現在、アメリカ、ヨーロッパ、そして中国などの穀物の主要な生産国が、どこも激しい干ばつにより生産状況が悪化していますが、その中で、8月25日、インド政府は「小麦粉の輸出を禁止する」と発表しました。
インドは、今年 5月にも小麦の輸出を停止しましたが、その後に、制限つきで小麦の輸出を再開していました。しかし、インドの国内の小麦価格の止まることのない上昇を受けて、再び「禁止」という措置に踏み切ったようです。
インドの小麦粉価格の推移を見ますと、以下のように、過去 20年ほど一貫して上昇しており、下がる局面がほとんど見られないです。
このインドの国内価格が落ち着くまでは、輸出再開はないような感じもありますが、現在、世界の小麦在庫が「14年ぶりの低水準」となっていまして、どの地域でも今後の供給がタイトになる可能性が強いです。
(報道) 世界の小麦埋蔵量が、14年ぶりの低水準に減少 (2022/08/26)
現在、小麦の主要生産国で気候の問題等で生産に影響を受けていない豊作が見込まれる国は、ロシアとブラジルくらいとなっており、今後の世界の小麦と小麦粉の取り引きはかなり厳しいものとなっていくかもしれません。
それと共に、現在すでに急増している「飢餓人口」がさらに増えるおそれがあり、特にヨーロッパの安全保障の問題とも直結する話になっていく可能性もあります。
[記事] すでにアフリカの飢餓人口は2億8000万人に。これ以上飢餓が進行した時に起きる可能性がある「数千万人の移民によるヨーロッパの壊滅」
投稿日:2022年8月5日
ここから、インドの小麦粉の輸出禁止についての報道です。
インドは食品価格の上昇を食い止めるために小麦粉の輸出を禁止
India Bans Exports of Wheat Flour in Latest Move to Stem Rising Food Prices
gro-intelligence.com 2022/08/26
インド政府は、国内の小麦と小麦粉の価格上昇を抑えるために小麦粉の輸出を禁止した。この動きは、食品価格のインフレを抑えることを目的としたインドによる一連の輸出制限の最新のものだ。
インドは小麦と小麦粉の世界最大の生産国の 1つであり、輸出禁止はすでに逼迫している世界的な供給をさらに悪化させるリスクがある。
中国を除く世界の小麦在庫は、2022/23年に 14年ぶりの最低水準にまで減少すると予測されている。
2月にロシアがウクライナに侵攻したことで黒海小麦の輸出が停止した後、世界の小麦輸入業者は手頃な価格の小麦粉の供給を求めてインドに目を向けた。
インドの小麦粉輸出は 5月に過去最高に達し、前年の 4倍に跳ね上がった。
しかし、今年のインドの小麦収穫量の減少と相まって、強い輸出需要により、小麦と小麦製品の国内価格が記録的な高値に押し上げられた。
インドが小麦粉の輸出を新たに禁止する前に、国内価格を抑えるための一連の輸出制限が行われた。5月中旬、インドは小麦の輸出を禁止した。その1週間後、輸出できる砂糖の量に上限が設けられた。
その後、7月に、貿易業者が小麦粉を輸出する前に許可を得る必要がある小麦の輸出制限を制定した。
インドは、国内生産量に応じて、小麦の純輸出国となったり、あるいは純輸入国となったりと変動する。過去 5年間の豊作の後、インドは昨年、主に中東と南アジアの国々に約 800万トンの小麦と 40万トンの小麦粉を輸出した。