英気象庁によると、2022年10月から 2024年3月までに降った雨量は 1,695.9ミリで、1836年以来の記録。
極端な気候に襲われる英国
英ガーディアンが、同国の 2022年秋から今年春までの「異常な降雨量」による農業への影響について報じていました。
イギリスの気象データには過去18ヵ月間の降雨量というカテゴリーがあるようなのですが、「観測史上最も雨量が多かった」のだそう。1800年代前半以来のことだそうです。
これにより、イギリスの農家の人々が大変に苦労していることが書かれています。そして、もちろん農家の人々の苦労もさることながら、今年のシーズンは「イギリス国内の農業生産が壊滅的になる」という予測を農業従事者ご本人たちが述べています。
これは、イギリスでの野菜価格の高騰という形にもなりそうですが、イギリスでは、昨年あるいは一昨年に、すでに極端な野菜の流通不足が起きていました。
2023年2月25日、野菜が消えたロンドンのスーパーマーケット。
以下の記事で取り上げています。
・英国で起きている「極端な野菜の枯渇」は、今の生産、流通システムのままだと今後さらに悪化するという専門家の意見
地球の記録 2023年2月27日
このようなことになった理由は、エネルギー価格の高騰などを含めて、さまざまにありましたが、最も大きな理由は、イギリスも日本と似て「野菜や果物の供給を外国に依存し過ぎている」ということがあります。
イギリスで起きているこれらのことは、この国固有の問題ではなく、食糧を海外に依存しすぎている(日本や台湾や韓国ような)国は、世界全体の気候の不安定が増大していく中では、どこかの時点で、食糧の大きな問題が発生するときがやって来ると思います。
イギリスの農業の状況についての、ガーディアンの記事です。
「畑は完全に水没しました」:英国の農家は、記録的な降雨を乗り越えようと努力している
‘Fields are completely underwater’: UK farmers navigate record rainfall
Guardian 2024/04/22
18か月にわたる異常な雨天を経て食糧生産の危機が高まる中、落胆しながらも立ち直ろうとする農家の人たち
英国の農家は少なくとも過去 1年間、記録的な降雨に対処しており、これは英国で生産される食料が大幅に減少していることを意味する。
2022年の秋以来、この 18か月間、異常に雨が多かったために畑が水没し、家畜や農作物に影響が出ている。
英国気象庁によると、2022年10月から 2024年 3月までに降った雨量は 1,695.9ミリで、英国の 18カ月間の雨量として観測史上の最高記録となった。
ここでは、英国の農家や生産者たちが、悪天候にどのように対処してきたのか、そして豪雨が当面の将来に何を意味するのかを見ていく。
「今年はひどい収穫になるでしょう」
農家であり農業ジャーナリストのトム・アレン・スティーブンス氏。
農家、農業ジャーナリストのトム・アレン・スティーブンス氏の言葉
今年私たちが直面している制約は、恐ろしくひどい収穫となることを意味します。農地には現在ほとんど作物がありません。170ヘクタールのうち 30ヘクタールしか植えることができませんでしたが、これは、作付可能な土地の 3分の1未満なのです。
一般的には秋に植え付けますが、今年の困難は、10月中旬から実質的に現在まで、雨が降り続いたことです。通常でも雨は降りますが、秋は、2~ 3週間は乾燥した天候が続くものなのです。それが起こらなかったのです。 10月中旬までに作物を土地に植えた人たちにとっては問題ありませんが、私や他の多くの人にとって、あまりにも早く植えると、黒い草と呼ばれる恐ろしい雑草が発生し、それが作物に影響を与えるのです。
まだ何千ヘクタールも植林されていない地域があるだろうと思います。今年と他の年との違いは、晴天が続いていないことであり、それがこれほど大きな問題となっている理由です。
誰もがこれは異常だと言っています。以前も悪い年もありましたが、今年はあまりにもひどい。私たちはますます極端な方向に進んでおり、気候変動がここでさらに変化球を投げかけているのではないかと懸念に思う人たちもいるでしょう。
2022年の収穫の時には、逆に信じられないほど乾燥していて、あまりにも早く枯れてしまい、収量はまったく良くありませんでした。
「畑がすぐに乾く気配はありません」
コミュニティ支援の農業農場で野菜を栽培するリアン・ウィリアムズさんの話
畑が乾燥する可能性はまったくありません。トラクターを使って栽培することができないので、主作物のジャガイモやタマネギ、夏アブラナやサラダなど、通常は地植えされる大規模な作付けは今のところ行っていません。畑がすぐに乾く気配はまったくありません。
トラクターは土壌構造を破壊するため使用できません。アグロエコロジー栽培者として私たちは土壌構造を維持したいと考えています。代わりに、私たちはポリトンネル(小さなビニールハウスのようなもの)に焦点を当て、このスペースを最大限に活用してきました。しかし、これは私たちの畑に比例して小さなエリアであり、ボックススキームのニーズを満たすのに十分な食料を収容することはできません。
お客様たちが毎週受け取る野菜の量が少なすぎて長期間にわたって定期購入をキャンセルする可能性が高いため、これは私たちのビジネスに大きな影響を与えるでしょう。
「ハングリーギャップ」(冬作物は終わったが、新シーズンの作物はまだ収穫されていない、通常 4月から 6月初旬までの数週間)は、通常よりもかなり長くなるでしょう。また、私たち自身の農産物があまり手に入らない場合は、地元のオーガニック卸売業者から購入して箱に補充することもあります。非常に多くの英国の大手生産者が影響を受けているため、今年はさらに野菜価格は高価になるでしょう。
長期的には、このような予測不可能な気象パターンは気候変動の憂慮すべき指標であり、地域社会のニーズを満たし、誰もがアクセスできる真に持続可能な生産を可能にするために、食料システムを完全に再構築する必要性を裏付けるものです。
「雨が止んだら干ばつを心配しなければなりません。今は季節的な天候が予測できないのです」
羊飼い兼獣医学生のエリザベス・ジョンソンさんの話
私は大規模な草ベースのシステムを実行している人の羊飼いとして働いています。彼は、おそらくコッツウォルズの広い地域に約 1,000頭の子羊を飼っていると思われます。
天候は大きな要因ですが、その多くは、人々の日常生活に影響を与える一般的な問題によってさらに悪化しています。農業は卸売で販売されるものを生産する唯一の産業の 1つですが、私たちは投入物、たとえば燃料や飼料の小売価格を支払わなければならず、その価格はすべて値上がりしています。それはこの業界では常に問題となっています。
昨年は、一年で草の生育がピークとなる春と初夏に干ばつ状態に見舞われました。ところが、今は、私たちは洪水に対処しなければならなくなっています。一部のフィールドは完全に水中にあり、足が濡れる覚悟がなければ基本的にアクセスできません。
雨が止んだとしても、今度はまた干ばつが起こるのではないかという懸念が生じます。現在、季節的な天候は非常に予測不可能であり、そのため、寄生虫、ハエ、そして、この国では通常見られないブルータング(反芻動物に感染するウイルス性の病気)などの病気をもたらす昆虫の問題も生じています。