アルツハイマー病の大きな原因のひとつである「伝染」
カナダのブリティッシュ・コロンビア大学の研究者たちが、「アルツハイマー病が血液を介して伝染する」ことを実証した研究論文が発表されていました。
以下にあります。
幹細胞移植モデルにおける医原性アルツハイマー病伝播の決定的な実証
Conclusive demonstration of iatrogenic Alzheimer’s disease transmission in a model of stem cell transplantation
アルツハイマー病というのは、感覚的には「内部的な病気」であったり、「家族性遺伝」であったりと考えられてきたものですが、「そうではない」とする内容です。論文の議論セクションの冒頭には以下のように書かれています。
論文より
今回の研究は、アルツハイマー病がもっぱら家族性または散発性であるという一般的な理解に疑問を投げかけている。前臨床モデルを使用して、アルツハイマー病の移植可能な形態を実証し、アルツハイマー病患者における医原性感染の可能性を示唆している。
ここで我々は、この致命的な病気の家族モデルにおけるアルツハイマー病の伝播における骨髄幹細胞移植の可能性について特に取り上げる。
ここに「医原性感染」とありますが、これはつまり、輸血や臓器移植、血液製剤などによって「アルツハイマー病が感染する」ということだと思われます。。
今回は、その論文の内容を解説していた記事をご紹介させていただこうと思いますが、実は、ずいぶん前に「アルツハイマー病が血液を介して伝播するのではないか」ということが、他の研究で示されていました。
今から 7年近く前の以下の In Deep の記事で取り上げたことがあります。
・アルツハイマー病が「伝染病のように血液感染する」可能性の示唆? : 研究で「ベータアミロイドは血液を通して全身そして他者に広がっていく」ことを突き止める
In Deep 2017年11月3日
そこでご紹介した記事の冒頭は以下のようなものでした。
アルツハイマー病を引き起こすタンパク質が「血液を介して広がる」という新しい研究結果が専門家たちを驚かせる
アルツハイマー病に罹患したマウスと血液を共有させた健康なマウスがアルツハイマー病を発症したことが科学者たちによって示された。これは、アルツハイマー病の原因とされているベータアミロイド・タンパク質が「血中を移動する」可能性があることを示している。
科学者たちは、アルツハイマー病を引き起こすタンパク質が血液を介し、体全体に広がっていることを示した。この前例のない研究は、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学の研究者たちによっておこなわれた。
研究者たちは、二匹のマウスを外科的につないだ。一匹は健常なマウス、もう一匹はアルツハイマー病に罹患したマウスだ。そして、アルツハイマー病の斑を有するマウスにも、血液を共有した健常なマウスのどちらもにも血液中にベータアミロイドタンパク質の斑が発現したことが示された。
これらのことから考えますと、
「アルツハイマー病は、輸血や臓器移植でも感染する」
ということになり得ます。
輸血といえば、最近、東京理科大学名誉教授の村上康文氏や、京都大学名誉教授の福島雅典氏などが、「 mRNAワクチン接種者からの輸血に関してのリスク」についての論文を発表していました。
以下にあります。
・被害の拡大を防ぐために:村上名誉教授を含む日本の研究者が「mRNAワクチン接種者からの輸血」に関してのリスクについて警告する論文を発表
地球の記録 2024年3月17日
輸血に関してのリスクがどんどん高くなる世界となってきました。
アルツハイマー病は輸血によって広がる可能性があることを科学者が発見
ALZHEIMER'S MAY SPREAD THROUGH BLOOD TRANSFUSIONS, SCIENTISTS FIND
futurism.com 2024/03/30
すべての患者のアルツハイマー病の正確な原因はまだわかっていないが、肉や加工食品、車の汚染物質などの環境要因が悲劇的で退行的な状態を引き起こすアルツハイマー病の原因となる可能性があることが研究で指摘されることが増えている。
そのリストにもう 1つの考えられる原因が追加された。それは血液だ。
医学誌「Stem Cell Reports」に掲載された新しい研究の結果は、遺伝性アルツハイマー病患者から健康な人への血液、骨髄、臓器、その他の生体物質の輸血や移植がこの病気を蔓延させる可能性があることを示唆している。
カナダのブリティッシュ・コロンビア大学の科学者たちは、マウスと幹細胞を使った実験室実験を行った後、この結論に達した。
この研究のために、彼らはヒトの遺伝性アルツハイマー病、特にアミロイド斑を合成する遺伝子を保有するマウスを飼育した。次に、骨髄から幹細胞を抽出し、この生体組織を保因者ではない健康なマウスに注入した。
9か月以内に、正常なマウスは認知機能低下の兆候を示し、アルツハイマー病の古典的な特徴であるアミロイド斑や線維性沈着物の蓄積などの脳の変化も見られた。
研究者たちは、この研究でいくつかの知見を得た。
1つは、アルツハイマー病は身体の中枢神経系の外側にある幹細胞から発生する可能性があり、これは、アルツハイマー病がどのように形成されるかについてのいくつかの先入観を覆すものだ。
研究者たちは以下のように書いている。
「この研究の潜在的な成果の一つは、特にニューロンによって産生される脳由来のAβ[アミロイド]の蓄積が、アルツハイマー病の病態に関する従来のセントラル・ドグマから脱却するようこの分野を促すことだ。この研究は、脳の外で生成されるAβが病気の発症に寄与していることを示している」
もう1つは、アルツハイマー病を発症する経路は、人々がクロイツフェルト・ヤコブ病のような伝染するプリオン脳疾患を発症する方法と似ている可能性があるということだ。
狂牛病にかかった牛を食べた人は、クロイツフェルト・ヤコブ病の一種を発症することが知られている。
一言で言えば、アルツハイマー病は、生物学的物質の提供によって健康な人に伝染する可能性がある。これは、潜在的なドナーがこの状態についてスクリーニングされる必要があることを意味する。
ブリティッシュ・コロンビア大学の免疫学者で主著者のウィルフレッド・ジェフリーズ氏は、声明で以下のように述べた。
「このことは、アルツハイマー病が脳の外で発現するアミロイドが中枢神経系の病理の一因となる全身性疾患であるという考えを裏付けるものです」
「このメカニズムの研究を続けると、アルツハイマー病は氷山の一角である可能性があり、血液、臓器、組織の移植、または血液製剤、そしてヒト由来の幹細胞の移植に使用されるドナーの管理とスクリーニングをはるかに改善する必要があります」