ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系のすべての睡眠補助剤が
米カリフォルニア大学の医学者たちが、睡眠薬と認知症のリスクの関係についての調査を研究にまとめて発表していました。
論文は以下にあります。
睡眠薬の使用と認知症のリスクとの関連における人種差
Race Differences in the Association Between Sleep Medication Use and Risk of Dementia
この研究によると、
「睡眠薬の使用は認知症のリスクを 79%高める」
とあります。
調査は 3000人以上の高齢者を 9年間追跡調査したもので、かなり確実性の高い調査だと思われます。
睡眠薬の何がそれを誘発するかというと、睡眠薬、特に最も普通に処方されることの多いベンゾジアゼピン系の睡眠薬にある、
「抗コリン作用」
というものにあると考えられています。
抗コリン薬とは、神経伝達物質であるアセチルコリンというものが受容体に結合するのを阻害する作用を持つ薬全般です。
この研究では、睡眠薬となっていますが、しかし問題は、
「この抗コリン作用を持つ薬が大変に多い」
ことです。
ごく一般的な薬の多くがこの作用を持つのです。
特に抗不安剤や、あるいは睡眠薬もそうかもしれないですが、これらは、
「長期連用しやすい性質を持つ」
ものです。
ベンゾジアゼピン系の抗不安剤を服用している人の中には「毎日」という人たちがたくさんいます。睡眠薬もそうだと思います。
そういう連用が問題である気がします。
この「抗コリン作用を持つ薬が認知症と関係している」ことは、ずいぶん以前からわかっていました。
以下は、そのことについてふれた記事です。
[記事] 花粉症の薬や風邪薬、胃薬にパーキンソン病の薬、そして抗うつ剤や抗不安剤……多くの「抗コリン」一般薬が、認知症発症のリスクを著しく増加させていることが判明
In Deep 2019年6月27日
このタイトルにありますように、抗コリン作用を持つ処方薬、市販薬は、ものすごく多いのです。大ざっぱに書けば、アレルギーの薬も、抗不安剤も睡眠薬もめまいの薬も抗うつ剤も、あるいは市販の胃薬も市販のかぜ薬も、その多くに抗コリン作用がある場合があるといえます(すべてではないです)。
以下は、医療サイト Med エッジに、2015年に掲載された記事です。
風邪や花粉症など、身近な薬がアルツハイマー病を増やす、飲むほど影響、米国グループ報告
米国シアトルのワシントン大学を中心とする研究グループが、内科分野の国際誌であるジャマ(JAMA)インターナル・メディシン誌オンライン版で、2015年1月26日に報告した。
問題になるのは、抗コリン作用を持つ薬だ。抗コリン作用を持つ薬剤は多く、総合感冒薬や鼻炎薬、胃腸薬、一部の抗精神病薬、抗うつ薬などが知られている。
研究グループは、抗コリン作用薬を使った蓄積と認知症リスクの関連を明らかにする研究をより大規模に行った。
研究開始時に認知症がなかった65歳以上の参加者3434人を対象に、2年ごとに状況を調査、平均7.3年間の追跡を行った。追跡したところ、参加者のうち2割強が認知症を発症。認知症の8割はアルツハイマー病だった。
認知症およびアルツハイマー病の発症と、抗コリン作用薬の使用状況の関係を調べたところ、抗コリン作用薬を長期間にわたって多く使用するほど認知症のリスクが増していた。
Med エッジ
日本もそうでしょうけれど、そもそも、アメリカでは「薬が処方されすぎている」というところにもかなりの問題があります。
以下は、そのことについて書いた記事です。
[記事] クスリ地獄アメリカ : 1億5000万人以上が病院の処方薬を飲み、薬物過剰摂取による1年間の死者数はベトナム戦争での全死者数を超えた
In Deep 2019年12月19日
