2016年3月9日のニューヨークタイムズ中国語版より
米国ニューヨークタイムズの英語版と中国語版に「台湾と中国海南でジカ熱が流行する可能性」について、英国の医学者が指摘したことが掲載されていました。
台湾と海南島には、ジカウイルスの主要な媒介主であるネッタイシマカが生息しているのがその理由で、そして、台湾でも海南でも、そろそろ蚊のシーズンが始まる上に、今年はブラジルのオリンピックなども含めて、南米との人的交流などが盛んになると見られていますので、その可能性は高いようです。
また、台湾では昨年、大規模なデング熱の流行が起きていますが、デング熱とジカウイルスと同じネッタイシマカが媒介するものですので、ネッタイシマカの生息域で、デング熱やジカ熱などが今年流行する可能性は高いように思います。
昨年の台湾での流行も南部が中心でしたので、単純な話として「気温が高いと流行しやすい」ものなのかもしれません。
しかし、今年の夏以降の気候次第では、中国の他の地域や、あるいは日本でもジカウイルスが流行しないとは言い切れない部分があることも確かです。
現在発生しているエルニーニョ現象は、夏前頃までには収束していくと見られていて、歴史的には、そのままラニャーニャ現象に移行する可能性が高く、初夏以降の気温次第ではいろいろとありそうです。
「東アジアが猛暑になるか、冷夏になるか」ということにかかっている部分はありそうです。
ニューヨークタイムズの記事をご紹介します。
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New York Times China 2016/03/09
台湾と中国海南島でジカ熱の流行の恐れがあると専門家が警告
著名なウイルス学者が、台湾と中国南部の海南島は、ジカウイルスが流行する危険にさらされていると警告した。
英国の医学校ロンドン・スクール・オブ・ハイギエーヌ・アンド・トロピカル・メディスンの校長で、エボラ・ウイルスの共同発見者でもあるピーター・ピオット博士(Dr. Peter Piot)は、台湾と海南島は、どちらも、南米と中米にジカウイルスを拡散させたネッタイシマカの生息域であることを指摘する。
現在、ジカウイルスは南米、中米、カリブ海諸国のほとんどの国に広がっていて、ブラジルでは、過去数ヶ月で 150万人の患者が出たが、その多くの地域はネッタイシマカの生息域だ。
また、香港を含む中国南部の残りの部分には、ネッタイシマカとは異なる種類の蚊であるヒトスジシマカが生息する。このヒトスジシマカもジカウイルスを拡散させると見られているが、ネッタイシマカと比較すると人への影響は小さいと博士は述べている。
そして、中国の蚊のシーズンは今始まったばかりだ。
ブラジルでは、赤ちゃんが異常に小さな脳を持って生まれてくる小頭症の例が急激に増加しており、まだ正確な関係性はわかっていないが、ジカウイルスが羊水と胎児の脳組織から見つかっていることから、小頭症との関連が強く疑われている。
ピオット博士は、「ジカウイルスと小頭症の関連は、ほぼ確定的だと思われます」と語る。
また、ジカウイルスに感染した人の 4000人に 1人は、一時的な麻痺を引き起こすギラン・バレー症候群を引き起こすとされる。
中国国立保健家族計画委員会は、海外旅行中にジカウイルスに感染したと思われる 12例を確認した。
最初のケースは、2月9日に江西省で同定され、2月14日に症状から回復した。それ以来、広東省で 7例、浙江省で 4例が確認されている。
台湾では、タイから戻った旅行者に 1例のジカウイルス感染者が確認された。
台湾は、昨年、デング熱の深刻な流行に見舞われ、4万3784例のデング熱患者が報告され、流行範囲は台湾南部のほとんどすべての地域に渡った。デング熱は、ジカ熱と同じネッタイシマカによって媒介される。
台湾当局は昨年の経験を踏まえて、デング熱、ジカ熱、そして、チクングニヤ熱に対しての警戒を強めており、カリブ海、中南米、タイ、モルディブ、フィリピンなどから帰国した旅行者の感染を確認する方法を模索している。
香港は今のところ、ジカウイルス感染者は報告されていない。しかし、急性呼吸器症候群 SARS ウイルスの共同発見者として知られる香港大学のマリク・ペイリス博士(Dr. Malik Peiris)は、海外から戻った旅行者がジカウイルスを香港にもたらしたとしても驚くべきことではないと語る。
ピオット博士は、「南米で起きているようなジカウイルスの大流行が、アジアやアフリカなどの他の地域で起きないとは誰にも言えないのが現状です」と語っている。