昨年の今頃は、中国での新型コロナウイルスの感染が拡大していたと同時に、アフリカ、中東、そしてパキスタンなどの東アジアで、イナゴ(サバクトビバッタ)の歴史的な大発生に見舞われていたときでもありました。
以下の記事は、昨年 2月22日に書いたものです。
疫病と蝗害…聖書的な災いが現実に:狂気的な数千億のイナゴの大発生による被害範囲がアフリカ、中東から中国までの20カ国以上に拡大。国連は6月までにイナゴの数が「現在の500倍に膨れあがる可能性」を警告
In Deep 2020年2月22日
今年 2021年も、アフリカ東部などを中心として、1月からイナゴの大発生が続いていることが報じられています。
以下は 2月1日現在でのアフリカ東部で確認されているイナゴの大群の数です。
茶色のエリアが最も激しいイナゴの侵入に見舞われています。
2021年1月の終わり時点でのイナゴの大群の発生状況
East Africa - Desert Locust Crisis, Fact Sheet
2月4日の中国新華社は、現在のケニアの状況について、同国内閣官房長官の談話を引用して以下のように報じていました。
ケニアでサバクトビバッタの侵入が増加している
xinhuanet.com 2021/02/04
ケニアの農業省は 2月3日、日々規模が増大しているサバクトビバッタの同国への侵入の第二波といまだに戦っていると発表した。
ケニア農業省の内閣官房長官ピーター・ムニャ氏は、ナイロビの記者たちに、イナゴの群れはケニア国外からやって来ているため、この害虫との戦いは非常に予測不可能であると語った。官房長官は、「国外からのサバクトビバッタの追跡はあまり正確にはできない」と述べる。
同時に、国連食糧農業機関(FAO)は、最新のテクノロジーを利用して東アフリカ諸国がイナゴを封じ込めることを支援していると述べている。「とはいえ、大きな風の流れが国外からケニアに向かって吹いているために、イナゴの大群がケニアの国境から侵入してくることを防ぐ手段が何もない」と官房長官は言う。
イナゴの動きを追跡するための機器には限界があり、したがってイナゴの大群の発生と移動に関する予測は不正確な場合があることを明らかにした。
ケニア農業省は、このイナゴの問題の一部の原因は気候変動であると考えられると付け加え、そして、このイナゴの問題はケニアが経験している新しい現象であり、これまでにないようなイナゴの蔓延の原因となっているという。
官房長官は、ケニアは第一波のイナゴの侵入は、それを封じ込めることができたが、第二波に対しても、国がサバクトビバッタの流入を封じ込めるために使える、すべてを配備していると述べている。
イナゴが集中しているケニア北東部では、殺虫剤の空中散布と地上での散布の両方が行われている。
ここまでです。
このイナゴへの対策というのは、とにかく殺虫剤の散布がメイン(というか、それ以外はあまりないというのが現実)ですが、昨年も、アフリカから中東、東アジアでは、2月頃から 9月頃までの半年以上にわたり、大々的な殺虫剤散布がおこなわれていました。
そして、今年も2年連続でその大量散布が始まっているのです。
上の報道に、
> 空中散布と地上での散布の両方が行われている。
とありますように、大規模なイナゴの大群に対しての散布は、やはり大規模なものとなっていく傾向があります。
それで懸念されるのが、「環境の生態系の変化」あるいは「徹底した破壊」ということなんですね。
もちろん、イナゴを放置すれば、農作物が荒らされ、大規模な食糧危機につながってしまうことは事実ですが、しかし「歴史上かつてないほどの規模の殺虫剤散布」を、こんなに長く続けていては、
「特定の地域で、環境中の昆虫や微生物が大規模に消えてしまうのではないか」
という懸念があります。
ミツバチなどを含めてです。
どんな自然形態でも、昆虫と微生物が存在しない中での健全な育成というのはないですので、結果として、該当地域の農作や、あるいは生態系の循環が崩壊していき、そのようなこともまた結果としての食糧危機につながる可能性もあるのではないかと考えています。
それに関しては、昨年 3月の以下の記事にも書いています。
人類絶滅への道 : コロナウイルスとイナゴに対しての「殺菌と消毒の嵐」が吹き荒れる中、地球の微生物と昆虫類が「大絶滅」に向かう可能性。そしてその次は…
In Deep 2020年3月29日
今から2年ほど前の以下の記事などに書きましたが、もともと、地球の昆虫は絶滅的な減少の様相となっていまして、かつての地球の生態系そのものが終焉に向かいつつあります。
地球上の昆虫の減少が「カタストロフ的なレベル」であることが包括的な科学的調査により判明。科学者たちは「100年以内にすべての昆虫が絶滅しても不思議ではない」と発表
In Deep 2019年2月12日
いずれにしましても、今年またも昨年と同じような場所で、イナゴの大発生始まり、これらの大群が昨年同様に東に向かって進んで行った場合、中東、東アジア、あるいは、中国の一部もまた、今年もイナゴへの対応に苦慮しそうです。