死者は1,100人を超える
6月からモンスーンによる持続的に豪雨に見舞われているパキスタンでは、8月29日に、洪水による死者が 1,100人を超え、少なくとも、過去十数年で最悪の被害となっています。
同日、パキスタン当局は、
「全土の3分の1か4分の1ほどが水没している可能性がある」
と述べました。
道路なども多くが寸断されているため、実際の被害の状況はあまり把握されていないようですが、パキスタンの人口は、日本より多い 2億2000万人ですので、実際にそのような範囲で水没しているとするなら、家屋や農地などを含めて、相当な影響を受けている可能性があります。
以下は、パキスタンで最も人口の多いパンジャブ州の都市であるロジャンの「洪水前」と「洪水後」の衛星画像の比較で、全体が「水没」していることが示されています。
パキスタンというのは農業国で、JICA のページには以下のようにあります。
(JICA - パキスタンの魅力より)
> インダス川の豊富な水を活かし、パキスタンでは平野部に広大な灌漑設備を配置しました。そのかいあって、パキスタンの食料自給率は100%を超え、余剰分を輸出に回しています。
>
>農業はGDPの21%を占め、就労人口の45%が農業に従事しています。
>
>主力作物はなんといっても米や麦、ヒヨコ豆、メイズ(とうもろこし)といった穀類です。
>
>忘れてはならないのは綿花です。綿花の生産量は中国、インド、アメリカに次いで、世界4位。
>
>戦前戦後の日本が繊維産業で成長できたのは、パキスタンからの原綿輸入があったからです。 (JICA)
今回の洪水の規模ですと、農業生産に影響が出ていないということもなさそうで、ご時世と合わせて考えてみても、なかなか懸念される状況です。
CNN の報道をご紹介します。
パキスタン当局は、国土の一部が「海のような状態になっている」と述べ、国際的な支援を求めた
Pakistan pleads for international help as parts of country 'resemble a small ocean'
CNN 2022/08/29
パキスタンは、モンスーンの終わりまでに人口 2億2000万人の国土の 3分の1が水没するおそれがある最悪の気候災害に見舞われており、これ以上の人命損失を防ぐため政府が対応にあたっている。
気候変動大臣のシェリー・レーマン氏は 8月28日、前例のない雨による洪水によって家屋が浸水し、農地が破壊され、何千万人もの人々が避難するという「気候の大惨事」が引き起こされていると語った。
「洪水に対応するために初めて海軍を配備しなければなりませんでした。国土の大部分が小さな海に似ているからです」とレーマン氏は、ドイツの放送局ドイチェ・ヴェレに語った。
洪水と大雨により、6月中旬以降、386人の子供を含む少なくとも 1,136人が死亡したと、パキスタン国家災害管理庁(NDMA) は 8月29日に発表した。
「洪水が終わる頃には、パキスタン国土の 4分の1 か 3分の1 が水没している可能性が高い」とレーマン氏は、トルコの報道機関 TRT ワールドに語った。
新しい衛星画像は、インダス川に沿った地域で家屋と畑が完全に水没し、パキスタンで最も人口の多い州であるパンジャブ州のラジャンプールとロジャンの都市も同様に水没していることを示している。
パキスタン軍が公開したビデオには、軍がヘリコプターで危険な救出活動を行っている様子が映っている。その中には、北西部カイバル・パクトゥンクワ州の荒れ狂う川の真ん中で岩の上に取り残された 1人の少年も含まれていた。
国家災害管理庁の最新の状況報告によると、鉄砲水により 3,000キロメートル以上の道路が破壊され、130の橋が破壊された。そのため、浸水地域へのアクセスがさらに困難になっている。また、495,000軒の住宅が被害を受けている。
パキスタン外相は、今年のモンスーンシーズンは「絶対に壊滅的だ」として、以下のように語った。
「この規模の破壊や荒廃は見たことがありません。モンスーンの雨であろうと洪水であろうと、私たちが慣れ親しんでいる言い回しを言葉にするのは非常に難しいと思います」
国難
パキスタンのシェバズ・シャリフ首相は週末に救援活動に参加した。首相府からのビデオによると、船や陸路で到達するのが難しい地域にヘリコプターから物資を降ろした。
首相は、「洪水の影響を受けた地域を訪れ、人々に会ったが、災害の規模は予想よりも大きい」と述べた。「この災難に直面している国民を支援するために、1つの国として団結することを求めています。違いを乗り越えて、今日私たちを必要としている国民を支えましょう」
首都イスラマバードで大使や外交官と会談した後、首相は国際社会に支援を求めた。
国際赤十字・赤新月社連盟の声明によると、310万人以上の人々が「海のような」洪水によって家を追われ、全国の複合地区で 50万以上の家屋が被害を受けている。
パキスタンの援助ネットワークの議長は、この地域の人道支援活動家にとって水だけが課題ではないと述べた。
「これらの集中豪雨により、輸送と移動が大幅に制限されています。Covid-19 の脅威と、車両、インフラ、および流通ルートへの損傷により、私たちの緊急救援活動はほとんど不可能になっています。影響を受けた人々のほとんどは動けないか、置き去りにされているため、彼らに連絡することが難しくなっています」