火山噴火と地震活動 自然災害

中国の研究者たちが、甘粛省のM6.2の地震の「発生日時と規模」を重力波の観測により正確に予想していた。しかし、発生場所は特定できず

投稿日:


被災地。地震発生当時の気温はマイナス14℃。dealmoon.co.uk




地球の「重力場」を監視することによる地震の予知

12月18日に、中国の甘粛省で、マグニチュード 6.2の地震が発生しました。

(記事)中国の甘粛省でマグニチュード6.2の地震。少なくとも111人が死亡という報道
BDW 2023年12月19日

その後、死者数が 130人を超えたことが報じられていましたが、この地震について、

「中国の研究者たちが、事前に発生を正確に予測していた」

ことが、香港サウスチャイナ・モーニング・ポストにより報じられていました。

その地震の予測の方法は、「高精度の機器を使用して地球の重力場を低周波で監視」するというもののようです。

12月15日の朝に、複数のセンサーからの異常なデータ読み取りが現れ、研究者は「今後 3日から 5日後に大地震が発生する」と計算し(地震の発生は 3日後の 12月18日)、そして、驚くことに、

「地震の規模はマグニチュード 6.27」

としたことでした(実際に起きた地震の規模と同じ)。

ところが……。

「発生する場所を特定できなかった」

のですね。

この重力場を監視する方法は、「地震の発生そのものは正確に予測できても、場所を特定する方法が確立されていない」ようなのです。

そうなってくると……この地震予測の意味は……というようなことも思いますが、しかし、科学的な観測により発生日時と地震の規模を突きとめることができたという話は、もしかすると、初めて聞く話かもしれず、興味を持ちました。

予測というのとは異なりますが、大地震の発生する直前に、

「高層大気圏の電離層の変化が起きる」

ことが知られていまして、これは、2011年3月11日の東北の大地震の後に、アメリカの研究でわかったことで、2019年には、京都大学の科学者たちが論文を発表しています。

以下にあります。

(記事)「地震の原因は宇宙からやって来ている決定的な証拠」が、京都大学の科学者たちによる高層大気圏の「電離層の研究」から改めて提示される。巨大地震発生のメカニズムの解明と予測に科学者たちは近づけるか
In Deep 2019年10月23日

 

2011年3月11日の「東北上空の電離層の異常」については以下の記事で取れ挙げています。

(記事)衝撃のデータ: 3月11日の地震の前に観測された日本上空の赤外線と電子量の急激な変化
In Deep 2011年05月20日

2011年3月10日から3月12日までの東北周辺の赤外線エネルギー量の変化

MIT Technology Review 2011/05/18

ともかく、地震の発生前の科学的メカニズムが、これまで長く考えられてきたものとずいぶんと変化してきている部分はあるようです。

サウスチャイナ・モーニング・ポストの報道をご紹介します。





甘粛省地震:中国の科学者たちは数日前に不吉な前兆の信号を受信したと確信している

Gansu earthquake: scientists in China believe they received an ominous signal days before
scmp.com 2023/12/20

研究者たちは、甘粛省でマグニチュード6.2の地震が発生する数日前に、警告の兆候を捉えたが、どこで地震が発生するかを正確に言うことはできなかった。陝西省の研究チームは重力波の異常を探しており、現在、地震が発生する可能性のある場所を計算する方法を見つけようとしている。

中国の研究者たちは、 甘粛省北西部で発生したマグニチュード 6.2の致命的な地震の数時間前に地震が発生すると予想していたが、どこで発生するかについては明らかにできなかった。

12月18日の真夜中直前に起きた地震以来、120人以上が死亡した。

地震の予測はほとんど不可能であるかのように見え、ほとんどの機器は地震が起きてからの数秒間しか警告を発することができない。

しかし、中国陝西省の研究者たちは、過去 10年間に世界中で発生したマグニチュード 7.0以上のすべての地震をうまく予測できる画期的な技術を開発した。

しかし残念なことに、これらの地震の発生場所を予測する方法はまだ確立されていない。

研究チームは、高精度の機器を使用して地球の重力場を低周波で監視し、地震が差し迫っているという警告の兆候である可能性のある重力波の異常を探している。

研究者たちが今回の地震が近づいていることに初めて気づいたのは、12月15日の朝に複数のセンサーからの異常なデータ読み取りに関するテキストアラートを受け取ったときだった。

その後、チームは地震が発生する可能性のある場所について議論を開始し、地震が発生する前の午後、西安交通大学教授兼学部長の張茂生氏は次のように考えていた。

「できるだけ早く場所を予測する必要がある」

この時点で、チームはすでに、異常なデータ読み取り値が記録されてから 3~ 5日以内に地震が発生する可能性が高いと計算していた。

また、観測されたデータのピークの強さに基づいて、地震のマグニチュードが約 6.27であると予測することもできたと張氏は述べた。

しかし、彼らは自分たちの省と隣接する省で地震が起きようとしていたとは予想できなかった。「これほど我々と近い場所で地震が発生するとは思っていませんでした」と張氏は語った。

研究者たちは、2月に発生した壊滅的なトルコ・シリア間地震を含む複数の地震の前兆を早期に検出することに成功し、前兆モニタリング手法と予測結果の詳細を中国の学術誌「西北地質学」に 6月に発表した。

甘粛省地震が発生する 4日前に、研究チームは陝西省周辺の 4つの異なるセンサー位置で異常な重力波の測定値を記録した。

センサーは異なる都市に設置されていたが、異常な波はすべてほぼ同時に記録され、波が光の速さで移動していたことを示すものだと西安の西北工科大学の教授、劉華強氏は述べた。

他の発生源からの重力擾乱は異常なデータ読み取りを引き起こす可能性があるが、重力地震波は特徴的に光速で伝わるため、「これが地震の前兆であるかどうかを理解するのは難しくなかった」と劉氏は述べた。

過去 2年間で 500件近くの地震を研究した結果、研究チームは現在、地震の規模と発生時期を推定できるようになったと張氏は述べた。

しかし、彼らが今解く必要があるパズルの最後のピースは、地震がどこで発生するかということだ。

「決定できない唯一の点は場所です」と劉氏は語った。

この問題を解決するためのアイデアの 1つは、世界中にセンサーを配置し、波がさまざまな重力計に到達するまでの時間差を利用して位置を特定することだ。

張氏は、異常なデータ読み取りを確認してからチームが地震の位置を正確に特定し始めることができれば、その結果を世界中で利用できるように共有したいと述べる。

しかし、これらの波は光の速度で伝わるため、現時点ではそのような計算をするにはタイミングの差が「小さすぎる」と同氏は警告した。

劉氏は、彼らが現在追求している方法は、特定の場所から発信される固有の信号波を特定するために「構造プレートに関連するパターンを探す」ことだと述べた。

中国緊急地震警報ネットワークは、甘粛省地震の震源地周辺の地域で地震が発生してから 30秒以内にテキストアラートを送信することができた。最も近くにいた人々は、地震の影響を感じるわずか 12秒前にテキストアラートを受け取りとった。

これらの早期警報システムは、「地震がすでに始まっているときに」警報を提供するものだと劉氏は述べた。震源地から遠く離れたところに住んでいる人々、つまり影響を受ける可能性が低い人々には、準備に最も多くの時間が与えられる。







-火山噴火と地震活動, 自然災害
-, ,

Copyright© 地球の記録 - アース・カタストロフ・レビュー , 2024 All Rights Reserved.