ドルを介在しない独自の共通通貨を作成しているBRICSの首脳たち。
輸出入大国の中国で
In Deep で、「世界の脱ドルの動きの加速化」について書きましたのは、4月のはじめのことでした。
・ドルの崩壊が、曖昧ではなく始まった
In Deep 2023年4月6日
特徴としては、「事態が非常に早く進んでいる」ことです。
前後して、以下のようなこともありました。
・中国とブラジルが「貿易でドルの使用を放棄」することに合意 (リンク)
・世界18カ国の銀行が「インドルピーでの決済」専用のアカウントシステムに参加 (リンク)
そうしましたら、つい最近、米ロイターが、
「中国の人民元が、中国の国境を超えた国際決済の総額において、ドルを超えた」
ことを報じていました。
とはいっても、世界全体の貿易においての人民元のシェアは、まだ 4.5%と低いです(ドルは 83.71%)。ただし、ロシア国内の取引でも人民元が最も使われている通貨だと報じられてもいます。
今回は、それと共に、ロシア政府が、
「エネルギー貿易では、将来的に、ロシアは一切ドルとユーロを使用しない」
と副首相が発表したことが報じられていました。
その報道をふたつ続けてご紹介します。
たった2ヵ月ほどの間に、通貨を巡る環境は大きく変化しました。
関係ないですが、人民元の 100元紙幣には「とてもおもしろいデザイン」が施されています。以下の10年前の記事にあります。
・とても驚いた「中国の猫の王様」の事実。そして、そこから見える「私たちの毎日はとても馬鹿にされているのかもしれない」と思わせる今の世界
In Deep 2013年12月06日
ここから今回の報道です。
中国の国境を越えた支払いで人民元がドルを追い抜く
Yuan overtakes dollar in China’s cross-border payments
RT 2023/04/27
中国の人民元は、北京の国際決済の 48.4%で使用されたことが数字で示されている
ロイター通信は 4月29日、公式データを引用して、人民元が米ドルを上回り、先月、中国の国境を越えた取引で最も使用される通貨になったと報じた。
国家外為管理局のデータに基づくロイターの計算によると、人民元での国境を越えた支払いと受け取りは、2月の 4,345億ドル (約59兆円)から 3月には記録的な 5,499億ドル (約 75兆円)に急増した。
人民元の使用を促進するための北京の取り組みと同様に、ドルからのシフトの傾向を反映して、中国の通貨はすべての国境を越えた取引の 48.4%で使用された。
中国の国際決済における米ドルのシェアは、2月の 48.6%から 3月には 46.7%に低下した。
国境を越えた取引量は、経常収支と資本収支の両方をカバーしているとロイターは述べている。世界の決済における人民元のシェアはまだ比較的低いものの、過去数年間で着実に増加している。
国際貿易でドルから離れようとする中国の試みは、主要な世界的エネルギー生産国および輸出国であるロシアに対して西側諸国が課した広範な制裁を背景に加速している。
インドの政策立案者たちはまた、ロシアとの相互貿易において、ドルから、ルーブルやルピーへの移行に向けた措置を講じている。
ロシアは昨年以来、取引における代替通貨の使用を増やしている。
ウラジーミル・プーチン大統領は、中国との貿易だけでなく、アフリカやラテンアメリカ諸国とのロシアの取引においても、中国人民元をより広く使用すべきだと示唆している。
ロシア銀行の最新のデータは、元がロシアの対外貿易の主要なプレーヤーになったことを示している。
ここまでです。
次は、ロシアがエネルギー取引において、ドルとユーロの使用を放棄することを決めたというロシアの報道です。
ロシアはエネルギー貿易でドル、ユーロを完全に放棄する
Russia completely abandons dollar, euro in energy trade – deputy PM
RT 2023/04/22
石油、ガス、その他の資源のほとんどの決済は、すでに自国の通貨で行われている
ロシアは、外国のパートナーとのエネルギー貿易において自国の通貨に切り替えているとアレクサンドル・ノバク副首相は 4月22日、ロシア1テレビチャンネルとのインタビューで述べた。
副首相によると、ほとんどの取引はすでにこれらの通貨で行われており、主に中国人民元とロシアルーブルで行われているという。
将来的に、ロシア政府はエネルギー輸出でユーロとドルを完全に放棄する予定だとして、ノバク副首相は以下のように述べた。
「トレンドはドルとユーロの使用を減らす方向に大きく変化しました。これらの通貨に関する現在の問題を考慮して、ほとんどもっぱら国内通貨 (ルーブル)に切り替えています」
「中国は、ロシアに対して、すでに人民元でガス料金を支払っており、一部は石油料金も元で支払っています。彼らはまたルーブルでも支払います。各国通貨でのこれらの相互決済を引き続き改善していくつもりです」
ノバク副首相は、ウクライナ紛争のために西側諸国がロシアに課した経済制限に言及し、ユーロとドルでの取引において、ロシアが行動することを事実上不可能にしたことにふれた。
副首相は、ロシアのエネルギーに対する強い需要に応えるためには、現在の状況では、自国通貨でのみ可能な決済メカニズムが必要であると述べた。
タス通信との以前のインタビューで、ノバク氏は自国通貨での取引のシェアが今後数年間で増加し続けると予測した。
ロシアは昨年、貿易における自国通貨の使用を大幅に増やし、外国のパートナーとの取引でユーロとドルから離れた。ドルとユーロは、対ロシア制裁のために「信頼できない通貨」と見なされている。