2024年も出生率低下は継続中
最近はどうもスウェーデン関係の報道に目が行くのですが、少し前には、「スウェーデンの女子高生の 4分の 1が体調不良」という報道から考えるいろいろなことについて書きました。
(記事)「スウェーデンの女子高生の4人に1人が体調不良」という報道から見える世界的な「若年層の機能不全化」の進行と「弱い個体の死」
In Deep 2024年5月24日
この報道のあった翌日には、「スウェーデンで、注意欠陥・多動症(ADHD)の子どもの数が爆発的に増加している」ことが報じられていました(翻訳記事)。
何が起きているのかなとは思いますが、スウェーデンだけではないですけれど、何となく世界全体が妙な感じです。
最近、スウェーデンの出生率が「過去 300年で最低に達した」ことを報じている記事を見ました。
この「 300年で」というのは、300年前の 1749年にスウェーデンで出生率の記録が開始されたということで、「統計開始以来の最低」ということを意味します。
以下のような記事でした。
スウェーデンの出生率が過去300年で最低に
Sweden reports lowest birthrate in nearly 300 years
aa.com.tr 2025/03/24
世界で最も幸福な国の一つであるスウェーデンの新生児数が、出生率の記録を開始した1749年以来最低となった。
スウェーデンは今週初めに発表された世界幸福度報告書で第 4位となったにもかかわらず、2010年以降、自国のスウェーデン女性と外国生まれのスウェーデン女性の双方で幸福度が下降傾向にある。
スウェーデンの女性は現在、平均 1.45人の子供を出産しており、これは 1749年に調査が始まって以来、最低の数字だ。
「 2024年に入っても、曲線は引き続き下降傾向にあります」とスウェーデン政府統計局の人口統計学者グアダルーペ・アンダーソン氏は声明で述べた。
アンダーソン氏は、昨年の新生児数は 2003年以来最低となり、女性 1人当たりの出生児数もスウェーデンで過去最低を記録したと述べた。
そしてスウェーデンの人口数そのものが新たな最低水準に向かっているようだ。1月には、出生数が最も少なかった 2023年の初めよりも出生数が少なかった。
出生児数で見ると、最も出産が減少したのはスウェーデン南部のマルメだった。
スウェーデンの女性たちの中には、親になることをためらっている人々が多いようだ。そのほとんどは、世界の情勢や不安定さを理由に挙げている。
「子どもたちは、これからどのように暮らすのでしょうか?社会はどうなるのでしょうか?」とスウェーデン人のサンナ・タヤリさんは SVT 放送に語った。
2023年には、出生児数が 40人未満だったスウェーデンの自治体は 26あった。最も少なかったのは北部のドロテア自治体で、出生児数はわずか 8人だった。
このため、スウェーデンでは幼稚園が閉鎖を余儀なくされていることはすでに明らかとなっている。長期的には、より少ない若者たちが、より多くの高齢者人口を支えることにならざるを得ないだろう。
ここまでです。
幼稚園の閉鎖について書かれていますが、これは少子化の進む国ではどこも同じ傾向のようです。
韓国では、2023年までの 5年間で 10,000カ所近くの保育園が廃業したと報じられています。
中国でも、急激な幼児数の減少により(一人っ子政策をしていた頃より深刻な減少)幼稚園児が急激に減少していることが報じられています。
なお、スウェーデンの出生数の減少傾向は過去 150年くらい続いていたことがデータでわかります。以下は 2020年までのものです。
20世紀の後半くらいまでに、最高のときより 3分の1ほどまで落ち込んだ出生数が、その後 2023年などになり、「さらに加速して出生数が落ちた」ようです。
今後の出生率に関しても、たとえば先ほどの「女子高生の 4人に 1人が体調不良」というような若い女性たちのメンタルの状況では、なかなか出生数が上昇していくという感じは見られません。
結果として、福祉国家としての「福祉」に問題が生じる可能性もあり、そして、若者たちは現在よりさらに福祉のための重い負担を担うことになりかねないのかもしれません。
以前、「福祉国家スウェーデンの福祉が崩壊するとき」という記事を書いたことがありますが、出生率の問題からも、今後 10年内くらいには複雑な問題が表面化しそうです。
もちろん、出生に関しては日本のほうがさらに状況が悪いわけですけれど…。