ミツバチの受粉と植物の「電場」の相互作用を突きとめた論文
前回、以下の記事で、元 LNP/RNA バイオテクノロジーデザイナーの方の投稿を取り上げました。
(記事)脂質ナノ粒子 / RNAバイオテクノロジーの元設計者の方の「有害事象の根本」に関する投稿全文
地球の記録 2023年12月15日
そこでは、まず、
「脂質ナノ粒子の電荷」
の体内での相互作用について述べられています。
たとえば、以下のように書かれています。
> LNP (※ 脂質ナノ粒子)は電荷を持ちます。中性の電荷、正電荷(+)または負電荷(-)を持つことができます。
>
> RNA と DNA は負の電荷(-)を持っています。イオン化可能な脂質は正電荷(+)を持っています。
これらの脂質ナノ粒子の「電荷の変化」が、身体に対してさまざまな悪影響を与えることについて主に書かれていたものです。
その後、ジャンルとしては全然関係ないことですが、
「肥料や農薬などの化学物質は、植物の電場を変化させ、それによりミツバチの受粉行動が止まる」
という論文について説明していた記事のことを知りました。
読者様から教えていただいたものです。
その記事をご紹介させていただこうと思うのですが、それにしても私は、この、
・電場
とか、
・電荷
というものについて呆れるほどよく知らないのですが、基本の部分を記しておきます。
電場は、電荷に力を及ぼす空間の性質の一つ。
ここに「電荷」という言葉も出てきます。
電荷は、粒子や物体が帯びている電気の量であり、また電磁場から受ける作用の大きさを規定する物理量である。 荷電ともいう。計量法体系においては電気量と呼ぶ。
なるほど、電荷とは「電気の量」のことで、その「電荷に力を及ぼす空間の性質の一つ」が電場だと。
電場は英語ですと、エレクトリック・フィールド(electric field)で、むしろこちらのほうがわかりやすい感じです。電荷は、エレクトリック・チャージ(electric charge)です。
ともかく、植物が化学物質(主に化学肥料や農薬)に曝露すると、
「植物の電場が変化」
して、それがミツバチを遠ざけると。
ご紹介する記事のハイライトは、以下のようなものです。
・新しい研究は、植物の電気生理学における化学物質による変化が花の電場の変化につながることを初めて示した。
・化学物質は、花の電場を変化させるイオン束、本質的には電流を生成する。
植物には、
「ミツバチを引き寄せて摂食と受粉を促進するさまざまな合図」
があり、その合図の中のひとつに「電場」があるのだそう。
しかし、化学農薬の散布などにより、電場が変化すると、
「その合図が出なくなり、ミツバチなどの花粉媒介者の行動が変化する(電場が変化している間はミツバチが近づかない)」
という可能性を研究で示したもののようです。
前回の記事で、「身体各部への電荷の影響」というのはものすごく大きいことを知りましたが、(注入された脂質ナノ粒子などにより)電荷が変化すると、当然、「身体の電場も変化する」ということなのでしょうか。
生物の相互作用のメカニズムというのは複雑なものですねえ。
ともかく、現状の化学農法ではミツバチの受粉活動が低下し続けるだけであるという可能性はあるようです。
記事をご紹介します。
科学者たちは、肥料が花の電場を変化させ、受粉を行うミツバチを阻止する可能性があると述べている
Scientists Say Fertilizers Can Alter Flowers’ Electric Fields, Deterring Pollinating Bees
popularmechanics.com 2022/11/09
肥料に含まれる化学物質が花の周りの電場に影響を与え、ミツバチが近寄らなくなる原因となる。
発表された研究によると、受粉ミツバチは化学物質が花の周囲の電場に影響を与えるため、肥料や殺虫剤を好まないという。
研究者のエラード・ハンティング氏は、以下のように語る。
「これは、植物の電気生理学における化学物質による変化が、花の電場の変化につながることを示した最初の研究です」
「つまり、化学物質は植物の生理学の変化に変換され、花の周りの物理学的要素が変化し、それがミツバチの行動の変化に変換されるのです」
殺虫剤や肥料からの化学噴霧によって、花の周囲の電場が変化し、これは、曝露後最大 25分間、つまり「かなり長い時間」持続する。
また、肥料はミツバチの視覚や嗅覚には影響を与えないが、飛ぶ昆虫は、化学物質が引き起こす小さくて動的な電場の変化を検出し、区別することができることがわかった。
ハンティング氏は以下のように述べる。
「化学物質が有毒であることはわかっていますが、化学物質が植物と花粉媒介者の直接の相互作用にどのような影響を与えるかについてはほとんどわかっていません」
「花には、ミツバチを引き寄せて摂食と受粉を促進するさまざまな合図があります。たとえば、ミツバチは花の匂いや色などの手がかりを使用しますが、植物を識別するために電場も使用します。したがって、大きな問題は、農薬の散布により花からの合図が歪められ、ミツバチのような花粉媒介者の行動が変化する可能性があるということです」
花へのミツバチの誘引に対する肥料と殺虫剤の「広範な」影響を示すため、研究では 4つの異なる植物種が使用された。
マイナスに帯電した花や、プラスに帯電したミツバチなど、大気中のプラスに帯電したことから生じる静電気の変化は、非木本植物(草)にはさらに大きな影響を与える可能性があると同氏は推測している。
ナノ粒子、排気ガス、ナノプラスチック、ウイルス粒子などの浮遊粒子をさらに加えると、世界中で同様の影響が生じる可能性がある。ハンティング氏によると、電場を利用する生物の種類は多岐にわたる。
研究ではこれを、ボートのモーターが魚の邪魔をしたり、人工光が蛾を混乱させたりするのと同じように、これを「陸上動物の電気感覚を妨害する人為的ノイズ」の最初のケースと呼んでいる。
これらすべてが積み重なって、人間の活動が自然界にどのような悪影響を与えているかをより深く理解することができ、最終的にはより良い解決策につながる可能性がある。
「肥料が生物の物理的環境の認識方法に干渉することで、花粉媒介者の行動に影響を与えるという事実は、人工化学物質がどのように自然環境を乱すかについて新たな視点を提供します」とハンティング氏は言う。
この発見は、企業がより優れた農薬を製造するのに役立つ可能性がある。化学物質に対する植物の反応は、自然のものであるかどうかに関係なく、電場に影響を与える。
「何が起こるかというと、植物は化学物質に対してストレス反応を示すのです」とハンティング氏は言う。
「これにより、イオンである代謝産物が花に運ばれ、このイオン束は本質的に電流になります。これは電界の変化を意味します」
したがって、植物の生理機能に影響を与えない化学物質を設計することが今後の解決策だとハンティング氏は言う。