戦争が欧州全体へとエスカレートしていく予兆
1月16日に、ウクライナのハリコフという都市で「外国人戦闘員」が滞在する建物がロシアによる攻撃を受け、60人以上の死亡が確認されたという出来事がありました。そして、死者の多くが「フランス人」だったことが判明しています。
当時、これはフランス人「傭兵」だとされていました。以下のように報じられています。
フランス、ウクライナに傭兵派遣とのロシアの主張を否定
フランスは18日、ウクライナにフランスの傭兵がいたというロシアの主張を否定した。
ロシア国防省は17日、ロシア軍が16日にウクライナ第二の都市ハリコフにある「外国人戦闘員」が滞在する建物に対し精密攻撃を実施したと発表。発表によると、戦闘員の多くはフランスの傭兵で建物が破壊され60人以上が死亡したという。
これに対し、フランス外務省は「フランスは、ウクライナの主権、独立、領土保全を守る戦いを支援するため、国際法を完全に順守し、軍事物資の供給や軍事訓練でウクライナを支援している」と指摘。「他の一部の国とは異なり、フランスにはウクライナにも他の場所にも傭兵はいない」とした。
newsweekjapan.jp 2024/01/19
傭兵というのは、一般的に、金銭(給与)を目的として自分とは関係ない国に「兵士として雇われる」人たちであり、あくまで個人のビジネスで、その個人個人の出身国家等とは関係のないものです。
上のニュースのタイトルは「ウクライナに傭兵派遣」とありますが、このように「国が派遣する」という時点で、傭兵とはいえないのですが、ともかく、記事のように、フランス政府は、ウクライナにフランス人傭兵がいること自体を否定したとされていました。
ところが。
このハリコフへの攻撃で死亡したフランス人たちに、
「傭兵だけではなく、フランス軍の正規兵が含まれていた可能性」
が出てきているのです。元 CIA のスコット・リッター氏が、ロシアのメディアに述べたものです。
仮に本当にフランス軍の正規兵が含まれていた場合、フランスが「国家として、ロシアとの戦争に自国軍をウクライナに派遣した」ことになり、これは問題です。
しかし、ハリコフで死亡したフランス人たちの「リスト」がすでに上がっていまして(名前、生年月日と、おそらく認識票番号)、これはフランスで調べれば、彼らが正規兵かどうかはすぐにわかることでもあります。また階級や所属等もわかるはずで、「ウクライナで何をしていたか」が推測できるものともなり得ます。
ハリコフで死亡したフランス人の名簿リストの一部
warnews247.gr
これを受けて、ロシア政府は、外務省のフランス大使を召喚していますが、ロシアはさらに明確な返答をフランスに要求しているようです。
もし、仮にフランス正規軍がウクライナ国内でロシアと戦っていることが本当ならば、ロシアとフランスの関係は極端に悪化すると見られ、いよいよ、以下の記事でふれましたような「 NATO 対ロシア」の全面的な戦争への下地のひとつとなっていくかもしれません。
[記事]ドイツ国防省の秘密文書は「第三次世界大戦は2024年から始まる」と明確に述べる。まずはロシア対ドイツ
In Deep 2024年1月16日
また、今回ロシアの攻撃を受けたハリコフというのは、前線から離れた場所であり、ロシアはロシアで、そこにフランス人部隊がいることをわかって攻撃した」可能性もあります。つまり、ロシア、フランスどちら側にしても、戦争をエスカレートさせようとしている気配が漂っています。
ロシア議会下院は、フランスの傭兵(あるいは正規兵)がウクライナ軍と共闘していることを知っているかどうかをフランス国会に知らせるよう正式に要請する予定であると下院議長が述べたことも報じられていて、両国の関係は著しく緊張していく方向にありそうです。
軍事メディアの報道をご紹介します。
ロシア政府はフランス大使に説明を求めた:ハリコフで死亡したフランス人はフランス正規軍の隊員であり、彼らは傭兵ではなかった可能性…
Η Ρωσία κάλεσε για εξηγήσεις τον Γάλλο πρέσβη: Μέλη του τακτικού γαλλικού Στρατού οι νεκροί Γάλλοι στο Χάρκοβο – Δεν ήταν μισθοφόροι…
