中国の月探査機である「嫦娥6号」が、月の裏側からサンプルを採取して、それを地球に送達したことを、中国の人民日報が報じていました。
月の裏側のサンプルを採取したのは、世界で初めてのことです。
この「月の裏」の大部分は、地球からまったく見ることができない場所で、以下のように説明されています。
月の裏 - Wikipedia
月の裏は、月の、地球とは反対側の半球である。月は自転と公転が同期し常に地球に同じ側を向けているため、地球から見て「表と裏」の区別がある。月の裏の大部分は、地球からまったく見ることができない。1959年、ソビエト連邦の月探査機ルナ3号が初めて観測した。
その後、月の裏側を写真で撮影した記録はあり、以下のようになっています。
月の裏側の撮影の記録
・1959年、ソ連の月探査機ルナ3号が撮影
・1968年、アポロ8号が撮影
・2007年、日本の月周回軌道衛星「かぐや」が撮影
・2015年、NASAの人工衛星ディスカバーが撮影
そのような中で、中国で宇宙計画を担当する中国国家航天局は、2016年に、人類として初めてとなる「月の裏側の探査の実施」を宣言し、2018年12月8月に月探査機「嫦娥4号」を打ち上げました。嫦娥4号は、2019年1月21日に月の裏側に着陸し、嫦娥4号が搭載していた月面探査ローバー「玉兎2号」が、月の裏側の探査をおこないました。
嫦娥4号が月の裏側に到着してから、もう 5年が経過しましたが、今回、その次の次の世代の嫦娥6号が「月の裏のサンプルを採取して、それを地球に送達した」と報じられた次第です。
以下は中国当局が発表した月の裏側の動画です。
China's Chang'e-6 touched down on the far side of the moon on Sunday morning, and will collect samples from this rarely explored terrain for the first time in human history, the China National Space Administration (CNSA) announced. #GLOBALink pic.twitter.com/ZDE2Bl2qhu
— China Xinhua News (@XHNews) June 2, 2024
人民日報の報道には、
> サンプル採取が完了した後、着陸船が運んだ中国の国旗が初めて月の裏側に掲揚された。
とあり、月の裏側に中国の国旗が立てられたようです。
月の裏側に掲揚された中国国旗
採取した月の裏のサンプルは地球に向けての打ち上げにも成功したようで、事故(や巨大な太陽フレアなど)がなければ、じきに地球に到着するものと見られます。
以下、人民日報の報道です。
中国の宇宙船が月から離陸、月の裏側から初のサンプル採取
China's spacecraft takes off from moon with first samples from lunar far side
人民日報 2024/06/04
中国の月探査機「嫦娥6号」の昇降機が 6月4日朝、月の裏側で採取したサンプルを運び、それは月面から打ち上げられた。これは人類の月探査史上前例のない偉業だ。
中国国家宇宙局によると、衛星は月を周回する所定の軌道に入ったという。
嫦娥6号は、前身の嫦娥5号と同様に、周回機、着陸機、上昇機、帰還機で構成され、5月3日に打ち上げられ、陸機と上昇機の組み合わせは、6月2日に月の南極エイトケン盆地の指定着陸エリアに着陸した。
中国国家宇宙局によると、探査機はインテリジェントかつ迅速なサンプル採取作業を終え、サンプルは計画通り探査機の上昇部内のコンテナに収納されたという。
サンプル採取と梱包作業中、研究者たちは鵲橋2号中継衛星から送られてきた検出データに基づいて地上実験室で模擬サンプル採取を実施し、あらゆるリンクにおける意思決定と運用に重要なサポートを提供した。
中国国家宇宙局は「このミッションは月の裏側での高温のテストに耐えた」と述べた。
月面サンプル採取には、ドリルで地下のサンプルを採取する方法と、ロボットアームで表面のサンプルを掴む方法の 2つの方法を採用し、さまざまな場所でさまざまなサンプルを自動的に収集した。
中国国家宇宙局は、着陸カメラ、パノラマカメラ、月面土壌構造検出器、月面鉱物スペクトル分析装置など、着陸機に搭載された複数の搭載物はうまく機能し、計画通り科学探査を実施したと発表した。
月面土壌構造検出器は、採取エリアの地下の月面土壌構造を分析・判定し、サンプル掘削のためのデータ参照を提供した。
サンプル採取が完了した後、着陸船が運んだ中国の国旗が初めて月の裏側に掲揚された。
嫦娥6号の月の裏側からの離陸は、地上からの管制や支援を直接受けられないため、月通信には鵲橋2号の支援を受け、特殊なセンサーを活用して自律的な位置と方向付けを実現した。
中国航天科技集団の宇宙専門家、喬徳志氏は、嫦娥5号と比較すると、嫦娥6号は離陸と上昇中の月の裏側の不確実性によって生じる課題に対処するため、航行、誘導、制御システムの自律性と信頼性が向上したと述べた。