以前、1月の In Deep の以下の記事で、「南アフリカのオミクロン流行の感染数の推移と死亡数の推移が、それ以前のコロナとまるで異なる」ことについて、ふれたことがありました。
数ヶ月後に開くかもしれない「新たな」扉 : オミクロン変異株は結構厄介かもしれないということを南アフリカの専門家の報告とドイツの論文から知る
In Deep 2022年1月18日
その時は、感染確認のピークである昨年 12月17日から1ヵ月ほど経っていた時だったのですが、
「感染のピークから1ヵ月経過しても、なお死者数が増え続けている」
という状態でした。
そして、それからさらに1ヵ月が経過し、つまり感染のピークから 2ヵ月経過した現在どうなっているかといいますと、
「いまだに死者数が増加し続けている」
のです。
以下のグラフは、オミクロン株が確認されてからの南アフリカの「感染確認数」と「死者数」の推移です。「最大」というのは「オミクロン流行時での最大」という意味です。
感染のピークから約 2ヵ月過ぎた今が「死者数のピーク」となっています。
というより、1月下旬頃からは、感染はほとんど収束しているように見えるグラフとなっていますが、死者だけが増えているのです。
この異様さは、南アフリカの「オミクロン以前」の同じ「感染数と死者数の関係」をグラフで見るとわかります。
死亡数の増加と減少は、感染数の増加と減少とおおむねリンクしており、時間的には、死亡事例が約 1- 2週間程度遅れて伴っていました。
武漢型の流行期でもデルタ株の流行期でも、あまり差はありません。
今回のオミクロン株だけが、「感染拡大がおさまった後に死亡事例だけが増えていっている」のです。
この理由は定かではないですが、ただ、先ほどの In Deep の記事では、ドイツの論文を紹介していた医療記事をご紹介していますが、オミクロンは従来のデルタと「感染のメカニズムが異なる」ということがあります。
従来のコロナは、ACE2受容体という部分を主な感染経路としていましたが、オミクロンは「 ACE2は主要な感染経路ではなくなっている」ことがわかったのです。
ですので、身体に与える影響も従来のコロナとは異なる可能性があり、時間の経過と共に「後になってから」何らかの影響が出てくるという可能性が言われていました。
それが現在の南アフリカの異様な感染と死亡の関係を作り出しているのかどうかはわからないですが、同じようなグラフを示している国はヨーロッパにかなりあります。
これは個別の国を挙げるより「ヨーロッパ」という広い括りで見ましても、以前とは異なるグラフを描いています。
今のヨーロッパは、各国で規制の撤廃やワクチンパスポートの撤廃が拡大していて、まあ、それはいいことなんですが、実際はオミクロンが登場してこの3ヵ月、
「ヨーロッパのコロナ死者数は減っていない」
のです。
ヨーロッパは、まだ感染のピークから 3週間くらいですので何ともいえないですが、死亡数の推移は、感染の減少傾向とはリンクしていません。
仮にヨーロッパ、あるいは日本を含めた他の国でも、南アフリカのような「遅延して起きる死亡事例が増加していく」ことになるとすれば、それはまたいろいろと厄介かもしれません。というのも、そのような中でも、また新たな変異種が出てくることが確実となっているからです。
理由は多くの国で、ブースター接種が進んでいるからですが、ブースター接種が進んでいる国の感染状況はすごいことになっています。
3回目の接種であるブースターショットの接種率の上位5カ国は、チリ(70%)、アイスランド (67%)、マルタ (65%)、デンマーク (62%)、イタリア (61%)などとなっていますが、このうたのチリとデンマークは、オミクロン以降の死者数記録を連日更新していて、
アイスランドは、この 2週間、毎日パンデミックが始まって以来の最大感染確認数に見舞われています。 アイスランドでは、1日の新たな感染数がデルタ株の時の 20倍以上となっています。
ブースター接種率の高いシンガポール(3回目の接種率 57%)も新たな感染数は壊滅的な増え方となっています。
国にもよりますけれど、かなりの国がブースター接種でボロボロにされているという現状があり、今後もブースター接種を積極的に行っている国では、ある程度は同じようなことになると思われます。
そして、ようやくその感染がおさまった頃に、あるいはおさまる前に「次の波」がやってくるとも思われます。
その理由は、変異の時間的なスピードがどんどん早くなっているからです。これは、以下の記事に、デンマークの国家機関の「これまでの変異種の分布の推移」についてのデータがあり、それを見るとわかります。
厚生労働省による広域火葬計画下の日本の「オミクロン後の社会」を、デンマークの国家機関データから考える
In Deep 2022年2月13日
さまざまな国で死の連鎖はこれからということになる可能性が高いです。