最低で150万人という推定
中国政府は、昨年末に、いわゆる「ゼロコロナ政策」を撤廃し、コロナに対しての感染症としての位置づけを下げました。
昨年 12月25日には、当局は、「コロナの症例数と死亡数の毎日の数値を今後公表しない」と発表しまして、それ以来、中国でのコロナの感染数や死亡者数は、ほぼわからなくなりました。
しかし、12月から 2月くらいまで、かなりの感染拡大が起きていたことが、当時の正式な調査でわかります。12月24日に、四川省の疾病管理予防センターが発表した数値は以下のようになっていました。
＞ これまでに発表された結果によると、四川省の感染率は 63.5％を超えており、前回の調査より16.59％高くなっている。 Global Times
四川省の人口は、約 8000万人ですので、この際には、5000万人以上がコロナに感染（発症）していたという計算になります。中国全体だと、どれほどのものとなっているのか想像できないほどでした。
これに関しては、以下の記事に中国の報道を翻訳しています。
［記事］ 中国保健当局の調査で四川省のコロナ感染率は 63%…。日本人の大多数が感染増強抗体を持っている中でこんなものが国に入ってきたら…
In Deep 2022年12月29日
いずれにしても、昨年末から今年のはじめにかけての中国では、先ほどのような驚異的な感染拡大が起きていたのですが、コロナがどれだけ軽い病態だったとしても、一定率では必ず死亡者は出るものです。
しかし、その数は 12月25日以降は、当局から発表されなかったですので、まったくわからない状態のままでした。
一般の人たちの死亡状況はどのような方法でも、わかる手はないですが、ただ、当時、中国の著名人や共産党員の連日の死亡数の多さには驚いていました。著名人や共産党員は訃報が出ますので、それでわかります。以下の記事などにもあります。
［記事］12月に連続して死亡した中国共産党所属の著名な芸術家たちのリスト
地球の記録 2022年12月28日
［記事］中国共産党関係の高官と著名人たちの夥しい数の訃報 / 2023年1月18日版
地球の記録 2023年1月18日
最近、著名な医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル（BMJ）に、不明だった中国の 2023年初めの死者数について、データから、
「 150万人を超えている可能性が高い」
とした記事が掲載されていました。
浙江省の「火葬件数」から、全土の超過死亡数を推測したもので、正確とはいえなくとも、おおまかな数値としては、そのくらいであった可能性が示されています。
BMJ の記事をご紹介します。
新型コロナウイルス感染症（Covid-19）：漏洩した火葬データは中国の死亡率の真の規模を示唆する
Covid-19: Leaked cremation data hint at true scale of China’s death rate
bmj.com 2023/07/31
中国の浙江省当局が発表し、その後にすぐに撤回された「火葬件数」は、中国政府の公式パンデミック死亡数に対する疑念を裏付けるものであり、中国がゼロコロナ政策を放棄した後の数週間で、新型コロナウイルスによる死者数がおよそ 150万人になると昨年の12月に予測された国際予測を裏付けるものとなっているようだ。
全死亡者の 99％以上が火葬される、比較的裕福で発展した東部の浙江省では、2023年第1四半期の火葬件数は 17万1千件弱だった。比較すると、2022年第1四半期は 9万9千件で、 2021年の第 1四半期は、9万件だった。
中国全土で推定すると、この死亡率の 72%上昇は、2023年の第 1四半期に約 150万人の超過死亡があったことに相当し、疫学者たちによるいくつかのモデルの予測とほぼ一致している。
例年であれば、中国のすべての州の第 1四半期の火葬統計は、各州の保健報告書の一部として 9月頃に発表される。
しかし、中国全土で感染が急増し始めた 6月に各省が 2022年第 4四半期の健康報告を発表したとき、各省の報告からは火葬数が欠落していた。特にコロナ感染の被害が大きかった都市の火葬者数は、2022年の初めにすでに公式データから消え始めていた。
浙江省でデータが公開されたのは不注意だったようだ。
そのデータはすぐに削除されたが、その後、国際研究者たちによってキャッシュされた。このデータに言及した記事が北京のメディア「財新」に一時掲載されたが、これも削除された。しかし、中国のソーシャルメディアはこの暴露で大騒ぎになった。
香港大学の疫学・生物統計部門を率いるベン・カウリング氏は BMJ に対し、中国の都市からの以前のデータと合わせて新たな数字は、中国がゼロコロナ政策を放棄したことで「出口の波」が押し寄せているという推定を裏付けているようだと語った。
「 12月と 1月に、おそらく中国の人口の 90％以上が感染」し、約 150万人が死亡したと述べた。
12月の中国各都市のニュース報道では、火葬場が混雑しており、スタッフの仕事量が通常の 2倍から 3倍になっていると報告されていた。
浙江省保健当局は同月、人口 5,700万人の同省で1日あたり 100万人の新規感染者が発生していると発表した。
12月末に向けて、危機が増大し続けるにつれ、すでに現実から切り離されていると見なされていた中国の保健省からの新型コロナウイルスデータの日次報告は完全に停止された。
中国は 2月に再び死者数を報告し始め、その時点でパンデミックが始まって以来 8万3150人の死亡者を報告していた。
それ以来、報告書の数字の死者は約 550人しか増えていなかった。8万3150人という数字は、パンデミックが始まって以来、毎日全国的に報告される個人死亡者数の合計わずか 5272人をすでにはるかに上回っていた。
中国で報告された死亡者は全員、病院での呼吸不全によるものだった。これにより、心臓、肝臓、腎不全による多くの予想される死亡や、死亡の少なくとも 80％を占めている病院外での死亡が除外されていることになる。
多くの専門家たちは、死者数が 150万という数字さえ保守的だと考えている。
浙江省は中国の全国平均よりワクチン接種率が高く、医療制度も比較的充実している。他の州から出てきた本当の死者数に関する他のヒントは、中国がゼロコロナ政策から脱却するにつれて死亡率がさらに急上昇したことを示唆している。
江蘇省東部の医療従事者である王寧氏は 2023年1月下旬、ラジオ・フリー・アジアに対し、同省では死後に必要な官僚的手続き「戸口」と呼ばれる戸籍の抹消が急増していると語った。
「この街では以前は 1か月に 100人が亡くなっていましたが、今では 300人から 500人です」と王寧氏は述べた。
同月、武漢市の民政部に近い人物、陳和陽氏は、人口 90万人が住む自身の地元の地区で「この 1か月で 5000人以上の死者が発生しており、これは通常の数倍です」と述べた。