中国の北京周辺で140年ぶりの豪雨による洪水で死者不明が50名以上に及んでいる - 地球の記録

8月1日、北京郊外の廟峰山地域で洪水で浸水した地域を見渡す住民。 AP

年間総雨量をはるかに超える雨が5日間で降る

中国各地で、現在、大雨と洪水が繰り返しされています。

中国の洪水そのものは、この数年間、夏場にはずっと続いていたことではありますが、首都の北京の周辺で大洪水が起きていることが伝えられています。

北京周辺は一般的に夏は乾燥する気候条件で、洪水を発生させるような豪雨は大変に珍しいようです。これは、台風（トクスリ / 台風5号）による影響が大きかったようです。

台風が通り過ぎた後の北京の道路の惨状

Eric Wang

AP 通信は、8月2日までに、少なくとも 20名が死亡し、27人が行方不明になっていると伝えていました。しかし、実際の被害はまだわかっていないようです。

その雨量はすさまじかったようで、米 ABC ニュースは、

「北京周辺としては、過去 140年で最大の豪雨を記録した」

と報じています。

その具体的な雨量は、7月29日から 8月2日までの 5日間の総雨量が 744ミリに達したとありますが、これが北京にとってどのくらいの豪雨だったかというと、中国公共環境問題研究所のマ・ジュン所長という方は、

「北京の昨年の総降水量は 500ミリメートル以下だった」

と述べていまして、つまり、5日間で 1年間分の雨量をはるかに超えた雨が降ったようです。これまで北京での年間総雨量の記録は、1891年に記録された 609ミリメートルだったそうで、これも超えています。

8月2日　冠水した中国河北省保定市

citizen.co.za

台風の影響とはいえ、ちょっと平年とは比較にならないような影響を中国の首都が受けてしまったようです。

今、日本も台風の影響下にありますが、現在、エルニーニョ現象がさらに拡大しており、このため、

「ジェット気流の位置が例年とは異なる」

ことが報じられています。

このようなことから、秋に向けて、世界的に異様な天候の状況となる可能性が高くなっています。

また、日本周辺の海域の海水表面温度が大変に高くなっており、今後も含めて、台風が「上陸せずに海を進んだ場合」、なかなか勢力が弱くならない可能性もあります。

7月31日の日本の海域の海水表面温度の平年との差異

気象庁

北京の豪雨と洪水について、AP 通信の記事をご紹介します。

8月1日、北京郊外の廟峰山地区。洪水で浸水した中国伝統様式の門

中国の首都北京周辺の洪水で、少なくとも 20人が死亡、27人が行方不明となっており、数千人が安全に避難していると中国国営メディアが 8月1日に報じた。

連日の大雨により、当局は鉄道駅を閉鎖し、脆弱な地域の人々を学校の体育館に避難させた。多くの家々が浸水し、道路は引き裂かれ、車は激流によって山積みになった。

北京でこのレベルの降水量はめったに見られないものだ。

北京は通常穏やかで乾燥した夏だが、今年の夏は記録的な高温日が続いた。これほど大量の雨が降ることはめったにない中国北部の他の地域でも洪水が発生し、多数の死者が出ている。

毎年夏には季節性洪水が中国の大部分、特に亜熱帯南部を襲う一方、今年は北部の一部地域で過去 50年間で最悪の洪水が報告された。

習近平国家主席は緊急度の高さを示し、地方政府に対し、閉じ込められた人々の救出に「全力を尽くし」、人命の損失と財産への損害を最小限に抑えるよう命令を出した。

国営メディアは、北京市中心部の西側の山中で 11人が死亡、27人が行方不明だと報じた。他に 9人の死亡が河北省で報告された。

河北省は大都市のすぐ外にあり、食糧と労働力の多くの供給源となっている。国営放送 CCTV は、50万人以上が洪水の影響を受けたと報じたが、何人が他の場所に移されたかは明らかにしなかった。

7月初旬、重慶市南西部で洪水により少なくとも 15人が死亡し、極北西部の遼寧省では約 5,590人が避難を余儀なくされた。湖北省中部では暴風雨により住民が車や家に閉じ込められた。

中国で近年の歴史の中で最も死者を出し、最も破壊的な洪水は 1998年に発生し、4,150人が死亡した災害だ。そのほとんどは長江沿いで発生した。

2021年、中部の河南省では洪水により 300人以上が死亡した。同年 7月20日、記録的な降雨により省都鄭州市が浸水し、道路が激流と化し、地下鉄の少なくとも一部が浸水した。