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腸内環境に良いとされる植物繊維イヌリンが「腸の炎症を引き起こす、あるいは悪化させる」ことが研究で判明

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腸に良いとして摂取しているものが実は

さまざまな研究で、「こうなるだろうと予測して行った研究が、まったく逆の結果を導く」というようなことは、たまにありますが、米国のワイル・コーネル医学大学の研究者たちが、植物繊維の「イヌリン」の腸への影響を研究したところ、

「イヌリンが、腸の炎症を悪化させることがわかった」

という結果となってしまったという研究に関する記事を読みました。

その記事には、

> アリフザマン氏と彼の同僚は、イヌリンには炎症性腸疾患の予防効果があると期待していた。しかし、彼らが発見したことはまったく逆のことだった。

とあり、植物繊維イヌリンは、「腸の炎症に良い結果をもたらす」としてはじめた研究が「悪い結果をもたらした」ということのようです。

論文はこちらにあります。

イヌリンというのは、サプリなとを含めて、広く知られている植物繊維で、一般的には以下のように言われています。

イヌリンとは、キクイモやごぼう、にらなどに多く含まれる多糖類の一種です。

イヌリンは糖の吸収を抑制し血糖値の上昇を抑える働きがあり、糖尿病予防に効果的です。また、善玉菌を増やし、老廃物の排出を促すため、腸内の環境を整える効果も持っています。

wakasa.jp

これらのような良い効果は確実にあるのでしょうが、しかし、今回の研究の結果からは、「もともと腸の炎症などを持つ方は、イヌリンの摂取は控えめにしたほうがいい」のかもしれません。あるいは、過剰な摂取は、むしろ腸の炎症を誘導し、腸内環境を悪化させるという可能性もあり得ます。

もちろん、植物繊維そのものは、大事なものだとも思いますので、通常の食事で摂取するような部分に関しては特に問題はないのだと思いますが。

Wikipedia には以下のようにあり、さまざまな食品に添加されているものでもあります。

イヌリンはヒトが水溶性食物繊維を補うことができるためチコリーの根などから抽出するといった方法で工業的に生産され、飲料(コーヒー、茶、乳酸菌飲料など)、菓子(チョコレート、ビスケット、飴など)、パン、魚肉練り製品といった飲食物に素材として使用されることが近年増えてきている。

薄味のものから甘めのものまで広範に使用されており、砂糖や脂肪、小麦粉の代わりに用いられることもある。

イヌリン

この研究を取り上げていた医学メディアの記事をご紹介します。





一般的な種類の植物繊維が腸炎を引き起こす可能性がある

A common type of fiber may trigger bowel inflammation
medicalxpress.com 2024/05/03

ワイル・コーネル医学大学の研究者たちによる新たな研究によると、特定の植物由来の食品や繊維サプリメントに含まれる繊維の一種であるイヌリンは、前臨床モデルにおいて腸内で炎症を引き起こし、炎症性腸疾患を悪化させるという。

この驚くべき発見は、症状を緩和し、腸の健康を促進する治療食への道を開く可能性がある。 

Journal of Experimental Medicine 誌に 3月20日に掲載されたこの研究は、ニンニク、ネギ、サンチョークなどの食品に加え、一般的に使用される繊維サプリメントや繊維を添加した食品に含まれるイヌリンは、腸内の微生物を刺激して胆汁酸を放出させ、腸の炎症を促進する分子の生成を増加させることを記述している。

そのようなタンパク質の 1つである IL-33 は、グループ2自然リンパ球 (ILC2) と呼ばれる免疫細胞を活性化し、アレルギー反応に似た過剰な免疫反応を引き起こす。

その過剰な免疫反応は、炎症性腸疾患の動物モデルにおける腸の損傷と症状を悪化させた。

イヌリンを含む食物繊維は、ほとんどの人にとって健康的な食事に不可欠な部分であると考えられている。腸内微生物はイヌリンやその他の種類の食物繊維を短鎖脂肪酸に変え、制御性 T細胞と呼ばれる免疫細胞を作動させ、炎症を軽減し、体全体に他の有益な効果をもたらす。

これにより、食品とサプリメントの両方で添加物として食物繊維の使用が顕著に増加し、精製イヌリンまたはイヌリンを豊富に含むチコリの根が食物繊維の主な供給源となることがよくある。

論文の筆頭著者でワイル・コーネル医学大学の博士研究員であるモハマド・アリフザマン氏は、以下のように述べた。

「イヌリンは現在、臨床試験からプレバイオティクス・ソーダに至るまで、あらゆるところに存在しています」

アリフザマン氏と彼の同僚は、イヌリンには炎症性腸疾患の予防効果があると期待していた。しかし、彼らが発見したことはまったく逆のことだった。

炎症性腸疾患モデルにおいてマウスにイヌリンを与えると、特定の腸内細菌グループによる特定の胆汁酸の産生が増加した。胆汁酸の増加により、ILC2による IL-5 と呼ばれる炎症性タンパク質の産生が促進された。 ILC2 は、アンフィレグリンと呼ばれる組織保護タンパク質も生成できなかった。

これらの変化に反応して、免疫系は好酸球と呼ばれる免疫細胞の生成を促進し、炎症や組織損傷をさらに悪化させた。

以前、同じ研究チームによる 2022年の研究では、この大量の好酸球が寄生虫感染症からの防御に役立つ可能性があることが示された。しかし、炎症性腸疾患モデルでは、この連鎖反応により腸の炎症、体重減少、下痢などのその他の症状が悪化した。 

患者ベースのトランスレーショナル・リサーチ(基礎研究から臨床現場への橋渡し研究)において、チームはワイル・コーネル医学大学のジル・ロバーツ研究所の炎症性腸疾患生細胞バンクから採取したヒトの組織、血液、便サンプルも分析した。

この分析により、イヌリンを与えられたマウスと同様に、炎症性腸疾患を患う患者は、炎症性腸疾患を患っていない人々と比較して、血中および便中の胆汁酸のレベルが高く、腸内の好酸球のレベルが過剰であることが明らかになった。

この結果は、イヌリンを与えられたマウスと同様の炎症カスケードが、炎症性腸疾患を患うヒトにおいてすでに準備されており、イヌリンの摂取により疾患がさらに悪化する可能性があることを示唆している。

これらの予期せぬ発見は、なぜ高繊維食が患者の炎症性腸疾患を悪化させることが多いのかを説明するのに役立つかもしれない。また、科学者が炎症性腸疾患または関連疾患の患者の症状や腸の損傷を軽減する治療食を開発するのにも役立つ可能性がある。

これらのますます一般的な腸の状態に対しては、新しい治療法が緊急に必要とされている。既存の生物学的療法は、免疫系が体を攻撃する感染症や自己免疫疾患を発症するリスクを高める可能性がある。 

「今回の研究は、微生物叢や体の免疫系にどのように影響するかという点で、すべての線維が同じではないことを示しています」と、主著者でジル・ロバーツ炎症性腸疾患研究所所長のデビッド・アーティス氏は述べた。

「これらの発見は、患者特有の症状、微生物叢の構成、食事のニーズに基づいて全体的な健康を促進するために、個々の患者に精密な栄養を提供することに、より広範な影響を与える可能性があります」







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