数が収容限度を超えており、多くの州で移民の受け入れを停止したことが報じられていました。
［記事］ ドイツが移民で圧倒されており、ほとんどの州で受け入れ停止の状態に
地球の記録 2022年10月1日
しかし、そんなヨーロッパの現状を、移民しようとしている人々が知るという術もあまりないわけで、食料危機とエネルギー危機が深化するばかりの中で、移民難民は増え続けています。
西側による「対ロシア制裁という名の自死（あるいはヨーロッパ潰し）」は、さらに激化しており、その影響は周辺の多くの国に拡大していると見られます。
そんな中で、ハンガリーの報道メディアが、「ヨーロッパへの不法移民の数が 1年で 1,200%増加した」と報じていました。
食料とエネルギーの状況が悪化し続けていることを考えますと、これはさらに増えていく可能性もあります。
ただでさえ、過去にないようなインフレとエネルギー危機が予想されているヨーロッパ諸国には、移民を受け入れる余力そのものがあまりないように思われます。
最悪の場合、今年の冬にヨーロッパでモバイルネットワークが崩壊する可能性さえ報じられています。以下の記事で、ロイターの独占記事などをご紹介していますが、それを避けるには「計画停電しかない」と報じられています。
［記事］ この冬、ヨーロッパ全体で「携帯電話の通信網が崩壊する」可能性が浮上
In Deep 2022年10月4日
ヨーロッパは、対ロシア制裁以来、最大の試練を迎えているように見えますが、しかし、戦争とは関係なく、もともと脆弱な部分が表面化しただけというようにも感じます。
ヨーロッパの近い未来に関して、今年の冬はともかく、「１年後はどうなのか」ということに関しては、かなり絶望的な可能性が出てきています。
ハンガリーの報道をご紹介します。
ヨーロッパの新しい移民危機 ： 不法移民が 1年で 1,200%急増した後、チェコ政府は EU に助けを求める
Europe’s new migrant crisis: Czechia asks EU for help after illegal immigration surges 1,200% in one year
rmx.news 2022/10/05
不法移民がヨーロッパ全体で急増しているが、この危機はウクライナでの戦争で対策が後回しになっている
ヨーロッパが新たな移民危機で動揺する中、 EU 諸国の 1つであるチェコは、違法な国境通過が、過去数年間の中で最も劇的に増加したため、 EU の介入を要求した。
チェコのヴィット・ラクシャン内務大臣は以下のように述べた。
「私たちが現在経験していることは前例のないことです。チェコへの移民の年間増加率は 1,200%です。私たちチェコ共和国は、これに対応しなければなりません」
この危機に対応して、チェコ政府は、不法移民の増加により、スロバキアとの現在の国境管理を強化する。政府はまた、この問題はヨーロッパ全体に関係しているため、欧州委員会に解決策を提案するよう求めている。
「欧州委員会はこの状況に注意を払わなければなりません。私は欧州委員のイルバ・ヨハンソン氏に西バルカン諸国を訪問するよう要請しました。移民の流れを減らすことができなければいけません」とラクシャン内務大臣は述べた。
この問題に関する記者会見で、ラクシャン内務大臣は、ほとんどの移民がシリアから来ており、今年、これまでにチェコ警察は 11,000件の違法な国境横断を検出したと述べた。
「移民の大多数はドイツを目指していました。ドイツ側でも緊張を高めています」と大臣は述べた。
しかし、この 11,000人という数字は、昨年から劇的に増加したものの、ハンガリー、オーストリア、セルビアなどの国々が直面している危機に比べるとさほど大きなものではない。
ハンガリーでは、今年の初めからこれまでに 160,000件を超える違法な国境通過が記録されており、オーストリアでは 56,000 件が発生している。
オーストリアのカール・ネハンマー首相は以下のように述べている。
「オーストリアは現在、不法移民によって大きな負担を受けています。私たちがヨーロッパで行っている貢献は、不釣り合いに高いものです。EU の移民政策は失敗に終わっています。欧州連合の対外国境に対する強力な保護はまだ存在せず、問題の現実が無視されています」
今週、ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相は、セルビアのアレクサンダー・ブチッチ大統領を迎えた。議題の主なトピックは、ハンガリー、ポーランド、チェコの 3カ国すべてを脅かす移民危機だ。
ヨーロッパは、2015年と 2016年に大陸に入国した 100万人の移民に匹敵する恐れのある新たな移民危機に直面している。
しかし、ウクライナ戦争がこの問題を掻き消している。
移民の多くは、ドイツや裕福なヨーロッパ諸国に向かう。つい先月、 ドイツの 16の連邦州のうち 12州が、住宅不足と過密状態の学校や幼稚園を理由に、新たな難民の受け入れを拒否すると発表した。 （※ 過去記事）
チェコは EU に対し、密入国業者たちに対して行動を起こすよう求め、強制送還について第三国に圧力をかけている。強制送還の問題は依然として大きな問題だ。たとえば、フランスが国外退去命令を出した全移民のうち、国外追放に成功したのはわずか 15%にすぎない。
スロバキアのロマン・ミクレッツ内務大臣も、ヨーロッパが直面している危機について懸念を表明し、欧州委員会は不法移民の問題について西バルカン諸国とより積極的に交渉すべきだと述べた。
「移民を母国に送り返すことができるようにする必要があります」とミクレッツ内務大臣は述べた。