ヨーロッパ各地で物流が停滞し始めている
ドイツでは、1ヵ月以上にわたり、農業従事者たちによる抗議デモが行われています。主な理由は、政府による農業補助金の削減計画などに対する抗議ですが、他にも、さまざまな理由があるようで、「我慢の限界に達した」ということのようです。
以下は、1月16日の報道で、この時点でもドイツのさまざまな大都市で交通機能などが麻痺し続けていました。
ドイツ全土で農家らが抗議デモ 首都まひ状態、極右支持拡大
ドイツのベルリンで増税や補助金カットに抗議する農家の大規模デモが1週間にわたって続き、首都はほぼまひ状態に陥っている。
ベルリンのブランデンブルク門前の道路は15日、トラックやトラクターで埋め尽くされた。警察によると、農業従事者1万人以上が運輸業界と連携して首都に詰めかけている。ドイツでは全土でほかにも複数のデモが計画されている。
大規模な道路の封鎖はハンブルク、ケルン、ブレーメン、ニュルンベルク、ミュンヘンなど東西の各都市にも及び、それぞれ2000台ものトラクターが集結した。トラクターやトラックの車列は抗議の横断幕を掲げるなどして早朝から道路を封鎖した。
CNN 2024/01/16
そして、1月29日、ついに農家たちは、ドイツ最大の物流の拠点であるハンブルグ港を占拠して「事実上の閉鎖」に持ち込みました。
ハンブルグ港(ハンブルグ・ハーフェン)の場所
Google Map
農家による同様のデモは、ヨーロッパ全体で行われていて、フランスの農家の人たちも、パリへ通じる高速道路を閉鎖、あるいは「道路そのものを破壊する」などの、かなり大きな行動に出ています。
[記事]フランスの農民たちが、道路を封鎖するだけではなく「道路そのものを破壊し始めた」
BDW 2024年1月28日
つまり、ヨーロッパのいろいろな場所で物流の停滞が起きている可能性があるのですが、中東で起きている「紅海の封鎖」をめぐる状況でも、ヨーロッパの食料輸出、特に果実類の輸出が滞っています。
[記事]紅海危機がヨーロッパの果物や野菜の輸出に打撃を与えている
BDW 2024年1月29日
このままヨーロッパでの物流停滞が拡大すれば、あるいは、農家の人々は食料生産者そのものでもあるわけで、デモが長期化した場合、このようところから、予想もしない食料流通危機が起きても不思議ではありません。
ドイツの状況について、新聞ビルトの報道をご紹介します。
農民たちがハンブルク港を占領
Bauern kapern Hamburger Hafen
bild.de 2024/01/29
約 1,500人の農民がハンブルク港と市内中心部全体で交通混乱を引き起こしている
ドイツ最大の港の路上ではもう何も機能していない。ハンザ同盟都市ではすべてが閉鎖されている。
彼らは、「税金と官僚主義の狂気への反対」をモットーに、約 1,500人の農民がトラクターに乗って 5方向からハンブルクのダウンタウンにあるテオドール・ホイス広場への集会を計画していた。
警察は事前に重大な交通障害が発生する可能性があると警告していた。しかしその後、すべてが計画とは異なる結果となった。トラクターとトラックの巨大な列は港に向かって進み、早朝からターミナルへのアクセス道路をブロックしていたのだ。
約 100人の農民たちが予告なしにフィンケンヴェルダーリングを閉鎖し、糞の山を路上に広げ、火の樽に点火した。
高速道路 A7のヴァルタースホーフ出口は、障害物のため両方向とも閉鎖されなければならなかった。警察広報担当者は「多くのトラックが渋滞に巻き込まれており、車も数台ある。地域全体で大規模な交通規制が行われており、コールブランド橋を含む周囲の通りすべてで「非常に緊迫した交通状況が続いている」と述べた。
午前10時48分、警察は会議を解散し、トラクターの運転手にウォルタースホーフ交差点から車両を撤去するよう求めたいとしたが、成功しなかった。
リュヒョー・ダネンベルク在住の農家、ディルク・メンテさん(49)はビルドに次のように語った。
「私たちは自発的に港のポートを閉鎖することに決めました。ここは世界中の食べ物が集まるハブです。ここで何も機能しなくなった場合、それは我が国の政治家にとって明らかなシグナル伝達となるでしょう」
ディルク・メンテさん
そして、連邦政府が計画している自由貿易協定について彼らがどう考えているかを明確に示している。たとえば、適切な量の子羊と牛肉を含むニュージーランドとの協定が計画されている。「(自由貿易協定が締結されれば)本当に大量の食品がドイツに輸入されることになるでしょう」とメンテ氏は言う。
彼らが、この港の封鎖で引き起こそうとしていることは、物資をコンテナ船に運ぶことができなくし、配送に極度の遅れを生じさせることだ。
港湾・物流団体「HHLA」はビルドに対し、「現在、デモの影響でハンブルク港周辺地域で交通渋滞と遅れが発生しており、一部のトラックが現在 HHLA ターミナルへの到着が遅れていることを意味する」と認めた。
今年初めからドイツ全土の農家が、農業政策に反対する抗議活動を行っている。農民たちの怒りは主に減税廃止に向けられている。しかし実際には、長年にわたって多くのフラストレーションが蓄積されてきた。
農民ルイ・シュレンシュテットさん(21)は、現政権ではドイツ農業に未来はないとみている。
ルイ・シュレンシュテットさん
農民ダーク・メンテさんは以下のように述べる。
「政治家は私たちに敵対するのではなく、私たちと協力しなければなりません。官僚制は廃止されなければなりません。私たちは生き残るために戦い、子供たちのために戦います。私は農場を経営する 4代目です。農業政策が現在の計画のままなら、私たちは終わりです」