昨日、In Deep に、世界銀行の総裁、国際通貨基金の代表、あるいは、ロックフェラー財団の会長、そして世界経済フォーラムの代表などが、一斉に、「近いうちに深刻な食糧危機が訪れる」と声を揃えていることに少しふれました。
[記事] 世界中の機関と組織が揃って述べる「6ヵ月以内の深刻な食糧危機」。これはリーマンショックやパンデミックと同じ「予告」の模様。そして世界の穀物在庫はすでに危機的な状態であることも判明
In Deep 2022年5月8日
そうしましたら、アメリカのロイターの報道で、
「世界貿易機関(WTO)の長官も同じことを言っている」
ことを知りました。
ロイターの報道の本題は「ウクライナの港に大量の穀物が身動きできず停留している」というもので、これはこれで結構深刻な話で、何しろ、停留している穀物の量が、2500万トンだというのです。
これがどのくらいの量かといいますと、小麦に限定しますと、日本の年間の平均流通量は、以下のようになっているようです。
日本の1年間の小麦の平均流通量
国産小麦 82万トン
輸入小麦 488万トン
つまり、日本で1年間で流通しているすべての小麦の量は、約 500 - 600万トン規模であり、この数値からも 2500万トンの小麦が停滞しているというのは、途方もないものだとわかります。
冷房などのインフラが無効になっている場合は、穀物はそう長くはもたないでしょうし、この戦争がすぐに終わる見通しもなさそうですので、大変な量が廃棄処分的になる可能性があります。
まずは、そのロイターの報道です。
約2500万トンの穀物がウクライナで立ち往生していると国連の食糧当局は述べる
Nearly 25 million tonnes of grain stuck in Ukraine, says UN food agency
Reuters 2022/05/06
国連食糧農業機関(FAO)の当局者たちによると、インフラの問題とマリウポリを含む黒海の港の封鎖により、2500万トン近くの穀物がウクライナに停滞し、輸出することができていないという。
FAO によると、この停滞は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて3月に過去最高を記録した食糧価格の高騰の要因と見られている。価格は4月にはわずかに緩和した。
国際穀物評議会のデータによると、ウクライナは2020/21年シーズンには、世界第4位のトウモロコシの輸出国であり、第6位の小麦輸出国だった。
FAO副局長のシュミット・フーバー氏は以下のように述べる。「これは現在ウクライナで見られるグロテスクな状況であり、約2500万トンの穀物が、インフラの欠如、港の封鎖のために国を離れることができません」
フーバー氏は、これは、7月と8月の次の収穫時に貯蔵不足をもたらす可能性があると述べた。
「ウクライナからの輸出のために開かれている小麦のルートがないままの場合、十分な小麦の備蓄量がなくなることを意味するかもしれません」と副局長は言う。別の懸念は、ウクライナでの戦闘で一部の穀物貯蔵庫が破壊されたという報告であると副局長は付け加えた。
今週初め、世界貿易機関(WTO)の代表は、ロイターに、食料価格の高騰と他のパートナーとの解決策の模索について「真剣に心配している」と語っている。
「私たちがこの港で停滞している穀物を、ウクライナから避難させることができれば、それは本当に世界を助けるでしょう」と世界貿易機関の事務局長ンゴジ・オコンジョ・イウェアラ氏は述べた。
「今のままでは、食料価格が急上昇し、より多くの飢餓につながる可能性があるという深刻なリスクがあります」
ここまでです。
ここに出てくる世界貿易機関(WTO)の代表であるンゴジ・オコンジョ・イウェアラさんという女性は、世界経済フォーラムの正式メンバーで、しかも、新型コロナワクチンを「積極的に途上国に配布」している Gaviアライアンス (ワクチンと予防接種のための世界同盟)の理事長でもあるという筋金入りのアチャラカです。
世界貿易機関のンゴジ・オコンジョ・イウェアラ事務局長
theconversation.com
ナイジェリア人のンゴジ・オコンジョ・イウェアラさんは、「世界貿易機関の事務局長となった最初のアフリカ人」と言われていますが、経歴的には、アメリカのハーバード大学とマサチューセッツ工科大学で学んで博士号を得た後、世界銀行で 25年のキャリアを持つエリート中のエリート、あるいは単なるエリートです。
彼女が、理事長を務める Gaviアライアンスは、世界経済フォーラムの記載によれば、
> Gaviは世界中で5億8000万人の子供たちにワクチン接種を行い、700万人の命を救ってきた。
とあります。
以下は、Gaviアライアンスと日本の企業に関しての昨年の報道です。太字はこちらでしています。
Gaviアライアンスと、途上国向けコロナウイルスワクチン供給に向けた基本合意書を締結
豊田通商株式会社 2021年06月03日豊田通商株式会社は、2021年5月に、Gavi COVAX AMC (※ 途上国向けに新型コロナウイルス感染症ワクチン供給を行う枠組み)に対して1億円の寄付、およびワクチン保冷輸送車5台を提供する基本合意書を、Gaviアライアンス (ワクチンと予防接種のための世界同盟)と締結しました。
Gaviアライアンスと世界保健機関(WHO)などは、ドナーとなる国や国際団体などからの拠出金から新型コロナウイルスワクチンを購入し、途上国92カ国に供給する枠組みを設立、2021年末までに途上国で人口の約30%にあたる18億回分のワクチン供給を目指しています。
豊田通商は、途上国向けの新型コロナウイルス感染症ワクチン供給支援をするとともに、グローバルヘルスへの貢献に向けた取り組みを進めていきます。
主要国の次のターゲットは、途上国の人々になるようです。