戦争の時代 最期の食糧危機 異常な現象

英国で起きている「極端な野菜の枯渇」は、今の生産、流通システムのままだと今後さらに悪化するという専門家の意見。では日本の今後は?

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2月25日、野菜が消えたロンドンのスーパーマーケットThe Guardian




 

おそらく事態は改善しない

現在、イギリスで、現代では過去になかったような「野菜の枯渇」が発生しています。

以下は、2月24日の英国 BBC の報道を翻訳したものです。

(報道) イギリスで極端な野菜不足が発生。生産者たちは「5月まで続く可能性がある」と述べる (2023/02/24)

BBCより

英国の主要なスーパーマーケットは、果物と野菜が不足した後、販売を制限している。

このような事態となった理由のひとつとして、英国の主要な生産者たちが、エネルギーコストが高いために、一部の作物の作付けを遅らせていると生産者協会 LVGA は述べる。

政府と産業界は、スペインと北アフリカの悪天候が原因だとしている。

 

大手のスーパーチェーンでは、1人あたりの野菜の購買数を制限して対応しているようですが、冒頭の写真のように、一部の野菜は「まったく入らなくなっている」ようです。

イギリスでは、卵の不足も深刻で、どんどん食料がスーパーから消えていっているようです。

この理由について、野菜の多くを輸入に頼るイギリスの輸入先である北アフリカなどで「異常な寒波が続いたために農業生産が打撃を受けた」ことを英国政府は挙げていましたが、イギリス国内の生産者たちは、「エネルギー価格と肥料の高騰」により、野菜を生産しても収益にならないため、減産したり、中には「農作自体をやめた」という人たちも増えていることを BBC は伝えています。

 

日本で、同じようなことが起きる可能性はないのでしょうか。

 

多くの野菜や果物を輸入に頼っている構図は同じで、また、日本国内の生産者たちも、エネルギーの高騰と肥料の高騰に苦しんでいるという構造もまた同じです。

戦争が拡大したり、あるいは異常な気温(高温も低温もどちらも)や気象(洪水や干ばつなどのどちらも)などを含めて、今のような状況がこれからも続くとすると、近いうちに、日本も英国と同じ状況にたどりつくような気がします。

ならないといいですが、近づいている気がしないでもありません。

この食料不足の原因を報じていた英国のメディア記事をご紹介します。

今のような状況が、今後何度でもイギリスに訪れる可能性を述べています。




 


食料不足:これからの形

Food shortages: the shape of things to come
Counterfire 2023/02/24

スーパーマーケットと農業ビジネスは、必要性ではなく、市場の気まぐれに応じて食料生産を確立してきた、とケビン・オベンデン氏は主張する

英国のスーパーマーケットで見られる枯渇した果物と野菜の光景は、今後、少なくとも数週間は続くと見られているが、政府がこのようになる警告を受けていなかったとは言えない。

昨年、農業産業団体である全英農業組合 (NFU) から特定の警告があった。今週、トーリー党の環境長官であるテレーズ・コフィー氏は​​、農業組合会議でブーイングされ、やじられた。

全英農業組合は決して労働組合のような組合ではない。

それは大規模な農家たちとアグリビジネスによって支配されている。食料の生産と供給が直面しているこの危機は、コフィー氏が偶像のように崇拝する市場メカニズムの失敗を示しているものではない、と主張することに対して、全英農業組合は環境長官に深い怒りを示した。

大きなスーパーマーケットは、さまざまな野菜を配給制にしているが、卵の生産量も 10億個近く減少しており、英国がその分野で自給自足していた状況を逆転させている。

エネルギー価格の高騰により、温室などの園芸生産数は、40年前の水準に戻った。

小規模な農場は閉鎖されつつあるが、巨大な小売業やアグリビジネスは依然として不足はあるものの、価格が上昇するにつれて利益を上げ続けている。

 

何が起こっているのか

トマト、キュウリ、および同様の野菜に関する 2つの差し迫った問題は、まず、ここ数週間でスペインと北アフリカを襲った「異常気象」だ。

夜間の気温が 3週間にわたって氷点下を下回り、この時期の英国への重要な輸入源である果物や野菜の生産に打撃を与えた。

同時に、エネルギー価格の上昇により、英国とオランダの生産者たちは、温室の暖房費が法外にかかるため、温室園芸を制限するようになった。

野菜と共に、昨年から英国では危機的な卵の生産の減少が続いている。

鳥インフルエンザがイギリスとヨーロッパの一部を襲っているが、それに対処する方法は家禽の大量殺処分だ。その結果、生産量が急激に減少し、コストが増加し、卵価格が上昇した。

