
クアラルンプールの政府診療所で、医療従事者を描いた壁画。scmp.com
(サイケデリックな医療イラストではあります)
香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポストが、
「マレーシアの若者の間で HIV が 2021年から急激に増加した」
という記事を掲載していました。
欧米では、2021年以来、さまざまな性感染症が急速な増加を示していることを以前取り上げたことがあります。
(記事)アメリカの「性感染症」の増加が制御不能に。梅毒患者数は過去70年で最大
地球の記録 2022年9月24日
(記事)カナダで「梅毒に感染して生まれる赤ちゃん」が急増し、4年間で1200%増に
地球の記録 2023年3月16日
(記事)ヨーロッパ全体で性感染症が「憂慮すべきペース」で急増
BDW 2024年3月8日
それぞれ、以前から緩慢に増え続けていたのではなく、「 2021年から急激に増えた」ことがわかります。たとえば、以下は、ワシントン州の妊婦の梅毒患者の数の推移です。
日本でも若い世代の梅毒患者が増え続けていることが報じられていましたが(女性は10年で40倍の増加)、「東南アジアとかはどうなっているのだろうな」とは思っていました。
たとえば、今回ご紹介する記事にあるマレーシアは、2回目までのコロナワクチン接種率だけでいえば、日本と同等の高レベルです。
日本とマレーシアのワクチン接種率の比較

ourworldindata.org
私自身は、2021年からの世界的な性感染症の拡大は「免疫低下と関係がある」と思っていますので、こういう国はどのようになっているのだろうなとは思っていたのですが、やはり性感染症、しかもマレーシアでは「 HIV 」が増加していると。
HIV は一種致死的な感染症であるわけで、事態はより深刻であるのかもしれませんが、日本では HIV のほうはどのようになっているのですかね。
サウス・チャイナ・モーニング・ポストの記事をご紹介します。ちなみに、記事は途中から「曝露前予防法(PrEP)」だとかいうものの効果を謳う内容となっていまして、何だか軸点がずれていくのですが、一応全文翻訳させていただきます。
マレーシアでは2021年と比較して2023年に若者のHIV感染が30%増加したと記録
Malaysia records 30% increase in HIV infections in young people in 2023 compared to 2021
South China Morning Post 2024/07/06
マレーシアの大学生の間で HIV 感染が増加しており、保健アナリストたちは若者を対象とした HIV 啓発キャンペーンの強化と予防措置へのアクセスの容易化を促している。
高等教育大臣は 7月3日、昨年は 18歳から 25歳までの学生約 244人が感染し、2021年から 31%増加したと述べ、この年齢層全体の感染は昨年の新規 HIV 症例全体の約 7%を占めた。
マレーシアが国連 HIV/エイズ合同計画に提出した 2023年報告書によると、2022年には東南アジアの国で 8万6000人が HIV とともに生きており、80%が自分の状態を認識しているという。
マレーシアは昨年1月、曝露前予防法(PrEP)を一般市民に提供する試験プログラムを開始した。
米国疾病対策センター によると、PrEP を毎日服用すれば、性行為による HIV 感染の可能性を 90%以上、薬物注射による感染の可能性を 70%以上低減できるという 。この取り組み以前は、PrEP は民間のクリニックでのみ利用可能だった。今年3月現在、3,400人以上がこのプログラムの下で薬物療法を受けている。
マレーシアの医療通信社コードブルーは 5月、このプログラムに参加した人々の HIV 感染率はわずか 0.2%だったと報じた。
「これは、リスクの高い個人の 99.8%で HIV を予防することに成功したことを意味します。これは PrEP が非常に効果的であることを示しています」と保健省疾病対策部長アニタ・スレイマンはコードブルーの報告書で述べた。
HIV/エイズ擁護団体アドボケート・アジアを率いるラメシュ・バディベロー氏は、このプログラムを「素晴らしい取り組み」と呼んだが、学生たちは偏見のために政府の施設に行くことを躊躇することが多いと警告した。
「学生たちは、それが地域密着型の医療サービス提供者であること、アクセスしやすく、迅速であることを望んでいます」と、同氏は語った。
性健康コミュニティクリニックの運営経験を持つラメシュ氏は、PrEP は民間クリニックでますます利用できるようになってきているにもかかわらず、依然として高価であると述べた。
「民間クリニックでのPrEPの価格は 120~400リンギット(約 4000円〜 14000円)で、ほとんどの高等教育機関の学生にとっては高価です」と同氏は述べた。
フィリピンのHIV症例は過去10年間で劇的に増加
2022年には、高等教育機関の学生が HIV 感染の 4分の3以上を占めたが、保健省の報告書によると、15~24歳のマレーシア人のうち、HIV感染のリスクを正確に理解しているのはわずか 10%だった。
「これは、マレーシアの若者の HIV リテラシーを高めることを目的とした、的を絞った教育的取り組みが緊急に必要であることを強調している」と報告書は述べている。
マレーシアの HIV 感染は 2000年代初頭にピークを迎え、その前の 10年間に急激に減少した後、過去 10年間は横ばいとなり、2030年までに HIV とエイズを根絶するというマレーシアの目標を阻んでいる。
医療専門家によると、社会的偏見と性知識の欠如が過去 10年間の感染者数の減少の鈍化の一因となっており、性行為による感染が薬物乱用を上回り主なリスク要因となっている。
イスラム教徒が大多数を占める保守的な国であるマレーシアでは、特に未婚のカップルや同性愛関係にある人々に対する偏見が医療分野で報告されている。
マラヤ大学の医療コンサルタント、ティー・イン・チュー博士が 2023年に実施した調査では、調査に参加した 568人のマレーシア人医師の半数以上が HIV 感染者に対する差別的態度を示した。
性教育は、基礎生物学を超えてこの話題を広げるよう繰り返し求められているにもかかわらず、マレーシアの学校では依然としてタブーとなっている。
ナンシー・シュクリ女性・家族・地域開発大臣は昨年6月、性的嫌がらせや性的虐待について学生を教育するため、学校での包括的な性教育を提案し、報告された虐待事件の多くは家族が関与していることが多いと指摘した。
「私たちは『セックス』という言葉になるといつも違った考え方をするので、もっとオープンなアプローチを取らなければなりません」とシュクリ大臣は先月、地元紙ニュー・ストレーツ・タイムズに語った。
