2016年3月10日の報道より
チリの沿岸に漂う赤潮
漁業が国の主要な産業のひとつでもある南米チリの海で、大規模な「藻」の大発生が起こっており、それによって、養殖されていたサーモン「 2300万匹」も死ぬという前例のないような大量死が発生しています。
海に浮かぶ養殖場のサーモン
In Deep の「現在進行中の世界気温と水温の異常高温化からふと思った「高温化の本当の恐怖」 — それは「藻とアルツハイマー病の増加の関係」と、世界的なジカウイルスの蔓延」という記事にも書きましたが、「藻の増加」は世界中で懸念されるべき事態となってきていて、チリのこの出来事もその流れの中のひとつだと思われます。
現在、世界のほとんどの海域で海水温が上昇しつ続けていまして、それに加えて、海中への排水や肥料の流入などで、藻の発生に適した環境が整っていて、さらに大規模な藻の大発生がいつ起きても不思議ではないのかもしれません。大げさな言い方をしますと、「海に魚が住めなくなる」というような事態にさえ少しずつ近づいているような気もしないでもないです。
米国の報道からチリの状況をご紹介します。
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Chile salmon farms lose 23 million fish due to toxic algae bloom
Digital Journal 2016/03/10
チリの養殖場で有毒な藻の大発生により2300万匹のサーモンが死ぬ
南米チリのサーモンの養殖場が有毒藻類の大発生により2300万匹のサーモンを失った。
チリは、世界第二位のサーモン輸出大国だが、今回の致命的な大量死は、サーモン輸出産業の崩壊への扉を開けてしまった可能性がある。
この致命的な有毒藻類の発生は、チリ全体のサーモン生産量の 15%に相当し、すでにチリに 8億ドル(900億円)以上の経済的損失を与えたと見られている。
これまでの損失は 100,000トンに及び、サーモン、マス、ギンザケが含まれる。
チリ政府の農業漁業担当省庁の長官によれば、死んだサーモンの量は、「オリンピックサイズのプール 14杯分になっている」とロイターに述べた。
これはサーモン輸出産業の雇用削減につながる可能性もあるほど深刻な事態だと業界団体は語っている。
チリ国立水産養殖局の代表によれば、エルニーニョがもたらした夏(チリは今が夏)の気候条件が大規模な藻の発生に繋がったという。
そして、全世界規模で有毒藻類の発生がより頻繁になってきており、藻類の大発生が世界中の養殖に影響を与えている。
藻の大発生は、気温条件と共に、川から海に流れ込む無機肥料や廃水などによって増加している可能性が指摘されている。藻の大発生は、海洋生物の大量死を引き起こし、人間の健康にも影響を与え得るものだ。
今回のチリの藻の大発生は、サーモンに有害とされる藻の密度の「3000倍」に達しているという。
サーモンが死亡した理由のひとつは、この藻の急速な繁殖による海中での魚の窒息状態だ。
また、植物プランクトンは、ブレベトキシンのような神経毒を生産している可能性もあり、この神経毒がサーモンを窒息に導いた可能性もある。
アメリカで食べられるサーモンの多くはチリから来ているものだ。毎年、チリからアメリカへ輸出されているサーモンの量は 10万ポンド(約45000キログラム)に上る。