米フォックスニュースの記事より
史上最悪の病原体
「カエルツボカビ症」という両生類を中心に感染する致死的な真菌があります。
ツボカビ菌そのものは、20年前に発見されて以来、生態系に非常に危険な微生物であることはわかっていたのですが、最近、科学誌サイエンスに、カエルツボカビの世界的な研究をおこなった論文が発表されました。
サイエンスに発表された論文
・science.sciencemag.org
この研究が示すところは、「状況は予想よりはるかに悪い」深刻なものでした。
ツボカビ菌は、これまで 90種の両生類を絶滅させてきた上に、新しい研究では、
「 500種の生物が絶滅に追い込まれようとしている」
のだそうです。
この真菌の発祥地は、朝鮮半島であることが最近わかっていますが(下のナショナルジオグラフィックの記事をご参照下さい)、それが世界的に拡大しています。
・両生類を襲うカエルツボカビ、朝鮮半島原産と判明
ナショナルジオグラフィック 2018/05/14
このナショナルジオグラフィックの記事で、英インペリアル・カレッジ・ロンドンの菌類学者は、
「カエルツボカビは、生物多様性への打撃という点では、これまで知られている限り、史上最悪の病原体です」
と述べていますが、今回の研究で、「さらに状況が悪い」ことが判明したということのようです。
場合によっては、「ほとんどの両生類が絶滅」という状況になるまでに、そんなに時間がかからない可能性さえあるのかもしれません。
大量絶滅の時代を感じさせるものでもあります。
米フォックスニュースの記事をご紹介したいと思います。
‘Worst disease ever recorded’ is responsible for ‘frog apocalypse’
foxnews.com 2019/03/29
「史上最悪の病気」が「カエルの黙示録」を作りだしている
カエルやヒキガエルに、記録されている中で史上最悪の病気が広がっている。
それは、真菌で、カエルたちの「肉を噛む」のだ。
この微生物は、カエルの肌を食べて、カエルに心臓発作を引き起こすことによって彼らを殺す。
最近、科学者たちは初めて、この真菌の「驚くべき」地球規模の影響を解明した。そして、それは以前に考えられていたよりはるかに悪い状況だった。
それが引き起こす病気、カエルツボカビ症(Chytridiomycosis)は、過去 50年間で、カエル、ヒキガエル、サンショウウオを含む両生類 90種を絶滅させた。
オーストラリア国立大学の主任研究員のベンジャミン・スキーレ(Benjamin Scheele)博士は、「調査の結果はかなり驚くべきものです」と語った。
「私たち科学者は、カエルツボカビが、両生類にとってかなり悪いことを、この 20年間知っていましたが、実際に、その影響と生物の個体数の減少を定量化したのが今回の研究でした」
研究チームは、この両生類の病気がヨーロッパ、オーストラリア、中南米およびアフリカから検出されたと述べる。
そして、合計で、500種の両生類が急激に減少しており、あるいはツボカビ菌の結果として絶滅した。
他のどの病原体よりも多くの生き物を絶滅させていると見られることから、このツボカビ菌は、記録上最も破壊的な病気だといえる。
スキーレ博士は、以下のように述べる。
「この研究は、病気が野生生物にどのようなことをすることができるかについての私たちの理解を書き換えました」
この真菌はアジアから発生したと考えられている。
ペット取引などの人間活動を通して 1980年代に世界中に広がった。
ひとたび感染すると、真菌は両生類の皮膚に入り込み、それを固めて剥がす。
感染した両生類が自分の皮膚を通して呼吸したり、水分を摂取すると、その両生類は心臓病や脱水症状で死亡する。
20年前の発見以来、科学者たちは、どれだけの種類の動物が、ツボカビ菌に殺されたかを集計するために研究を急いでいた。
ベルギー・ゲント大学の科学者フランク・パスマンズ(Frank Pasmans)氏は、「この影響を客観的に見積もる必要がありますが、残念ながら、事態は予想以上に深刻でした」と述べた。
科学者たちは、このツボカビ菌の研究は、世界的な野生生物にどれほどの悪影響を及ぼす可能性があるかを示していると述べている。
研究は、科学誌サイエンスに発表された。