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史上2番目の流行規模となっているコンゴ共和国でのエボラ出血熱が隣国に拡大。死者は1300人を超え、致死率は60%超。そして今後の突然変異はどの方向に?

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2019年6月13日の日本語版CNNより


CNN




 

あまり大きく報道されることはなかったですが、昨年 8月から続いているアフリカ中部にあるコンゴ民主共和国で拡大しているエボラ出血熱の流行は、「史上2番目の大きな流行」となっています。

6月はじめの段階で、エボラ出血熱に感染した患者数は 2000人近くに達しました。

そして、そのうちの「 1339 人が死亡した」という、実に 60%を超えるという非常に強い致死率を保ったままで現在に至っています。

そのような中、この数週間で患者数が急速に増加し続けているようで、これまでコンゴ共和国の中だけで流行していたエボラ出血熱が、隣国のウガンダに拡大したことが報じられています。

冒頭の CNN の報道は以下のようなものです。

コンゴのエボラ流行、隣国に拡大 「真に恐ろしい段階」に

CNN 2019/06/13

エボラ出血熱の流行が続くコンゴ民主共和国の隣国ウガンダで12日、5歳の男の子を含む3人の患者が確認された。関係者が以前から恐れていた国境を越えた感染拡大が現実となった。

ウガンダ衛生省によると、エボラ出血熱の感染が確認されたのは、この男の子と3歳の弟、50歳の祖母の3人。ウガンダ西部にある病院のエボラ治療病棟で隔離されている。

WHOは12日、5歳の男の子が11日夜に死亡したことを明らかにした。
ウガンダ衛生省は、この一家と接触した8人の足取りを追っている。

コンゴでは、昨年8月から始まった今回の流行によって1300人以上が死亡している。

患者数はこの数週間で増え続けており、国境を越えた感染の拡大に対する不安が強まっていた。

英医療研究慈善団体ウェルカム・トラストは今回の流行について、「真に恐ろしい段階にあり、すぐにも食い止められる兆しはない」と述べ、「死者の数は、2013~16年の西アフリカでの流行を除けば、歴史上のどの流行よりも多い。今の状況がそうした恐ろしいレベルへとエスカレートし得ることに疑いの余地はない」と指摘する。

このようなことになっていまして、今回のエボラ出血熱の感染拡大は、最初の感染者が報告されてから、約 10ヵ月目にして「拡大局面を迎えた」ということになっています。

2019年6月12日 エボラの検査のためにウガンダに入るWHOの職員たち


Tedros Adhanom Ghebreyesus

エボラ・ウイルスは、致死率こそ非常に高いのですが、「昨年の 8月から流行が続いていて、感染者が 2000人」というのを見てもわかるように、感染力そのものはそれほど強くないものといえます。しかし、もしエボラが「強い感染力を獲得した場合」は、致死率が極めて高い疾患であるだけに、相当な惨事につながりかねないと思われます。

そして、かつての流行拡大の中では、エボラは「突然変異」を続けていたことが確認されています。

以下は、2014年のアフリカのシエラレオネでのエボラ出血熱の流行の際に、エボラウイルスを解析したことに関しての報道です。「次々に突然変異」していく様子を科学者たちは見ています。


Ebola Is Rapidly Mutating As It Spreads Across West Africa
NPR 2014.08.28

エボラウイルスは西アフリカで感染拡大する中で急速に突然変異し続けている

シエラレオネのエボラ患者の人々のウイルスのゲノム配列を決定することによって、科学者たちは、エボラ出血熱の流行の広がりとほぼリアルタイムで解析を完了させることを成し遂げた。

2014年8月28日の科学誌サイエンスに発表された論文は、西アフリカで発生したエボラウイルスに対しての新たな洞察を提供している。

研究者の国際チームは、6月にシエラレオネでエボラ出血熱と診断された 78人の患者から非常に高い精度において 99のエボラウイルスのゲノム配列を決定した。

エボラのゲノムは信じられないほど単純だった。

それはたった7つの遺伝子だけを持つものなのだ。

たとえば、比較でいえば、私たち人間は約 20,000の遺伝子を持っている。

解析にあたったチームの1人、ハーバード大学の計算生物学者であるパラディス・サベティ( Pardis Sabeti )氏は、「これらのウイルスは驚くべきものです。これだけ小さなものが、人間にあれほどの大きなダメージを与えるのですから」と述べる。

このチームは、シエラレオネでの最初のエボラの患者を発見することにも一役買っている。その後、アメリカ人のエボラ出血熱患者からサンプルを送ってもらい、ただちに、エボラウイルスのゲノム配列の解析を開始した。

サベティ氏は、「私たちの研究室の 20人は無休で働き続けました」と言う。

彼らのその猛烈な労力は報われ、1週間ほどで、チームは 99 のエボラウイルスの由来の遺伝子配列の解析に成功した。

このデータは、エボラの流行に対して大きな情報を提供している。たとえば、これらのデータは、エボラウイルスが、ヒトを介して感染していく中で、急速に新たな突然変異を起こし続けていることを示していた。

「私たちは、250以上の突然変異を発見しています。それらは、私たちが見ている目の前で、リアルタイムで突然変異を起こしたのです」とサベティ氏は述べる。


 

ここまでです。

短期間の解析で「 250もの突然変異」を見たわけですから、こういう突然変異は、現在のエボラ出血熱の流行の中でも起きていることだと思われます。

そのような突然変異の中で「感染力の強化」というようなことが起きるとすれば、脅威は一気に途方もないことになるかもしれません。

現状の感染力のままであるならば、アフリカ中部以外の全世界に影響を与えるようなことはないでしょうけれど、激しい頻度で「進化」していくウイルスたちが、次に見せるのはどうのような突然変異なのかは誰にもわからないことです。

そういう意味で、今回のエボラの流行が他の国に拡大したことは、やや気になる報道でもあります。







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