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カタールが紅海経由の液化天然ガスの輸送を停止。ヨーロッパに新たなエネルギー危機が訪れる可能性が高まる

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humnews




最大の打撃を受けるのは欧州の模様

世界最大の液化天然ガス(LNG)輸出国の一つであるカタールの国営エネルギー会社であるカタールエナジーが、

「紅海経由での液化天然ガスの輸送を停止する」

と発表して、世界に衝撃を与えています。

これは、以下の記事で取り上げました米英軍がイエメンのフーシ派を標的にした数十回のイエメンへの空爆を受けた直後に発表されたもので、ある意味での、「カタールからの報復」とも言えそうです。

(記事)米軍と英軍が合同でフーシ派の拠点を攻撃との報道。しかし実際はイエメン主要都市への空襲の模様
地球の記録 2024年1月12日

この攻撃の後、中東側から確実に何らかのアクションが起こされるだろうと見られていましたが、これもその一環かもしれません。

最も影響受けるのはヨーロッパとなるはずで、今後、輸送航路が以下のように、南アフリカの喜望峰を周回する大変に遠い航路となり、輸送日数が大幅に長くなります。


reuters.com

すぐに LNG 供給に問題が出るわけではなくとも、少なくともヨーロッパでのガス価格は上昇していくと可能性が高いです。

あるいは、英米などの今後の攻撃などの状況によって、「 生産停止」などのさらに厳しい措置がとられる可能性もないではないと見られます。

以前、ヘルシンキ大学の経済学准教授であるトゥオマス・マリネンさんが言及した「西側の経済と市場の壊滅的な崩壊」について、以下の記事で取り上げたことがあります。

(記事)イスラエル・パレスチナ戦争による全世界への「経済と市場のカタストロフ」がもたらす劇的な「終末の時代」に突入した可能性
In Deep 2023年10月15日

マリネン准教授は 10の項目を挙げましたが、そのうちの 5までは以下のようになっていました。

トゥオマス・マリネン准教授が提示したうちの 5までのシナリオ

1. 紛争は地域戦争にまでエスカレートし、米国も直接関与することになる。

2. OPECは石油禁輸で対抗。

3. イランがホルムズ海峡を封鎖。

4. 原油価格は 1バレルあたり 300ドルに達する。

5. ヨーロッパは LNG 不足により本格的なエネルギー危機に陥る。

mtmalinen.substack.com

石油禁輸やホルムズ海峡の封鎖などには至ってはいないとはいえ、英米などがさらなる攻撃を続けた場合、このあたりの項目が動き出す可能性はあるのかもしれません。

報道をご紹介します。





カタールエナジー、攻撃を受けて紅海のLNG輸送を停止

QatarEnergy halts Red Sea LNG shipping amid attacks
reuters.com 2024/01/15

世界第2位の液化天然ガス(LNG)輸出国であるカタールは、その生産は継続しているものの、紅海経由のタンカー輸送を停止したと、この件に直接詳しい関係者が 1月15日にロイターに語った。

イエメンのイランが支援するフーシ派は、昨年 11月以来、世界の船舶交通量の約 12%を占める航路の一部である紅海の船舶を攻撃しており、フーシ派はこれは、イスラエルとの戦争でパレスチナ人を支援する狙いがあると主張している。

米国と英国軍がイエメンのフーシ派標的に数十回の空爆と海空攻撃を実施したことを受け、カタールの LNG 輸送に使われた少なくとも 4隻のタンカーが先週末に停止した

LSEG 船舶追跡データによると、アル・ガリヤ号、アル・フワイラ号、アル・ヌアマン号はカタールのラス・ラファン港で LNG を積み込み、スエズ運河に向かっていたが、1月14日にオマーン沖で停止した。カタールに戻る途中だったアル・レカヤット号は1月13日、航路途中の紅海で停止した。

同関係者は「安全上の勧告を得るために一時停止している。紅海の通過が依然として安全でない場合は、岬(南アフリカの喜望峰)を経由する」と述べた。また、「 LNG の生産停止ではない」とした。

カタール政府国際メディア局とカタールエナジーはロイターのコメント要請に応じなかった。

LNG アナリストのアレックス・フローリー氏は、喜望峰を周回してヨーロッパに向かう代替ルートにより、カタールからの 18日間の航海に約 9日が追加される可能性があると述べた。

あるトレーダーは、スエズ運河の料金を支払わないことで部分的に相殺されるものの、貨物の価格にメガワット時(MWh)あたり約 1~1.30ユーロが上乗せされる可能性があると試算した。

別の取引関係者は 15日、「カタールは喜望峰を経由する長距離ルートを選択するだけで、配達に遅れは生じるだろうが、欧州の収支に劇的な影響は及ばない」と述べた。

LSEG のデータによると、カタールは 2023年に 7,500万トン(MMt)以上の LNG を出荷し、そのうち 1,400万トンがヨーロッパのバイヤーに、5,640万トンがアジアに出荷された。

数隻の LNG 船が進路を変更した一方、他の船は紅海とスエズ運河を通ってイエメンを通過し続けており、カタール、米国、ロシアが燃料の最も活発な輸送国となっている。

S&P は、運河を通過するカタールの LNG 貨物を年間 1480万トン、米国の LNG 貨物を年間 880万トン、ロシアの LNG 貨物を年間 370万トンと見積もっている。







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