warnews247.gr 2024/01/19
ロシアによるハリコフの傭兵基地への攻撃で 60人以上が死亡し、少なくとも 20人の兵士が負傷したことを受け、ロシアとフランスの関係は急激な悪化を示している。ロシア政府は 19日、ハリコフで前例のない数のフランス兵士が死亡したことについて、フランス大使を外務省に呼び出し、説明を求めた。
ロシア側は、これらはフランス政府に代わって派遣されたフランス正規軍の兵士、将校、特殊部隊、顧問などであると考えている。これは、戦争の最前線ではなく、ハリコフの特定の場所に彼らの数が多かったことも説明できるものだ。
フランス大使が説明のために呼び出された
18日、ロシア政府は、ロシア軍がハリコフの「外国戦闘員」が収容されている建物を精密攻撃したと発表した。ロシア国防省は、戦闘員は主にフランスの傭兵で、建物は破壊されたと発表した。
ロシアは 19日、説明を求めてピエール・レヴィフランス大使をロシア外務省に呼び出した。一部の情報筋によると、大使は休暇を与えられたという。
「数十人のフランス人を含むハリコフの外国人戦闘員の一時配備地点がロシア軍によって破壊されたことに関連して、フランス大使が外務省に呼び出された」とロシア省の外務省のマリア・ザハロワ氏は述べた。
フランス政府は、ウクライナにおけるフランス傭兵の存在に関するロシアの主張に反論している。
フランス外務省は、「フランスは、主権、独立、領土一体性を守る戦いにおいてウクライナを支援するため、国際法を完全に遵守し、軍事装備の供給や軍事訓練でウクライナを支援している」と述べた。「他国とは異なり、フランスにはウクライナにも他のどこにも傭兵はいない」と彼は付け加えた。
リッター氏:ハリコフで殺されたフランス人全員が傭兵だったわけではない
ウクライナ第 2の都市ハリコフに武装したフランス人が存在することについて、彼らが誰のために働いているのかという憶測が広がっている。
元 CIA 職員で元国連兵器査察官のスコット・リッター氏が、ロシアのスプートニクに語ったところによると、「フランス兵全員が傭兵だったわけではない」と本格的な爆弾発言をした。
これは本質的に、西側諸国がロシア軍との戦いに直接関与していることを明らかにしており、これはとりわけウクライナ軍の兵士不足の結果であるだけでなく、ウクライナの代理戦争での敗北が与える大きな影響も明らかにしている。
フランスのウクライナ戦争への直接関与の可能性
リッター氏は、これは NATO の対ロシア代理戦争へのフランスの秘密裏の直接関与を暴露する可能性があると述べた。
「もし彼らがウクライナ側のために戦っているのであれば、国籍が何であれ、彼らは今や正当な標的となる」とリッター氏は指摘した。
このアメリカの専門家は、攻撃の 2つの主要な側面に焦点を当てた。
同氏は、これはロシア軍が外国人傭兵とウクライナ人兵士をもはや区別していないことを示していると述べた。
「ロシアは、ウクライナ軍のために戦っている外国人傭兵の排除に何のためらいも示していない」と同氏は述べた。
また、フランス軍がウクライナとロシアの紛争に直接関与する可能性があるという興味深い可能性も浮上している。
「少なくとも彼らのうちの何人かは傭兵ではなく、実際にはフランス政府の命令でウクライナにいたフランスの軍人だった。そして今、彼らは死亡した」とリッター氏は語った。
ロシアは態度を硬化させている
リッター氏によると、ロシア諜報機関はフランス軍がハリコフの特定の場所にいることを知っていたという。
「これは(ハリコフの外国人部隊の建物への攻撃について)ロシア政府が決定を下したことを示している。今やウクライナ側にいる全員が標的だ」と同氏は強調した。
より広範な結論は、ロシアが現在、ウクライナ軍を殲滅する「最終段階」にあることは明らかだということになるだろう。
「これは、ウクライナ軍、外国人傭兵、そしてウクライナ領内の NATO 加盟国全員が標的となることを意味する」とリッター氏は強調した。
この攻撃は、北米とヨーロッパからの傭兵の波がいわゆるウクライナ外人部隊に加わり、2022年2月に激化したウクライナ紛争の変化を示すものだ。
多大な経済的利益を約束していた彼らは、外国人傭兵が標的になるというロシアの警告にはほとんど耳を貸さなかった。