卵の価格が高騰しても、養鶏業者たちの給与はまったく増えていない。実際、養鶏業では、多くの人たちが解雇された。卵の高騰により、英国では子どもにゆで卵を与えることさえできなくなったのは、養鶏業者が賃金を上げたからではない。

この 1970年代型の英国の食料危機のように感じられる状態が、英国のブレグジットと関係があるという公の議論には、いくつかの違和感がある。 1970年当時は、さまざまな時点で、砂糖、パン、ジャガイモなどが不足した。

しかし、これが「ブレグジット下の英国」だけで起こっているわけではないという現実がある。これはアイルランドでも起こっている。ばかげている高い価格と質の悪さを特徴とする別の方法で、それはギリシャでも起きている。

また、これは現在だけに限定される特定の異常な出来事でもない。これは私たちが今認識しなければならない事態の一部であり、今後、私たちの生活の中で定期的に起こるだろう。

気候変動が農業生産と食料安全保障に与える影響について、私たちは何十年にもわたって多くの報告をしてきた。世界銀行は、昨年 10月にさらに別の報告書を作成した。エジプトで開催された COP27 気候会議では、さらに詳しい情報が発表された。

ちなみにエジプトは、2011年の革命までの数年間、そして 1970年代後半にさかのぼるのと同じように、現在、食糧供給とインフレの巨大な危機を経験している。

 

気候の内訳

英国における今後の差し迫った食糧ショックの根底には、次のような要因が含まれる。

 

1. 突然の極端な気象現象につながる気候変動の影響により、生産が壊滅的な打撃を受ける可能性がある。2021年、ブラジルでは異常な冬の低温のために、コーヒー生産量の 3分の1が失われた。1年前のパキスタンとインドでの殺人的な熱波は、穀物、その他の主食の多くの生産を破壊した。これらは地域的な出来事ではない。それらは地球規模の「変化」の現象だ。将来の話ではない。今起きている。

2. ウクライナでの戦争によって引き起こされたエネルギー価格の急騰も大きな要因だ。この戦争そのものは特定の出来事かもしれないが、戦争のさらなる増大の圧力が現在ある。今日の中東における緊張の高まりを見れば、それは明らかだ。

3. 鳥インフルエンザのような病原体のさらなる拡散は、人間に感染しなくとも、工場集中型農業からの供給を打ち砕く可能性がある。

4. 小売業や食品業界向けの拡張されたサプライチェーンへの持続不可能な依存は、決して良いことではなく、供給の安定性に対して、現在では不可能なことを私たちに課している。

 

これは、英国と EU の間の貿易条件に関する議論をはるかに超えている。

昨年、世界中で約 3億5,000万人が食糧不安に陥り、飢餓に近づく状態になった。これは農業と食料の社会組織における革命的な変革を要求している。

この革命的な変革は、イギリスではどのように見え始めるだろうか。

全英農業組合は、保守党政府の自由市場の過激主義に反対している。しかし、主要な巨大企業への補助金は解決にはならない。生産を合理化し、それを一般の人々に補助するための努力をするべきだ。

現在は、小規模な農家と顧客が同時に圧迫されており、経済活動が停滞しているにもかかわらず、大手スーパーマーケットチェーンの利益は上がり続けている。

英国は、第二次世界大戦中に農業生産を 1エーカーの土地と主要な食料の配給にまで向けた1939年の国防法で、この種のことを行うことができた。

それはまた、国民の食生活を栄養的にもより良く変えた。しかし、今はそのようなことはしていない。

私たちは、気候の崩壊、戦争、経済危機に対処するために必要な事態の革命的な変革の文脈で、そのような行動を迫ることができるカウンターパワーを開発しなければならない。

農業に壊滅的な打撃を与える気候変動や、食料供給と消費の産業および社会組織の持続不可能性に関する科学者たちの警告は、発展途上国の人々だけに言及しているとでも政府は考えていたのだろうか。だとすれば、愚かだ。

それは今、このヨーロッパの中心で起こっている。干ばつがイタリアのオリーブオイルの生産を激減させており、ベニスの運河は干上がった。

システムを変えるのは大変な作業だが、今できることは、あらゆる場所で労働者階級の人々を襲っているこれらの問題を、ばかげた政治方針から、急進的で好戦的な変化のレベルに引き上げることだ。







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