感染症対策に良いことは事実ですが
台湾の研究機関「国家衛生研究院」が、高齢化や認知症に関しての医学誌であるエイジング・セル (Aging Cell)に最近、論文を発表しました。
その内容は、以下の論文のタイトルにありますように、
「ビタミンD3の継続的な補給は、認知症を発症させる可能性が高まる」
というものでした。
(論文) ビタミンD補給はアルツハイマー病の進行を悪化させる : 動物モデルとヒトコホート研究
Vitamin D supplementation worsens Alzheimer's progression: Animal model and human cohort studies
これを読んで、「うーむ……」と思いました。
というのも、新型コロナウイルス感染症への対処として、あるいは予防として、ビタミンDは非常に効果的なもののひとつとしてピックアップされていたからです。
ちなみに、そのこと自体はまったく正論であり、コロナ患者あるいは重症者の多くが、ビタミンDが欠乏していたことは多くの研究でわかっています。
[記事]コロナ患者の大多数がビタミンD欠乏症であることがわかっている中、何と「サプリメントの服用や日光だけではビタミンDの健康作用はなく」特定の「腸内細菌の存在」が必要であることが判明
In Deep 2020年12月2日
コロナというより、ビタミンDはあらゆる感染症への有効性が示されていますが、今回の台湾の研究を見ますと、
「サプリでの摂取は、あまり継続的なものにはしないほうがいいのかもしれない」
というようにも思いました。
短期的な感染症の予防と重症化対策には有効でも、日常的に飲み続けるものでもないのかなというような感じなのかもしれません。
私自身、今はもうビタミンDを服用していないですが、昨年は一定期間服用していました。
コロナ感染の拡大というより、ワクチン接種が拡大した時期です。どこかで、曝露を懸念していたのかもしれません。
その後、個人的にいろいろと考えも転じて、「何も服用しない」という姿勢に今は変わってきているのですが…まあ、正確には、毎日、梅干しと緑茶とワカメは必ず摂るようにしている以外は、あまり薬やサプリは服用しないようになりました(たまにミヤリサン)。
アメリカでは、コロナ以前から、
> アメリカ人の 37%がビタミンDのサプリメントを摂取しており、43%がカルシウムサプリメントを摂取していることがわかっている。 (In Deep)
という状況にもなっていまして、ビタミンDは高い支持を得ています。フォーカス台湾の記事を読みますと、台湾でも、「認知症対策」としてビタミンDを服用している人が多いようですが、場合によっては、逆効果になる可能性もあるのかもしれません。
何事もほどほどがいいということでしょうかね。
ビタミンDを体内で作る自然の方法は、
・太陽光を浴びる
・食物から摂取する
ということになるのですが、これで基本的には十分なのかもしれません。
ただ、In Deep の記事でもご紹介していますが、ビタミンDの働きは、「腸内細菌環境に支配されている」ものであり、腸内細菌の状況が良いことが大事であることが示されています。
腸内細菌の状況が良くない場合、どれだけビタミンDが生成されても、活用されないようなのです。
いずれにしましても、口から入るものは、どんなものにしてもいろいろと考える必要があるのかもしれないですね。
ここから、台湾の研究について報じていたフォーカス台湾の記事をご紹介します。
高齢者のビタミンD3長期服用、認知症発症のリスク増加の恐れ=台湾の研究機関
フォーカス台湾 2022/09/06
台湾の研究機関、国家衛生研究院は、高齢者がビタミンD3を長期的に補充することで、認知症発症のリスクが増加する恐れがあるとの研究結果を発表した。
同院は 8月29日に記者会見を開き、ビタミンDを乱用しないよう呼び掛けた。
ビタミンDは神経系において重要な役割を果たすことが分かっている。
研究に参加した同院分子・ゲノム医学研究所の荘志立研究員によれば、過去の研究でビタミンDの欠乏と認知症発症のリスクに関係があることが明らかになっており、因果関係ははっきりしていないものの、ビタミンDの補充によって認知症のリスクを下げようとする人も多くいるという。
今回の研究では、国民健康保険のデータベースを分析した。
認知症でない 65歳以上の高齢者 1万4648人を 2000年から 11年間追跡調査し、活性型ビタミンD3製剤のカルシトリオールの継続的な使用が認知症リスクに与える影響を調査した。
研究結果では、カルシトリオール 0.25マイクログラムを年間 146錠以上服用した人は、認知症を発症するリスクが非服用者の1.8倍だったことが分かった。
また、カルシトリオールを年間 146錠以上処方された認知症患者は、処方されなかった患者と比較して死亡リスクが2.17倍になることも分かったという。
アルツハイマー病モデルマウスを使った実験では、モデルマウスにビタミンDを投与すると大脳の病変を悪化させ、知能が退化することが明らかになったとしている。
荘研究員は、この研究結果はビタミンDの働きを完全に覆すものではないと強調。高齢者や認知症患者に対し、注意を促すものだとした。
これらの研究成果は、学術誌「Aging Cell」で発表されている。