砂糖入りドリンクからは、ミネラルウォーターの100倍の可塑剤が検出
少し前に、In Deep で、「ほぼすべての植物油が生殖毒性を持つ」ことが示されたテヘラン大学の研究をご紹介しました。
以下の記事です。
[記事] 植物油のほぼすべてが「顕著な生殖毒性」を持つことが研究で見出される。卵巣のほぼすべての部位が萎縮し、さらにオキシトシン生産遺伝子が調節不全に
In Deep 2023年5月1日
これは、研究者たちが「油そのもの」で実験して卵巣毒性が示されたというものでしたので、植物油の「何が生殖毒性を導いているか」については突きとめられていませんが、研究者たちは、
「フタル酸エステル等によるものではないか」
としています。
理由は、植物油の多くが「プラスチックボトルに入っている」ためです。
フタル酸エステル類は、プラスチックを柔らかくするための「可塑剤(かそざい / plasticizer)」と呼ばれるものの中でよく知られているもので、プラスチック製品には広く使われています。
そして、このフタル酸エステル類は、強い生殖毒性を持つことがわかっています。
2019年におこなわれたアメリカのイリノイ大学の研究者たちによるマウスの研究では、
「フタル酸エステル類の投与後 3ヶ月間に処方されたメスの 3分の 1は交配後に妊娠できなかった」
ことが示されました。
2019年のこちらの記事でご紹介しています。
しかも、研究で与えたのは、「最低用量」のフタル酸エステル類です。
わずかな量でもメスの妊娠率を著しく下げるものが、今では、人間の食料のパッケージに広く使われており、これだけでも、人間界の出生率が下がり続けている理由を説明できそうなくらいですが、今回のスペインのバルセロナ環境局の研究は、「市販されている飲料」に関してのものでした。
水、ソフトドリンク、ジュースなど調査した 75サンプル「すべて」からフタル酸エステル類などの可塑剤が検出されました。
ただ、飲料の種類によって、その量には大きな差がありまして、ニュースリリースには、以下のように書かれています。
(論文のニュースリリースより)
> 最高レベルの汚染が検出されたのは、平均濃度 2,876 ナノグラム/リットル (ng/L) のコーラタイプの甘い清涼飲料水と、砂糖を添加したジュース (2,965 ng/L) で、最も低いレベルだったのは、水(ミネラルウォーター)サンプル中に検出された 20.7 ng/Lだった。 idaea.csic.es
甘い飲み物は、おおむねミネラルウォーターの 100倍以上の可塑剤を含んでいるということになりそうです。
論文は以下にあります。
水およびパック入り飲料中の有機リン酸エステルへの人体曝露
Human exposure to organophosphate esters in water and packed beverages
まあ……植物油のほうについては、「全然使わないで生活する」というのも、なかなか現実的ではないですが、甘い飲み物なら、飲まなければそれでいいというような話の気もします。
特に、妊娠可能な年齢の女性は避けるべきかもしれません。
それにしても、食用油やドリンクがこの感じですと、非常に多くの食品に可塑剤が含まれていそうです。何しろ、今は食料も飲料も何もかもプラスチックに入っています。
日本では、醤油や味噌などの日本系の調味料も、一般的なものはほとんどがプラスチックボトル入りですし、ケチャップやマヨネーズ等の若い人たちに好まれるものもほとんどがそうです。また、研究では、プラスチックボトルからだけではなく、「砂糖由来の可塑剤の影響」があるようです。
現在の、世界的にプラスチックに依存した食料流通システムを一気に変化させることが簡単にできるようにも思えず、女性の不妊化傾向は続くか、あるいは拡大しそうです。
スペインの研究のニュースリリースをご紹介させていただきます。
砂糖入りの飲み物には、ミネラルウォーターの100倍レベルの可塑剤が含まれている
Sugary drinks have levels of plasticizers 100 times higher than those of water
idaea.csic.es 2023/05/03
IDAEA (バルセロナ環境局)による研究で、水、コーラ系ソフトドリンク、ジュース、ワイン、ホットドリンクなど、さまざまな飲料の 75サンプル中から有機リン系可塑剤の存在が分析された。
結果は、平均して、砂糖入りの飲料にはこの種の可塑剤の濃度が最も低い水(ミネラルウォーター)よりも 100倍多く含まれていることを示した。
『Environment International 』誌に掲載されたこの研究では、これらの検出された可塑剤は、パッケージ(プラスチック)と、飲料に添加された砂糖の両方に由来していることが判明した。
可塑剤は、プラスチックに望ましい柔軟性と耐久性を与えるためにプラスチックに添加される化合物の一種だ。最新の研究では、神経損傷、内分泌かく乱、ガン、生殖能力の問題など、いくつかの有機リン酸系可塑剤の毒性が示されている。
バルセロナ環境局の研究者で、論文の筆頭著者のフリオ・フェルナンデス氏は、以下のように述べる
「研究の結果は、飲料の 95%以上に分析した 19種類の有機リン酸系可塑剤のうちの少なくとも 1つが含まれていることを示しました。これは、これらの化合物が日常に遍在していることと、私たちが日常生活でこれらの化合物に頻繁に曝露していることを示しています」
最高レベルの汚染が検出されたのは、平均濃度 2,876 ナノグラム/リットル (ng/L) のコーラタイプの甘い清涼飲料水と、砂糖を添加したジュース (2,965 ng/L) で、最も低いレベルは水(ミネラルウォーター)サンプル中に検出された 20.7 ng/Lだった。
研究者のひとりであるエセル・エルジャラット氏は以下のように述べる。
「最も印象的な結果の 1つは、リン酸 2-エチルヘキシルジフェニルの存在により、甘い飲料に可塑剤のレベルが高いことが観察されたことです」
砂糖サンプルの分析では、リン酸 2-エチルヘキシルジフェニルのレベルの上昇が示されており、飲料に添加された砂糖が汚染経路の 1つであることが裏付けられている。
リン酸 2-エチルヘキシルジフェニルの毒性は、乳ガンや子宮ガンなど、ある種のガンに罹患するリスクの増加に関連していることに注意することが重要だ。