2019年11月12日の中国の報道より
・RFI
中国の報道によると、11月12日、北京の保健当局は、中国北部の内モンゴル自治区で 2人が肺ペストと診断されたことを確認したと発表しました。
2人の患者は、11月4日に北京の病院に搬送され、治療を受けているようです。
中国では、稀にペストが発生しますが、肺ペストは珍しいです。中国でのペストへの感染の原因の多くは、マーモットなどのげっ歯類からの感染です。
ペストの自然宿主の場合があるげっ歯類のマーモット
・Wikipedia
ペストには、「腺ペスト」、「敗血症型ペスト」、「肺ペスト」があり、ペストの80~90%は腺ペストで、今回のような肺ペストの発症は珍しいと思われます。
国立感染症研究所のページでは、肺ペストは以下のような記載があります。
国立感染症研究所「ペストとは」より
肺ペスト
非常に稀な事例ではあるが、最も危険なタイプである。
腺ペスト末期や敗血症型ペストの経過中に肺に菌が侵入して肺炎を続発し、肺胞が壊れて、痰やペスト 菌エアロゾルを排出するようになると、この患者が感染源になってヒトからヒトへと素早く伝播する肺ペストが発症する。
潜伏期間は通例2~3日であるが、最短12~15時間という報告例もある。
発病後12~24時間(発病後5時間の例も記載あり)で死亡すると言われている。
臨床症状としては、強烈な頭痛、嘔吐、39~41℃の発熱、急激な呼吸困難、鮮紅色の泡立った血痰を伴う重篤な肺炎像を示す。
このようなもので、「空気感染」する上に、死亡率も高いようです。
肺ペスト菌
・Wikipedia
肺ペストがこのように危険なものであるということもあり、今回、中国の首都北京の病院に肺ペスト患者が搬送されたということがニュースで伝わると「それは北京の、どの病院なのか」ということが、ネット上などで話題となり、それが冒頭の報道にあるような「大騒ぎ」という表現になったようです。
その後の報道では、最初に患者が搬入されたのは、北京朝陽病院という病院だったことがわかりましたが、同病院の医師たちも多くが肺ペスト患者が搬送されることを知らず、その点でもいろいろと騒動になったようです。
現在は、最初に患者が搬入された北京朝陽病院から、さらに別の医療機関に移動しているようですが、患者の容態を含めて、詳細は発表されていません。
また、ネット上では、北京市と北京の保健衛生委員会が、肺ペスト患者が北京に搬送されたことをすぐに発表せず、約 1週間後になって発表したことへの不満も見られているとのこと。
北京当局と病院側は、ネット上での騒ぎを受けて、
「パニックになる必要はありません。すべてコントロールされています」
と発表しましたが、騒動は収まっていないようです。
現時点では、感染が他に拡大したといったことも報じられていませんので、北京で肺ペストの感染拡大が起きるというような懸念はあまりないとは思いますが、何しろ肺ペストは、感染が早い上に、症状が重篤ですので、人々が懸念を抱くのは理解できなくもありません。
ペストには抗菌薬(ストレプトマイシン)が非常に効果があるため、早い治療を受ければ、昔のように恐ろしい病気ではないとはいわれていますが、ただ、近年は、薬剤耐性菌がさまざまに広がっているので、ペストのようなものがそういうことになると厄介な面もありそうです。