もはや軽い風邪ではなくなったことが明らかに
コロナの変異株であるオミクロン株は、発生当初から「症状が軽い」と言われ続けてきました。
そのわりには、日本を含めたどの国でも、一様に「死者」が増えている。どれだけ病原性が低くても、以前より実質的に死者が増えるのでは「軽い風邪」とはいえないと思っていました。
実際、日本でも 2月15日には、1日あたりの死者数がパンデミックが始まってから最大となっています。
(報道) 日本の1日あたりのコロナ死者数がパンデミック開始以来最大に (2022/02/16)
日本の「死者の増加の勢い」も過去最大であることがグラフでわかります。過去のどんな流行波より直線度が高いです。
ヨーロッパで規制を撤廃し始めている各国でも、死者は過去1年などで最大の国が多くなっています。
以下はデンマークの例ですが、同じような国が多いです。
オミクロンBA.2の「さらに新しい変異種」が拡大するデンマークでのコロナ死者数が過去1年で最大に。若年層の感染数、入院数が急増中
地球の記録 2022年2月12日
このように、今になって急速に各国で死者数が増加している理由のひとつかもしれないことが、最新の日本人科学者たちの研究でわかりました。
この研究は、2月15日に発表されたばかりのもので、東京大学、神戸大学、熊本大学、北海道大学、京都大学などの 40名を超える日本人研究者たちと、イスラエルのワイツマン科学研究所、エジプトのスエズ運河大学の科学者たちも加わった大規模なものです。
論文は以下にあります。
Virological characteristics of SARS-CoV-2 BA.2 variant
SARS-CoV-2BA.2バリアントのウイルス学的特徴
ここでわかったことは、
「オミクロン亜種の BA.2 は、最初のオミクロンよりはるかに感染性と病原性が高い」
ということでした。
現在、オミクロン株にはさまざまな亜種が出ていますが、日本では、
・最初のオミクロン(B.1 系統)
と、
・亜種である BA.2
が特に流行していると思われ(新しい亜種もすでに出ていると思いますが)、現在の主流がこのふたつだとした場合、「最初のオミクロンは確かに軽かった」のです。
それも以前の日本の研究で示されています。
ところが、現在、あるいは今後主流となると思われる亜種の「 BA.2」 は、軽い病態を示すものではなかったのです。
興味深いのは、今回のこの論文の筆頭著者である東京大学医科学研究所 国際感染症研究センターの山岨 大智(やまそば だいち)さんは、オミクロンの最初の株 BA.1について、2月1日に発表された「オミクロンは、デルタと比べて病原性が軽い」ということを突き止めた研究(科学誌ネイチャーに掲載)にも参加しています。
それが、「オミクロンは症状が軽い」という報道につながりました。
以下はその論文を受けての 2月4日の報道の冒頭です。
オミクロン株は病原性は低いがヒト集団内での増殖速度は高い、東大などが確認
東京大学、北海道大学、広島大学、熊本大学の4者は2月3日、東京大学 医科学研究所 附属感染症国際研究センター システムウイルス学分野の佐藤佳准教授が主宰する研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan(G2P-Japan)」の研究成果として、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株(B.1.1.529, BA系統)」が、従来株に比べて病原性が低いこと、ならびにオミクロン株のスパイクタンパク質の細胞融合活性は、従来株やデルタ株に比べて顕著に低いこと、オミクロン株のヒト集団内における増殖速度は、デルタ株に比べて2~5倍高いことなどを明らかにしたと発表した。 (techplus)
そして、その2週間後、亜種 BA.2 の研究についての今回の論文を発表したのですが、
「もはやオミクロン亜種は軽くはない」
ことを示すのに十分なものでした。重症化「しやすい」のです。
2月に入り各国で死者が急激に増えている理由はここにありそうです。そして、国によっては、今後も死者の増加が続くと見られます。
今回の日本の研究を紹介していた海外の医学記事をご紹介します。
日本の研究は、オミクロンBA.2変異体がより融合性、病原性であり、深刻な結果を引き起こすため、健康上の大きな脅威であることを驚くほど明らかにした
Japanese Study Alarmingly Reveals That Omicron BA.2 Variant Is A Major Health Threat As It Is More Fusogenic, Pathogenic And Causes Severe Outcomes
thailandmedical.news 2022/02/16
東京大学、神戸大学、熊本大学、北海道大学、京都大学の日本人研究者たちによる オミクロン亜種 BA.2バリアントの特性に関する新しい詳細な研究により、新しいバリアントが最初のオミクロン BA とは完全に異なることが驚くほど明らかになった
BA.2バリアントは、はるかに融合性および病原性が高く、伝染性が高いために指数関数的に世界的に広がっており、深刻な健康上の脅威が懸念される。
この研究結果はまた、亜種 BA.2が BA.1 (最初のオミクロン)よりも迅速かつ効率的に肺組織に広がることを示した。研究の統計分析によると、亜種 BA.2の実効再生産数は最初のオミクロンの 1.4倍となっていた。
また、中和実験では、(現行の)ワクチン誘発性の体液性免疫は、BA.1(最初のオミクロン)では効果があったが、亜種 BA.2に対しては、ワクチン誘発性の免疫が機能しないことを示した。
細胞培養実験を含む研究結果は、BA.2 がヒトの鼻上皮細胞においてより複製的であり、BA.1 よりも融合性が高いことを示した。(※ 感染性が高いという意味)
懸念されるのは、ハムスターを使用した感染実験では、亜種 BA.2 は、最初のオミクロンよりも病原性が高いことを示している。この調査結果は、グローバルヘルスに対する亜種 BA.2 のリスクが最初のオミクロンのリスクよりもはるかに高い可能性があることを示唆している。
炎症の重症度を示唆する過形成性の大型II型肺胞上皮細胞は、すべての感染ハムスターで観察され、特に BA.2 に感染したハムスターの大型II型肺胞上皮細胞の面積はBA.1系統よりも有意に大きかった。これはつまり、BA.2 変異体が広範囲の肺損傷を引き起こし、感染した人に重度の症状を引き起こす可能性があり、最初のオミクロンほど軽度ではないことを示している。
この調査結果に基づいて、日本の研究チームは、亜種 BA.2 は現在懸念される唯一の変異株として認識されるべきであり、このコロナ変異株を徹底的に監視する必要があると提案した。