Maximum Yield
アメリカはいろいろと大変で、現在、北米の 85%が「異様な寒波」に見舞われていることを以下の記事で取りあげました。
[記事] 北米の異様な「春の大寒波」はアメリカとカナダの85%以上の地域に達する。米北部では4月中盤以降も降雪が続く見込み
地球の記録 2022年4月15日
しかし、実際には現在のアメリカでの気象上の最大の問題は「持続する干ばつ」であり、その中で、アメリカ西部の 7州に電力と飲料水を供給しているパウエル湖というダムの水位が過去最低になり、仮にこのまま水位の低下が続けば、数百万人への電力網に問題が出る可能性が出ていることを米 AP 通信が伝えています。
パウエル湖の場所
Google Map
AP通信によると、このパウエル湖は、以下のようなダムであるようです。
> アリゾナ州、コロラド州、ネブラスカ州、ネバダ州、ニューメキシコ州、ユタ州、ワイオミング州の7つの州で約500万人に電力を供給している。水位 1,063メートル以下での運用は過去に前例がない未知の領域であり、アメリカ西部の電力網と州およびメキシコ下流への飲料水の供給にさらに不確実性をもたらすと内務省は強調した。 (AP)
ここに、
> 1,063メートル以下で運用したことは過去に前例がない
とありますが、現在のパウエル湖の水位は、
「 1,075メートル」
となっていて、前例のない水位が近づいています。
グラフを見ますと、このパウエル湖の水位は、過去1年、ほぼ一貫して下がり続けていまして、通常なら雨や雪解けの水で水量が増える季節でも増えることはなかったようです。
グラフの左側の数値は、フィートで示されていますが、現在 3,525フィートで、 1,075メートルとなります。この水位をもう少し下回ると「電力供給の予測が不能となる」ということになるようです。
そのため、連邦政府は、給水制限などの緊急対策を検討していると伝えられていて、それはそれで混乱する事態となっているようです。
今後の見通しも厳しいと思われ、以下の記事で NOAA (アメリカ海洋大気庁)の今年のアメリカの中長期の気候の予測で、「アメリカ西部から中部は 7月まで極端な干ばつが続く見込み」と発表したことを取り上げています。
[記事] 米海洋大気庁が、アメリカ西部から中部の全土の60%近くが「7月まで雨がほぼ降らない極端な干ばつ」と予測…
地球の記録 2022年3月20日
現在、アメリカの中部から西部のほぼ全域が厳しい干ばつ状態ですが、少なくとも夏までにこの干ばつが解消されることはない可能性が高いと NOAA は述べています。
これらが農作などへの影響が大きいことについては考えてはいましたが、アメリカ西部の干ばつがついに、
「電力や飲料水の供給など、インフラそのものに影響する可能性」
が出てきたようです。
アメリカだけではなく、本当に厳しい夏以降になりそうですね。
AP通信の内容を伝えていた記事をご紹介します。
パウエル湖が歴史的な低水準に達し、連邦政府は緊急行動を検討
Feds Weigh Emergency Actions As Lake Powell Hits Historic Low
zerohedge.com 2022/04/17
AP通信によると、アメリカ西部の極端な干ばつは、コロラド川の下流での水の供給を減らしており、連邦当局は、何百万人もの人々に電力を供給する大規模なダムの閉鎖を防ぐことを検討しているため大混乱を引き起こし続けている。
先月、パウエル湖は 3,525フィート(1,075メートル)にまで水位が下がった。
これは、連邦政府が 50年以上前に、アリゾナ州北部でコロラド川を堰き止めて以来の最低レベルとなる。
これにより、アメリカ内務省の当局者たちは、ダムの発電能力を維持するためにダムの放水量を抑制することを提案した。
内務省のタニヤ・トルヒーヨ秘書補佐官は、パウエル湖の水位が 3,490フィート(1,063メートル)を下回ると、アメリカ西部の電力網の不確実性を生み出し、アリゾナ州、コロラド州、ネブラスカ州、ネバダ州、ニューメキシコ州、ユタ州、ワイオミング州の最大 500万人への電力に影響を与える可能性があると警告した。
ユタ州立大学コロラド川研究センターのジャック・シュミット所長は、「現在、危機管理に取り組んでおり、水力発電の維持を含む、人々の健康と安全の問題が優先されています」と述べる。
この記録的な低水位はまた、アメリカ西部が 1200年以上にわたって最も乾燥した状態を経験していることを研究者たちが発見したときに起きた。
この10年間で、アメリカ西部の干ばつの状況は悪化した。カリフォルニア州のいくつかの主要な貯水池が枯渇し、発電のタービンを回転させるための不十分な水供給のために水力発電所は閉鎖された。
カリフォルニア全体の山池の水位もまた、4月14日現在、過去の平均をはるかに下回っている。
アメリカ連邦政府の気象学者たちによる新しい予測では、夏を通して北半球でラニーニャ現象が発生する可能性が 59%あるため、干ばつ状態がさらに悪化する可能性があることが示唆されている。その場合、乾燥はさらに進行することを意味する。