8月8日、炎に包まれるラハイナの歴史あるワイオラ教会。 AP
当局は「住民が避難できないように」道路を封鎖した
マウイ島のラハイナで発生した「山火事」とされる災害から、早くも 10日などが経過しようとしていますが、その死者数は、114人のままです。
AP通信によると、行方不明者リストには、
「約 1,000人から 1,100人の名前が残っている」
と書かれてあります。
この 1,000人が無事である可能性は、時間の経過と共に、ほぼ絶望的になくなってきています。
遺体そのものは、すでに 500人近くが発見されている可能性があることを以下の記事で取り上げましたが、身元がまったくわからない状態が続いているようです。
(記事)遺体安置所職員たちによれば、マウイ島の死者数は480人を超えているが、当局がそれを一切発表しないと地元の人たちが憤っている
地球の記録 2023年8月20日
そして、行方不明者のほとんどが「子ども」であることが、ほぼ確実になっています。火災当日、強風のために学校が休校となっていて、親たちが働きに出た後、「子どもが家にひとりでいる状態」の中で火災が発生したためです。
AP通信には以下のようにあります。
8月25日のAP通信より
…シェーン・トレウさんは8月8日早朝に目覚め、裏庭にいるとラハイナルナ通りの隣にある電柱が折れる音を聞いた。彼は、切れた電線が草に火を点けるのを見て、午前6時37分に 119番通報して火災を報告した。
ラハイナでは小規模な山火事は珍しいことではなく、消防署は午前9時55分までにこの火災は 100%鎮火したと発表した。
この保証は多くの住民を安心させた。強風の影響で一部の公立学校はその日は休校となった。これは、ラハイナの公立学校の生徒 3,000人の多くが、両親が働いている間、一人で家にいたことを意味する。
そして、報道によってわかってきた、もうひとつのことは、火災が発生した時、
「当局が道路を封鎖し、火災から逃げようとした住民たちに、引き返すように命じた」
ことでした。
一部の住民たちは、それに従い、しかし、一部の住民たちは、その命令に従わずに、封鎖を突破して避難したことが住民の証言でわかってきました。
そして、結果としては、タイトルに書きましたように、
「当局の命令に従って戻った住民の多くが死亡し、命令を無視して火災から避難した人たちだけが生き残った」
のでした。
これを報道で読みまして、2014年に韓国で起きたフェリー事故を思い出しました。以下の記事で引用しています。
(記事)「当局の無意味な命令に従ったほぼ全員が死亡した」のフレーズに思うこの終末的な崩壊の原因
In Deep 2022年3月8日
この韓国フェリー事故では、事故の際、当局が「部屋に留まれ」と生徒たちに命令し、結果として以下の結末を迎えました。
当局の無意味な命令に従ったほぼ全員が死亡した。(304人)
当局の無意味な命令に従わなかったほぼ全員が生き残った。(171人)
乗客乗員 476人のうち、檀園高校の 生徒約 250人を含む 304人が死亡した。
今回のラハイナの火災でも、同じようなことが繰り返されていたことが示されています。
また、この火災では、警報のサイレンが鳴らされず、消火のための放水も長時間許可されなかったことがわかっており、作られた悲劇の構造がまたも明らかになってきました。
AP通信などを引用した米国メディアの記事をご紹介します。
マウイ島火災では、道路封鎖に従わなかった人々だけが生き残った
Horror: Those Who Disobeyed Barricades Survived Maui Fires
zerohedge.com 2023/08/25
少なくとも 114人が死亡、最大 1,100人の住民が行方不明(その多くは子どもであると疑われる)となったマウイ島火災を受けて、憂慮すべき報告が明らかになった。
AP通信によると、当局は、道路を封鎖したが、この政府による道路バリケードに従わなかったラハイナの住民たちは火災から逃れて生き残ったが、引き返すようにとする命令に従った多くの住民たちは車や家の中で逃げ場のないまま死亡した。
現在、当局が緊急サイレンが鳴らされなかったこと、そして、当局が人々の安全への避難を妨げたことについて、マウイ当局は国民の怒りに直面している。
この火災では、警報が鳴らされなかったことが明らかになっており、また、消火のための「水」も使用が長時間許可されなかったという驚くべき事実が明らかになっている。
火災が広がる初期に、ラハイナ南部にあるホノアピラニ高速道路沿いで 30本以上の電柱が倒れた。その後当局はラハイナ・バイパス道路を封鎖し、住民たちがマウイ島の南部に逃げるのを阻止した。しかし、一部の人たちは命令に従わなかった。
ラハイナの火災被害地区を歩く男性。
マウイ島警察署長のジョン・ペルティエ氏(米国史上最悪の銃乱射事件発生時にラスベガスで元警察署長を務めた人物)は記者会見で、警察は住民が火災地域から逃げるのを決して止めなかった、と語ったが、 AP通信によると、当局に追い返され、避難を思いとどまった住民たちが多かったと、従わなかった住民は証言している。
従った住民たちは、高速道路 30号線へのアクセスを遮断する道路封鎖によって、急速に広がる山火事の方へ引き返すしかなかった。AP 通信は次のように報じている。
ある家族は道路封鎖を迂回し、近くの町に無事に到着した。別の家族は未舗装の道路を四輪駆動車で運転して避難した。ある男性は未舗装の道路を上り、上に登ってラハイナの街が燃え上がるのを眺めた。その後、彼は炎、煙、瓦礫の中を懸命に進み、生存者を安全な場所に引き上げた。
しかし、他の数十人は地獄のような光景に巻き込まれ、 狭い道路で車が渋滞し、炎に囲まれた。車の中で死亡した人もいれば、安全のために車から逃げようとして死亡した人たちもいた。
道路封鎖による渋滞で炎に巻き込まれた車。dnyuz.com
夫婦の1人、ネイト・ベアードさんとコートニー・ステイプルトンさんは、 炎上から逃れるために 2人の息子、ベアードさんの母親、犬 1匹を車に積み込んだと同メディアに語った。南に車を走らせた後、彼らは隣町に逃げた。
「ほんの数分間逃げるのが遅れていれば、または、一度でも間違った方向に車が曲がっていれば、私たちは全員死んでいたでしょう」
ベアードさんによれば、あと 10分あれば、近所で一人で家に取り残されていた子どもたちを救えたかもしれないという。
「子どもたちは防煙器具を持っていないんです。彼らの一人が駆け寄ってきて、私たちの息子に『あの子が死んだ、あの子が死んだ』と言いました」
「その息子の友達たちは皆、毎日家に来ていたような間柄です。彼らの両親は仕事中で、みんな、家に子ども一人でいたのです。そして、誰も子どもたちに警告しませんでした。子どもたちは誰も火災が起きたことを知らされませんでした」と彼は語った。