2016年6月14日の英国テレグラフより
英国に、コナガという蛾が爆発的に流入しており、このままでは英国の農業に深刻な被害を与える可能性があることが、ほぼすべての英国メディアで報じられていました。
過去数週間で、「数千万匹」が英国に飛来しているのだとか。
しかし、どうして蛾の幼虫をそのように警戒しなければならないかといいますと、このコナガという蛾は今では多くが殺虫剤に対しての耐性を持っていて、つまり殺虫剤では駆除できない可能性が高いのです。
コナガというのは、下のように分類されています。
コナガ - Wikipedia
コナガはチョウ目に属する昆虫の一種。原産地は西アジアといわれ、現在は熱帯から寒帯まで全世界的に広範囲に分布する。アブラナ科植物を食害し、農業上、重要害虫である。
農業上、重要害虫であり、防除は必須である。有機リン剤、合成ピレスロイド剤、BT剤、IGR剤などチョウ目対象の薬剤で防除されているが、いずれの系統の薬剤に対しても、抵抗性を獲得した個体が確認されている。特にBT剤については、抵抗性が確認された最初の害虫である。
冒頭のテレグラフのの報道でも、英国に飛来しているコナガが殺虫剤に耐性を持っていることが記されています。
Sponsored Link
コナガの幼虫
・コナガ
コナガがつきやすい野菜は、コナガの対策と駆除というページによりますと、
カブ・カリフラワー・キャベツ・コールラビ・コマツナ・ダイコン・チンゲンサイ・漬け菜・ハクサイ・ブロッコリー・ミズナ・メキャベツ・ルッコラ・クレソン
となっていまして、八百屋さんや野菜売り場に並んでいる「葉もの」のかなりの部分を占めます。
これらが壊滅的な危機にさらされているというのですから、思っている以上に事態は深刻かもしれません。
同じ英国の BBC では「聖書的な」(Bibilical)という単語を使った見出しで報道していました。
2016年6月14日の英国BBCより
・BBC
BBC によれば、コナガに対して効果のある殺虫剤もあるにはあるらしいのですが、大きな問題は、それらを使うと、コナガの天敵でもある益虫であるスズメバチやテントウムシも殺してしまう可能性があることだそうです。
ちなみに、この数週間で英国に飛来したコナガの数は、通常の1年間すべての期間に観測されるコナガの「 100倍」になっているそうで、さらに流入は続いているということで、事態が深刻化する可能性が指摘されています。
イナゴによる作物の壊滅的被害は、たびたび世界各地で起こりますが、蛾による壊滅的被害というものもあるのですね。
このコナガの問題の、
「殺虫剤に耐性を持った」
という部分は、アメリカで数年前に登場して以来、日本を含めた世界各地で見られるようになった「 DDT の効かないスーパーナンキンムシ」とも似たような雰囲気もあります。
このことは、かつて、
・アメリカを侵略している南京虫は DDT にも耐えられるスーパー南京虫(前編)
In Deep 2010/10/03
という記事に書いたことがあります。
抗生物質が効かない耐性菌などもそうですが、これらはすべて、人間が文明の中で薬や殺虫剤を使うことにより「地球上に存在していなかった強い虫や菌を作りだしてしまった」ということでもあり、大きな人災であるのだと思います。
もっと強い殺虫剤を作れば、さらに向こうも強くなって戻ってくる。
それが自然に生きる生命たちの進化の仕方のようです。