世界中に津波をもたらした1月14日の海底火山フンガ・トンガ=フンガ・ハーパイの噴火。JV Medina
トンガ沖の海底火山フンガ・トンガ=フンガ・ハーパイが歴史的な噴火を起こしました。その規模から「その後の地球の寒冷化と関係するのではないか」ということを以下の記事でふれました。
気象庁が「警報の解除の見込みはない」と述べる津波を世界に放ったトンガ沖の過去最大級の海底火山噴火は「暗い時代」の序章になるのか
In Deep 2022年1月16日
そうしましたら、1月20日までに、東大地震研究所の鈴木雄治郎准教授による分析で、トンガ沖海底火山の噴火の瞬間的な噴煙量が、
「 1991年のフィリピンのピナトゥボ火山噴火の約 3倍と推定される」
という分析が示されたことが報じられていました。
瞬間噴煙量、ピナトゥボの3倍か トンガ海底火山噴火―東大地震研
南太平洋のトンガで起きた海底火山の噴火について、瞬間的な噴煙の量が、1991年のフィリピン・ピナトゥボ火山噴火の約3倍と推定されることが20日までに、東京大地震研究所の鈴木雄治郎准教授(火山物理学)の分析で分かった。
15日のフンガトンガ・フンガハアパイ火山の噴火では、噴煙は高度約20キロ、半径約260キロに広がったとみられる。
鈴木准教授は人工衛星が撮影した画像を基に噴煙の広がりを分析。ピナトゥボ火山などの噴煙量のシミュレーションと比較し、1秒当たりの噴煙の量が、同火山の約3倍に上ると推定した。
噴出したマグマが海水に触れて大量の水蒸気が生じたことが、噴煙量の多さにつながったと考えられるという。
一方、今回の噴火は数十分程度で収まったとみられ、約9時間続いたピナトゥボ火山と比べ、「噴火の規模としてはそこまで大きくないのではないか」と話した。 (時事 2022/01/20)
1991年のピナトゥボ火山の噴火の際には、その後の数年の地球の平均気温が著しく低下したことが NASA などの観測で確認されています。
1990年から1992年の地球の平均気温の推移
The Effect of the Mount Pinatubo Eruption on Climate Geography Graph Secondary
今回のトンガ沖海底火山の噴火による噴煙が瞬間的には「その 3倍あった」ということで、いろいろと心配される部分もあるのか、あるいは、鈴木准教授のおっしゃる、
> 今回の噴火は数十分程度で収まったとみられ、約9時間続いたピナトゥボ火山と比べ、「噴火の規模としてはそこまで大きくないのではないか」と話した。
という部分により影響は小さくて済むのかもしれないということになるのかは何ともわかりません。
ただ、フンガ・トンガ=フンガ・ハーパイ火山は、先日の巨大噴火の以前から噴火を繰り返しているところから今後も噴火を繰り返す可能性もなくはないということも言えます。
今年からの気温や気候に関しては、太陽活動などを含めて、いろいろな条件が複雑に作用し合うものでもあり、「今後はこうなる」と言える部分はまったくないですが、トンガ沖火山の大噴火は、その条件のひとつにはなり得るかもしれません。
参考までに、今から 20年前の NASA の記事をご紹介します。
ピナトゥボ噴火の地球の気温への影響を記した NASA ラングレー研究所エアロゾル研究部門による記事です。噴火がどのように地球全体の気温を何年間も下げたのかのメカニズムが記されています。
ピナトゥボ噴火の地球規模の影響
Global Effects of Mount Pinatubo
NASA 2021/06/15
1991年-1994年までの成層圏のエアロゾルの厚さ
1991年6月15日、フィリピンのピナトゥボ山は途方もない力で噴火し、大量の火山灰とガスを大気中に放出した。火山の噴煙は成層圏に浸透するほど高かった。成層圏は、高度が約 10kmから 50kmに及ぶ大気の層だ。
ピナトゥボ山は成層圏に約 1500万トンの二酸化硫黄を注入し、そこで水と反応して、主に硫酸の液滴で構成されるエアロゾル粒子の層を形成した。
次の2年間で、強い成層圏の風がこれらのエアロゾル粒子を世界中に広げた。下層大気(対流圏 / 地表から約10 kmまでの層)とは異なり、成層圏には汚染物質を洗い流すメカニズムとしての雨雲がない。
したがって、ピナトゥボ山から流れてきたエアロゾル汚染物質の大量の流入は、化学反応と大気循環のプロセスがそれらをろ過することができるまで、何年間も成層圏に留まった。
ピナトゥボの噴火の場合、その結果として、ほぼ 2年間、地球の表面が測定可能な程度に冷却された。
エアロゾル粒子は、入射する太陽光を散乱および吸収するため、地球の表面に冷却効果を示す。ピナトゥボ火山の噴火は、成層圏のエアロゾルの光学的厚さを、噴火前に測定された通常のレベルの 10倍から 100倍に増加させた。
その結果、次の 15か月で、地球の平均気温は 0.6℃下がったことを測定した。
上の画像は、NASAの地球放射観測衛星によって取得されたものだ。
1991年6月のピナトゥボ噴火前から事象発生後2年までの 4つの期間における成層圏のエアロゾルの光学的厚さを表している。赤のピクセルは最高値を示し、濃い青は最低値を示す。
火山の噴煙が事実上地球全体に徐々に広がり、地球規模の気候への影響となっていったことがわかる。