現実としては、「薬はできるだけ飲まないほうがいい」ということになるのですが、それでも、飲まないといけないという状況も確かにあります。
問題は「長期間にわたる連用」だと思われ、特に抗不安剤や睡眠薬などは長期の連続使用となりやすいものですので、特にベンゾジアゼピン系は、できる限り減らしていくのがよいとは思っています。
私なども、30年くらい……まあ連用ではないですけれど、ベンゾジアゼピン系の抗不安剤を飲んでいましたので、いろいろと脳に問題は蓄積されていると思われます。
ベンゾジアゼピン系は依存性も強力です。
アメリカでは、ベンゾジアゼピン系のザナックス(日本名はソラナックス)の過剰接種での死亡事例が激増しています。
[記事] 日本では数百万人が服用しているあまりにも一般的な処方薬であるベンゾジアゼピン系の薬がアメリカで殺人ドラッグになり始めている
In Deep 2019年12月9日
コロナ以降、メンタル疾患が世界中で増えていると伝えられており、ベンゾジアゼピン系の薬を新たに飲む人の数も増えていると見られます。
将来的な社会の状態がきわめて懸念される状態だと思います。
先ほどのカリフォルニア大学の論文を取りあげていた記事をご紹介します。
一般的な睡眠補助剤は認知症のリスクを高めるという研究結果
Popular Sleep Aids Increase Dementia Risk, Study Finds
Epoch Times 2023/02/22
最近のデータによると、アメリカ人の 3分の 1近くが 不眠症であり、約 3分の 1が不眠症を睡眠薬等で自己治療している可能性がある。新しい研究によると、ぐっすり眠るために彼らが支払う代償は非常に高い可能性がある。
睡眠補助剤は認知症のリスクを 80% 増加させる
この研究は、認知症のない約 3,000人の白人および黒人の高齢者を平均 9年間追跡調査したもので、その結果、睡眠薬を頻繁に使用する白人の参加者は、ほとんど使用しない人に比べて認知症を発症するリスクが 79% 高いことがわかった。
調査中、参加者の 20%が認知症を発症し、研究者たちは、白人が睡眠薬を頻繁に服用する可能性が黒人の 3倍であることを発見した。
白人はまた、ベンゾジアゼピン系、トラゾドン (抗うつ薬)、および、Z薬 (非ベンゾジアゼピン系の睡眠補助剤)などの睡眠補助薬を使用する可能性がはるかに高かった。
「ベンゾジアゼピンのような特定の睡眠薬が認知症のリスク増加と関連していることは以前から知られていました」と、分子細胞生物学の博士号を持ち、アルツハイマー病協会の科学的関与の責任者であるパーシー・グリフィン氏は語った。
「ベンゾジアゼピンには、認知症のリスクを高める抗コリン作用があることがわかっています。抗コリン薬は、睡眠と脳機能の両方に作用します」
精神医学と睡眠医学の委員会認定を受けているアレックス・ディミトリウ博士は以下のように述べる。
「アセチルコリンシグナル伝達は、アルツハイマー病患者ではすでに欠乏しており、これらの受容体をさらにブロックすると、アルツハイマー病患者にせん妄を引き起こし、認知症のリスクも増加する可能性があります」
「それ以外の人たちにとっては、短期間の使用は問題ありませんが、理想的には避けるべきです。抗コリン薬は睡眠構造を変化させ、レム睡眠を減少させる可能性があります」
睡眠補助剤で眠ることはできるが、その代償は?
ディミトリウ博士は以下のように言う。
「私は睡眠医および精神科医として、かなりの数の不眠症患者たちを治療していますが、定期的にこの、代償は何かという質問に戻ってきます」
しかし同時に、睡眠不足だけでも認知の問題を引き起こす可能性があるため、睡眠の補助は必要だという主張もある。
2018年の研究では、50,000人以上の参加者を調べて、原発性不眠症と診断された成人と若い患者の両方で認知症のリスクがほぼ 2倍になることがわかった。
これらの睡眠薬には睡眠の改善による保護効果さえある可能性があると結論付けた論文もある。