聖書の舞台の川で
エジプトのナイル川が「真っ赤に染まった」という事象が数多く投稿されています。
https://twitter.com/ronin19217435/status/1724162144961188116
報道としては、以下のように伝えられています。
ナイル川が赤く流れる:巨大人工河川プロジェクトの出現による自然現象か、何かの前兆か
The Nile Runs Red: Natural Phenomenon or Omen as Mega Artificial River Project Emerges
bnn.network 2023/11/14
古代以来文明の生命線であったナイル川が驚くべき変貌を遂げた。
伝統的に生命を与える青だったその水は、不可解にも赤く変色し、エジプトの名高い川岸に世界の注目を集めている。人々がこの突然の変化の影響に取り組む中、この現象は黙示録的な予言から科学的調査に至るまで、一連の解釈を引き起こした。
歴史の残響と現代の推測
多くの人たちにとって、深紅のナイル川は、聖書に登場するモーセの物語や、水が血のように流れたエジプトの疫病を思い出させるものだ。
この宗教的な象徴性は、この出来事を、いわゆる「終末」のしるしとして解釈するのに拍車をかけている。
しかし、歴史によれば、そのような変化はまれではあるものの、多くの場合、紅藻類の発生、汚染、堆積物の移動などの自然な説明ができる。
人工河川構想の発表
この光景のさなか、エジプトとサウジアラビアは、ナイル川を超える野心を持つ人工河川の計画を発表した。
この広範なネットワークは、地域全体に脱塩水を輸送することを目的としており、水不足という差し迫った問題と水資源管理における革新的な解決策の緊急の必要性を浮き彫りにした。
水の安全保障と農業に革命を起こす
提案されている人工河川は、現在世界最大の小麦輸入国として知られるエジプトの農業拡大に革命を起こすことになる。防食パイプの使用や水資源のリサイクルなど、このプロジェクトが持続可能性に重点を置いているのは、食糧安全保障と水不足という絡み合った課題に対処するという取り組みを反映している。
同時に、スーダンで人道危機が広がり、子どもたちが避難や紛争の矢面に立たされていることから、地域の発展と安定に対する包括的なアプローチの切実な必要性が浮き彫りとなっている。
中東と北アフリカの壮大な物語の中で、ナイル川の変化と人工河川プロジェクトは、単なる孤立した出来事ではなく、この地域の生態学的および人道的軌道の転換点を示す相互に関連した現象といえる。
ここまでです。
水が赤くなることと「巨大人工河川プロジェクト」にどういう合理的な関係があるのかよく理解できないですが、報道では、こうなっています。
そもそも、「人工河川の計画を発表した」という段階ですので、まあ関係ないですね。
実はこのナイル川は、今から 7年にも「赤くなっている光景」が示されました。
以下は、2016年4月1日に、欧州宇宙機関(ESA)の観測衛星が撮影したナイル周辺の衛星画像です。
ESAの人工衛星センチネル3号が撮影したナイル川流域
ESA
ナイル川の位置関係は、私たちにはわかりにくいですが、地図と並べますと、その時、赤くなったのは以下のような水域です。
ただ、これは「赤く見える」だけのものであり、実際に赤くなっていたわけではないようです。以下は報道からの抜粋です。
地球観測衛星センチネル3号が搭載する放射計は、地球の表面から放射されるエネルギーを測定する。その際、植物の群生から放射される熱は赤外線スペクトルで表現される。そのため、ナイル川を囲む植物の群生によって、ナイル川は赤く示される。 israel365news.com
しかし……この説明ですと、「川から海からナイル川周辺の全部の水面が植物だらけなのかよ」という疑問は当時あったのですが、それはいいです。
これについては、以下の記事にあります。
(記事)聖書の記述通りに「エジプトのナイル川が血に染まった日」から、もうすぐ1年。その間にどれくらいの世界中の川や湖や池が「血に染まった」かを思い出してみる
In Deep 2017年3月10日
当時は、世界中で「いろいろな河や湖が赤くなる」ことが続きまして、上の記事の後半である程度ご紹介しています。
この年には、北緯33度線にあるイランのオルーミーイェ湖という湖も真っ赤に染まりました。
2016年7月 真っ赤に染まったイランのオルーミーイェ湖
indeep.jp
先ほどの報道にもありましたとおり、川が赤くなる理由としては、大体の場合は、微生物や化学物質など、何らかの具体的な原因が見出されることが多いですが、範囲が広すぎる場合は「原因はよくわからない」ということにもなりやすいです。
今から 11年前に、中国の長江という大河の広範囲が赤く染まったことがあります。ユーラシア大陸のなかで最も長い川です。ここまで広大な川だと理由はわかりません。当時も赤くなった理由は不明とされていました。
2012年9月 真っ赤に染まった中国の長江
In Deep
原因は何でもいいのですが、川が赤く染まるということは、とにかく象徴的なことではあります。
中東の戦争的な状況は、ほとんど落ち着いていないと思われる中での、この事象はとても興味深いものでした。