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イナゴ被害がアフリカ東部で壊滅的な規模に拡大。「過去70年間、このような光景は見たことがない」

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AFP via telegraph.co.uk




 

東アフリカでは昨年、かつて経験したことのない規模のイナゴ(サバクトビバッタ)の大群の被害に見舞われました。そして、今年 2021年もまた、昨年同様か、それを上回る規模の壊滅的なイナゴの大群の発生が起きています。

特に、ケニアでは極めて深刻な状態となっていることが国連から伝えられています。

このようなことが毎年起きているのなら、平年の事象として受け取ることができるのですが、英国テレグラフの報道にある国連職員の話によれば、昨年のイナゴの大発生にしても、今年の発生にしても、

「ケニアでは 1950年代以来こんなことは起きたことがない」

のだそうで、基本的に、イナゴの大群の被害を受けるということがない国のようです。

それが二年続けて起きている。

基本的に砂漠が多い東アフリカでは、本来ならイナゴが大発生するということは、その繁殖の観点からはあり得ないことなのですが、一昨年以来、東アフリカでは各地でそれまで経験したことのないような大雨や洪水が繰り返され、イナゴの繁殖条件が過去にないほど強くなったのが原因と考えられます。

現在のイナゴの発生状況を、国連食糧農業機関のイナゴ監視ページからご紹介しますと、以下のようになっています。

色わけとその危機レベルの段階は以下のようになります。

2021年2月16日時点のサバクトビバッタの確認状況

FAO (国連食糧農業機関)

まだ 2月ですが、すでにケニア、ソマリア、エチオピアでは、最高ランクとなる危機的状況であることが示されています。

これはアフリカ全体からの位置関係としては、以下のようになります。

このエリアのすぐ下には、以下の記事で取りあげました、ペストの感染拡大が続いているコンゴ民主共和国があります。

コンゴ民主共和国でペストが拡大。数百の症例と31人の死亡事例。患者の平均年齢は「13歳」と若年層に集中
投稿日:2021年2月21日

上の記事では、ペストやエボラの流行の拡大の背景には、食糧不足による栄養失調的な側面もあるのではないかと書きましたけれど、このイナゴの大群により、さらにアフリカでの食糧状況が極度に悪化する可能性が指摘されていまして、感染症の観点からもアフリカの困難は拡大する可能性もあります。

現在のケニアの状況について述べていた英国テレグラフの記事をご紹介いたします。

昨年の場合は、東アフリカから中東、そして、インドやパキスタンなどの東アジアにまでイナゴの被害は拡大しましたが、今年も気候と風向き次第では、同じような状況となるかもしれません。


聖書的な被害になるのかそれとも制御できるのか? ケニアの駆除業者はイナゴの大群と戦っている

Biblical plague or manageable threat? Beating back swarms with Kenya’s locust hunters
Telegraph 2021/02/21

気候変動によって引き起こされたイナゴの群れは、定期的に激しい飢餓に直面しているこの地域の食糧供給に大混乱をもたらしている。

イナゴ駆除業者の航空機でケニアの上空を飛ぶと、サバクトビバッタが山の上に何百万もの白い点として飛び交っているのが見える。現状で、ロンドン市の約 2倍の面積と同等の大群が、あらゆる植生を食い尽くす準備をしている。

昨年、東アフリカは前例のない、一生に一度級の甚大なサバクトビバッタの侵入に見舞われた。数十億匹の昆虫が国境を越えてアラビア半島、ソマリア、エチオピアからケニアに流れ込んだ。

当時、その光景は聖書の記述と比較されていたようなものだった。気候変動によって引き起こされたと考えられるその聖書的な疫病は、定期的に激しい飢餓に直面しているケニア含むアフリカの地域の食糧供給に大混乱をもたらした。

1950年代以来、ケニアではそのようなイナゴの大群の被害はなかった。経験がなかったために、昨年のケニア当局は、わずかな飛行機と装備だけでイナゴの大群を駆除しようとして、大きな痛手を負った。

そのため当局は、今年、イナゴ駆除に対して本格的な態度を示している。

1つのイナゴの大群には最大 8000万匹のイナゴが含まれ、風に応じて 1日で 30〜 80マイル(40〜120キロ程度)飛ぶことができる。

イナゴ駆除の航空機のパイロットであるキエラン・アレン氏は、昨年の光景を以下のように述べる。

「それは絶望的な光景でした。そのようなイナゴの大群を見たことがある人は(ケニアには)いませんでした。昨年の私たちの装備は、例えれば、コーヒーカップの水で大きな山火事を消そうとしたようなものだったのです」

昨年のケニア当局は、イナゴの侵略を制御するのに一年間のほとんどを要し、その時までに大群は膨大な数の自給自足農民たちの生活を壊滅させた。

国連食糧農業機関(FAO)のイナゴの専門家であるキース・クレスマン氏は以下のように言う。

「過去 70年間、あのような光景をケニアで見た人は誰もいませんでした」

「そのため、ケニアにはイナゴ駆除に関する技術がなかったのです。経験も機器もなく、殺虫スプレーの方法も知りませんでした。しかし今はまったく違います」

今年 2021年、イナゴの大群が再び出現し、現在、ケニア北部を席巻している。

しかし昨年と異なり、地上駆除チーム、ヘリコプター、農薬散布機など、複雑な防衛システムが設置されている。

そして今のところは少なくとも、昨年と比較して、ケニアはイナゴの侵略者たちを打破しているように見える。

2月初旬、対応の原動力の1つである国連食糧農業機関は、イナゴが国境を越えて、ケニアに侵入してから 1か月程度で、ケニアへの大群の侵入はすでに減少し始めていると述べている。


 

ここまでです。

記事では、2月の初めに、国連食糧農業機関が、「ケニアへの大群の侵入はすでに減少し始めている」と述べたことが記されています。

しかし、先ほどのマップを見ますと、2月16日の時点のイナゴの大群の発生状況では、「ケニアが最もひどい状態になっている」ことがわかります。

つまり、おそらくは 2月初旬に「駆除に成功した」とした後、「さらに状態が悪化した」ということのようです。

場合によっては、過去最悪だった昨年よりも大群の規模が大きくなっているのかもしれません。そして、イナゴの本格的な発生シーズンは今から数カ月間続きます。







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