インドでも子どもを中心とした感染症患者が急増
先日、南米各地で、非常に多くの種類の感染症が流行していることを取り上げました。
[記事] 南米の状況は次の日本の冬を示唆している? ブラジルをはじめ多くの国で小児のウイルス性感染症の爆発により公衆衛生上の緊急事態に
In Deep 2023年7月3日
特に、子どもや赤ちゃんの感染症や重症化が深刻のようですが、インドでも各報道メディアで、感染症の爆発的な増加が伝えられています。
日本でも現在、全国で 5つの感染症のアラートが出ていて、やはり主に(あるいは、ほとんど)子どもの感染症です。以下に県別のアラート状況を示しています。
・ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱など、日本各地に5つの感染症アラートが発出中
2023年7月4日
現在、日本でアラートが出ているのは、以下です。
・ヘルパンギーナ (子どもの夏風邪)
・咽頭結膜熱 (プール熱 / アデノウイルスが原因)
・流行性耳下腺炎 (おたふくかぜ)
・A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
・感染性胃腸炎
このうち、ヘルパンギーナが突出して多く、次にアデノウイルスによる咽頭結膜熱の報告が多いです。
そして、インドでも「何らかの感染症の流行」が起きているようなのですが、報道メディアにより、さまざまな病態が描かれており、主流がどれかは今ひとつわかりませんが、ともかく、特にケララ州という州で、6月から発熱患者が急増していることは確かなようです。
いくつか現地の報道から抜粋します。
報道「ケララ州で発熱患者が猛威を振るう中、インフルエンザの予防接種が解決策になる可能性がある」より
ケララ州では 6月に、29万3000人の発熱患者を記録した。7月1日には、さらに 12,728人の発熱症例が報告された。
減少の兆しがないことから、国民へのインフルエンザワクチンの投与に関する議論が再浮上している。新たな予防接種政策の策定を委託されたB・エクバル医師率いる専門委員会は、ケララ州で 65歳以上の個人にインフルエンザワクチンの接種を「義務付ける」ことを提案している。
newindianexpress.com 2023/07/03
猛暑のインドの夏にインフルエンザが流行するというのも、かなり異次元の話ですが、ともかく、この報道では、主流はインフルエンザとなっているように読めます。
以下の報道では、ここにデング熱やレプトスピラ症(ネズミが媒介する細菌感染症)などが加わり、そして、一番多く亡くなっているのは、このデング熱とレプトスピラ症のようです。
報道「デング熱、インフルエンザ、ネズミ熱がケララ州を席巻」より
ケララ州で感染症の数が増加している。 公式データによると、6月の最初の 19日間で 16万1346 人以上が発熱のため政府病院での治療を求めた。
デング熱 過去 6カ月間にデング熱で死亡した人の数は 68人に増加した。今月は 1,008人がこの病気の影響を受けた。死者数は 16人に増えた。
狂犬病 3週間で過去 77人が狂犬病と診断され、116人が狂犬病の症状を示した。27人がこの病気で亡くなった。
インフルエンザとレプトスピラ症 今年は 41人がインフルエンザの症状で死亡し、68人が、レプトスピラ症により死亡した。
狂犬病は別として、いろいろな感染症が「同時に増えている」という構図になっているようです。この構図は、日本や南米と同じに見えることで、そして、過去にはほぼなかったことです。
気になるのは、現在の感染症の流行の中で、「乳幼児の脳炎が増加している」という報道でした。
子どもの脳炎、脳症についての原因は明確ではないにしても、その一部には「解熱剤」があるとされています。以下の記事に載せました日本小児科学会理事会の文書からもわかります。
[記事] 子どもがみんな解熱剤でやられてしまう
In Deep 2022年8月27日
日本の現在の子どもの感染症流行の中で、脳症などが起きているのかどうかは分からないですが、インドでは起きているようです。
そのインドでの乳幼児の脳炎についての記事で締めさせていただきます。
医師らは小児のインフルエンザ関連脳炎の増加を懸念
Doctors concerned over rise in influenza-associated encephalitis in children
The Hindu 2023/07/01
H1N1 感染者数の急増に続き、ケララ州全域で、幼児におけるインフルエンザ関連脳炎 / 脳症(IAE)の発生率が増加しているとの報告が深刻な懸念として浮上している。
過去 2か月間で幼児の予期せぬ突然死が数件報告されたことを受けて、州内でのインフルエンザ症例における神経学的関与の増加を臨床医が認識し始めている。
インフルエンザは主に軽度の呼吸器疾患として現れるが、しかし、神経学的症状が流行中に発生することが知られており、幼児が最も脆弱だ。インフルエンザで入院した小児における神経系合併症の頻度は、さまざまな研究で 1.7~ 15%と報告されている。
神経障害が起こると、感染は急速に進行する。完全な脳ヘルニアに陥り、数時間で死亡する小児もいる。集中的かつ長期にわたる ICU 治療の後に奇跡的に完全に回復する場合もあるが、多くの生存者には重度の神経学的後遺症が残る。
臨床医と地域のかかりつけ医は、発熱している子どもが熱性けいれんを起こしたり、意識変調の兆候を示している場合には、小児科であってもインフルエンザ関連脳炎の検査を受ける必要があることを認識させる必要があると小児科医たちは述べている。
脳が障害を受けると病気が急速に進行し、呼吸器症状の発現から神経症状の発現までの時間の中央値は、最短で 24時間、または 5日以内である可能性がある。
2019年の季節性インフルエンザ流行中に SAT病院で実施された研究では、インフルエンザに関連した神経症状を呈した小児 16人の症例を報告しており、その 44%が 2歳未満であった。
神経症状を呈した小児の 81%に集中治療管理が必要で、原因別死亡率は 18.75%だった。そのうち、10人の子どもが神経障害を起こすことなく完全に回復した。