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父親の化学物質への曝露により「男の子の出生率が減少する」という傾向が示された日本の調査。毎日の第四級アンモニウム塩への暴露が続いたこの3年の影響は?

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母親と共に、父親の化学物質への暴露の影響も大きい模様

先日、In Deep で、化学物質、特に消毒剤に使われることの多い第四級アンモニウム塩の影響について、以下の記事で書かせていただきました。

[記事] 消毒剤に使われる第四級アンモニウム塩は、通常の使用でも「先天性異常と神経の欠損」を誘発する。実験では異常は二世代にわたり続いた
 In Deep 2023年5月16日

 

第四級アンモニウム塩というものは、ほぼ擁護する部分がないほど、特に生殖機能や脳神経系などへの悪影響が大きいものですが、ともかく、この 3年間、少なくとも日本では全国的に大々的に使用されてきたわけです。日常的に、あるいは、施設や学校などによっては、「 1日何回も」使用されてきたわけです。並の暴露ではありません。

 

先ほどの記事を書いた後、読者様から興味深い調査を教えていただきました。

兵庫医科大学と国立環境研究所による 2019年の調査で、「父親の化学物質への職業性ばく露と出生児の性比との関連」を調べたものでした。

職業性ばく露というのは、つまり仕事上で化学物質を頻繁に使うような方の曝露で、いろいろな職業があると思いますが、その男性たちの、

 

「出生児の性比」

 

を調査したものです。

つまり、化学物質に曝露する機会の多い男性たちの子どもの、

 

「女の子と男の子の比率」

 

を調べたものでした。

かなり興味深い調査だと思います。

以下にあります。

父親の化学物質への職業性ばく露と出生児の性比との関連について:子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)での研究成果

 

ニュースリリースの冒頭には以下のように書かれています。

太字はこちらでしています。

兵庫医科大学のエコチル調査兵庫ユニットセンターが中心となり、子どもの健康と環境に関する全国調査の約 5万人のデータを用いて、父親の化学物質への職業性ばく露と出生児の性比の関連について解析しました。

その結果、パートナーの妊娠前に週に 1回以上殺虫剤を使用する職に就いていた父親について、生まれてきた子ども全体に占める男児の割合が低くなっていました

本研究は、大規模出生コホート調査において、父親の化学物質へのばく露が生まれてくる子どもの性比と関連する可能性を示した世界で初めての研究であり、画期的なものといえます。本成果は、令和元年12月20日に環境保健の専門誌であるThe Lancet Planetary Healthに掲載されました。

 

化学物質への日常的な曝露により「男の子が生まれる比率が下がる」という可能性を示したものといえます。

この英語版の論文は、医学誌ランセットに掲載されました。

なお、記事に、

 

> 医療用消毒剤を週に1回以上使用した父親の子どもも男児の割合がわずかに低くなっていましたが…

 

とありまして、医療用消毒剤 (第四級アンモニウム塩が含まれるものが多いと思われます)でも、ほんのわずかの率ではあっても、生まれてくる子供の性比に影響はあったようです。

しかし、この 3年間の日常は、「 1週間に 1度」などということではないような日常的な暴露が続いていました。影響が想像されます。

ここからニュースリリリースです。適時、太字で強調しています。




 


父親の化学物質への職業性ばく露と出生児の性比との関連について:子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)での研究成果

nies.go.jp 2019/12/24

1. 発表のポイント

・エコチル調査の全国データを用いて、パートナーの妊娠が判明するまでの約 3か月間の父親の仕事における化学物質へのばく露と生まれた子どもの性比との関連を調べました。

・仕事での殺虫剤の使用頻度が高くなる父親ほど、生まれてきた子ども全体に占める男児の割合が低くなる傾向があり、殺虫剤を扱うことがなかった父親の子どもに比べて、週に1回以上使用した父親の子どもは男児の割合が低くなっていました。

・母親の化学物質の使用などについて統計学的に調整しても、父親の殺虫剤使用と子どもの性比との関連がありました。

医療用消毒剤を週に1回以上使用した父親の子どもも男児の割合がわずかに低くなっていましたが、その関連は殺虫剤ほど強いものではありませんでした。

・仕事で使用するその他の化学物質については、父親の使用頻度と生まれてくる子どもの性比との明確な関連はありませんでした。

 

2. 研究の背景

エコチル調査は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、2010年度より全国で 10万組の親子を対象として開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査です。

