2017年3月16日の報道より
3月12日の夜、オーストラリアのタスマニア島で「海岸が青く輝く」という現象が発生しました。
2017年3月12日 タスマニアの海岸
結論からいうと、これは「ヤコウチュウ(夜光虫)」と呼ばれるプランクトンが大発生したものなのですが、この一見美しい光景に対して、冒頭のように、報道では「不吉な徴候」というように記しています。
それはどうしてなのか。
Sponsored Link
タスマニアの場所
・kotobank.jp
このヤコウチュウというのは、文字どおり「夜に光る」もので、拡大すると下のようにひとつひとつが輝きます。
・CNN
これの何が「不吉」なのかといいますと、ヤコウチュウ - Wikipedia から抜粋しますと、
代表的な赤潮形成種である。大発生時には海水を鉄錆色に変え、時にトマトジュースと形容されるほど濃く毒々しい赤茶色を呈する。春~夏の水温上昇期に大発生する
という記述があったりします。
つまり、この青く輝く海は「赤潮が発生している」ということを意味し、これが昼間だった場合は、下のようなことになっているということです。
冒頭のポピュラー・サイエンスの記事には以下の下りがあります。
ヤコウチュウによる夜の輝きは世界中の海に現れる。
しかし、タスマニアの水域においての彼らの存在は喜ばしいことではない。それは、タスマニアの海水が気候変動のために、より暖かくなっていることを示しており、また、より栄養豊かになっているということでもある。
それはすなわち、その海が、窒素、リン、そして、農業と工業の廃水や他の化学鉱物および鉱物栄養素で汚染されていることを意味する。
ということになるようなのです。
汚染もですが、この中で最も重要なのは、
> 海水が暖かくなっている
というところです。
タスマニアを含むオーストラリアは「今の冬」です。その時期に、プランクトンが大量発生しているということは、海水温度に異常が起きているということにもなります。
先日、オーストラリアのグレート・バリア・リーフで、大規模なサンゴの白化が今も続いていることをお伝えました。
・世界最大のサンゴ礁グレート・バリア・リーフの「大規模な白化」が2年連続で発生していることが確認される
2017/03/13
このサンゴの大量死の主要な原因もまた、ヤコウチュウが大発生している原因と同じなのです。
すなわち、
・海水温度が異常に高い
・海の汚染が進んでいる
ということが大きな原因となっています。
つまり、下のようにオーストラリアの海岸を美しく染めるヤコウチュウは、サンゴの大量死を含めた「海の死」の象徴でもあるのかもしれません。
・ITV
ヤコウチュウによる海の輝きは、今では「中国の夏の海岸」で頻繁に見られます。
このことからも、その性質がおわかりになるかとも思いますが、本来は海がきれいなオーストラリアの周辺に発生することなどなかったものなのです。
こりような現象ひとつをとっても、現在の海の環境の大きな変化がわかります。