穀物生産地の70%以上が異常な干ばつ状態に
アメリカの干ばつが悪化していることは何となく理解はしていましたが、最近のブルームバーグの報道、あるいは、米農務省や NOAA (アメリカ海洋大気庁)などが管理する干ばつモニターの最近のマップを見ると、それはひどいもので、まるで「アメリカのほとんどが干ばつ下にある」ように見えます。
以下のマップは、黄色、オレンジ、赤、茶色の部分はすべて干ばつの地域で、色が濃いほど状態が強いことを示します。
2022年10月25日時点のアメリカの干ばつ状況
U.S. Drought Monitor
これは、記録が残っている中で、アメリカ史上最大級の干ばつ面積となるようで、少なくとも、過去 22年間では最大です。
2000年-2022年の冬小麦の干ばつ面積の割合
Bloomberg
このマップの赤や茶色の非常に激しい干ばつレベルになると、ブルームバーグによりますと、「肥料も蒸発してしまう」ために、「作物の発芽も成長も難しくなる」という心配があるようです。
さらには、アメリカの穀物系メディアは、現在の主要な穀物栽培地で、干ばつに見舞われている面積は以下のようになると伝えています。
10月25日時点の各穀物の干ばつに見舞われている面積の割合
・春小麦 75%
・冬小麦 75%
・大豆 71%
・トウモロコシ 70%
これは、来年の穀物の状況に対して、かなり壊滅的な状況ではないでしょうか。
10月29日には、ロシア政府が、黒海からのウクライナの穀物の輸出を停止すると述べました。
(報道) ロシア政府が、黒海からのウクライナの穀物輸出を「無期限」に停止すると発表 (2022/10/30)
ロシアとウクライナの間で穀物協定が交わされたのは 7月22日で、それ以来、900万トン以上の穀物などが輸出されました。この協定は 11月19日に満了しますが、しかし、ロシアは、この協定の継続をしないと述べたのです。
これにより、それ以降は、「ウクライナの穀物は一切輸出されない」ことになります。しかも、ロシア側は無期限と述べています。
世界最大の穀物生産国のひとつである(あるいは「かつてそうだった」)ウクライナからの穀物輸出が遮断され、世界最大の穀物輸出国であるアメリカの干ばつ状態が壊滅的になっている。ロシアからの輸入も見込めない。
……来年の食料状況は厳しそうです。
特に、日本は、小麦において、アメリカへの依存度が高いですので (約 50%)、時間の経過と共に、食料状況が混乱する可能性が出てきています。
ブルームバーグの記事をご紹介します。
一部の米国の農場が非常に乾燥しており、土が肥料をはじいている
Some US Farms Are So Dry the Dirt Is Repelling Fertilizer
bnnbloomberg.ca 2022/10/27
干ばつがアメリカの農作物地帯全体に急速に拡大している。あまりにも乾燥しているため、一部の穀物畑では土壌から肥料が蒸発し、植物の生育に問題が起きている。
政府のデータによると、米国の冬小麦の農地のほぼ 4分の3が中程度から激しい干ばつに見舞われており、少なくとも 2000年以降で最大となっている。
他の作物地域も同様に悪い状態にあり、同国のトウモロコシ地帯は 70%だ。
乾燥は作物の成長を阻害し、秋の施肥を妨げ、来年の収穫量が減少するリスクを高める。アメリカの穀物生産は、昨年、極度の乾燥と暑さのためにすでに打撃を受け、価格を押し上げ、世界的な供給不足と数十年で最悪の食料インフレに拍車をかけた。
カンザス小麦委員会のゲイリー・ミラーシャスキー委員長は、「小麦地帯は非常に乾燥しているため、肥料を与えることができません」と述べている。
現在作物の種まきをしている小麦農家、または春の作付けに先立って土壌を助けるために栄養素を施用しているトウモロコシ生産者たちは、肥料の多くが蒸発して消えてしまうのであれば、秋の施肥に投資するつもりはない、と語る。
深刻な干ばつに見舞われたカンザス州南西部で小麦とトウモロコシを栽培しているミラーシャスキー氏は、今年 4,000エーカーの冬小麦を植えているが、1,500エーカー分が収穫できるかどうかだと語った。
冬小麦は通常、最も寒い時期に休眠状態になり、気温が上がると成長を再開する前に地面から芽生える。しかし、水分が不足すると、一部の植物が春まで発芽するのを妨げたりする可能性があり、収量が重大なリスクにさらされる。
カンザス・ファーム・ビューローの商品担当ディレクター、マーク・ネルソン氏によると、作付けは計画通りに進んでいるが、出芽率はすでに平均ペースを下回っているという。
春の施肥はより重要であると考えられているが、生産者たちは今年、自分の畑をテストして、実際に必要な肥料の量を確認するために特に注意する必要がある。
「乾燥した土壌に肥料の施用した場合、それらがどれほど効果的であるかについての懸念が非常にあると言えると思われます」とネルソン氏は言う。