母体血や臍帯血、母乳等の生体試料を採取保存・分析するとともに、参加する子どもが 13歳になるまで追跡調査し、子どもの健康に影響を与える環境要因を明らかにすることとしています。

調査期間は5年間のデータ解析期間を含み、2032年度までを予定しています。

わが国における出生性比は、1968年 ~ 1980年には出生女児 100人に対して男児が 106~107人でしたが、1981年以降の男児は 105~106人とわずかに低下しています。日本だけでなく、他の先進国でも生まれる子どもの男児の割合が減少傾向にあることが報告されています

これまでに行われた研究では、子どもが生まれる前に両親が特定の化学物質にばく露することが、生まれる子どもの性比に影響を与える可能性が指摘されています。

しかし、こうした研究の多くは断面研究であり、出生コホート研究では妊娠時の親の化学物質へのばく露と生まれてくる子どもの性比との関連はほとんど報告されていませんでした。

われわれは、エコチル調査で得られたデータを使用して、妊娠前に父親が仕事で使用してばく露された化学物質およびその頻度と、生まれてくる子どもの性比との関連性について、疫学的な手法を用いて検討しました。

 

3. 研究内容と成果

本研究では、妊娠中の両親に対する自記式質問票に有効な回答があり、出生時の産科医師による医療記録から子どもの性別が判明した 50,283名(男児25,657名、女児24,626名)のデータを使用しました。

23種類の化学物質について、パートナーの妊娠が判明するまでの約 3か月間に、父親が仕事で半日以上かけて使用した頻度を回答してもらい、生まれてきた子どもの性別の割合を比較しました。

また、父親の職業分類、両親の年齢、飲酒歴、喫煙歴、社会経済状態等を考慮した修正ポアソン回帰モデル (※ ひとつの現象を、複数の要因によって説明する多変量解析と呼ばれる解析手法の一つ)によって検討し、男児が生まれる割合を比較しました。

さらに、母親が妊娠初期に仕事で使用した化学物質の種類とその頻度について考慮した解析も行いました。

仕事で殺虫剤を使用することがない父親(42,185名)のパートナーから生まれた子どもの男児の割合は 51.1%でしたが、月に1~3回使用する父親(4,551名)では 50.7%、週1回以上使用する父親(659名)では 44.5%であり、使用頻度が高くなるほど男児の割合が低いという結果でした。

 

医療用消毒剤についても、週1回以上使用する父親(2,428名)のパートナーから生まれた子どもの男児の割合は 48.9%であり、使用することがない父親(43,214名)の 51.1%よりも低くなっていました。

 

らに、父親の職業分類、両親の年齢、飲酒歴、喫煙歴、社会経済状態について統計学的に調整したところ、仕事で殺虫剤を使用しない父親(不使用群)での男児の生まれる割合を 1としたときに、月に 1~ 3回使用する父親では男児の生まれる割合の不使用群に対する比が約 0.96(約4%減)、週1回以上使用する父親では 0.86(約 14%減)となっていました(図2左)。

医療用消毒剤については、仕事で使用しない父親(不使用群)において、生まれてきた子ども全体に占める男児の割合を 1としたときに、週 1回以上使用する父親では、男児の生まれる割合の不使用群に対する比が 0.95(約 5%減)となっていました(図2右)。

 

こうした関連性は、母親が妊娠初期に仕事で使用した化学物質の種類とその頻度について考慮してもほとんど同じでした。

また、父親の仕事でのその他の化学物質の使用と出生した子どもの性比との関連はありませんでした。

今回の研究では、パートナーの妊娠前に父親が仕事で殺虫剤や医療用消毒剤を使用すると、生まれてくる子どもの男児の割合が低いという結果となり、特に殺虫剤の使用との関連は顕著でした。

一方で、水銀や放射線を使用する職に関しては、子どもの性比との関連は認められませんでした

これまでに発表された他の研究には、父親が高濃度の水銀や放射線にばく露されることによって子どもの男児の割合が低くなるという報告がありますが、本研究の結果は、それらの先行研究とは一致していません。

また、殺虫剤の使用と性比との関連については、過去に報告はなく、本研究を支持する成果が今後得られるかが重要であり、今後、両親の生体試料中の化学物質やその代謝物の濃度と子どもの性比との関連について検討を進めるなど、更なる知見の蓄積が必要となります。







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