
メンタルヘルスの津波
今年の 9月に、戦争に参加したイスラエル兵たちにメンタルヘルスの問題が拡大していることを以下の記事で取り上げたことがあります。
・「人間以下」を駆逐し続ける中で「人間として」の心が疲弊し続けるイスラエル軍兵士たち
In Deep 2025年9月4日
また、戦闘への参加を拒否するイスラエル兵たちが増えていることや、兵士の自殺数が過去最高になっていることにもふれています。
しかし、最近の報道では、兵士や元兵士ではなく、
「イスラエルの一般の人たちでもメンタルヘルスの状況が著しく悪化している」
ことが示されていました。
今回ご紹介する記事の中には、
・うつ病と不安障害の診断数が2倍に
・PTSD(心的外傷後ストレス障害)診断数が毎月 70%増加している
・一般人口の 5人に 1人は、精神疾患により重度の機能障害を抱えている
などの数字が出されていて、戦争による精神的な影響が、兵士を超えて一般のイスラエル国民の間にも広がっていることが数字でわかります。
やはり戦争は、特にある程度長期になると、多くの人々の精神に強く影響するもののようです。
ということは、ロシアやウクライナでも同様の問題が生じている可能性があります。
ロシアもウクライナも、自国に不利になる内容の報道はしませんので、実情はわからないですが。
イスラエルのメンタルヘルスの問題についての報道です。
イスラエルは2年間の戦争を経て「メンタルヘルスの津波」に直面していると報告書が指摘
Israel faces ‘mental health tsunami’ after two years of war, report finds
middleeasteye.net 2025/11/22
うつ病、不安、PTSD、依存症が急増しており、専門家は、政府が早急に対策を講じなければ長期的な社会的影響が生じると警告している。

2025年11月20日、ヨルダン川西岸ナブルスに陣取るイスラエル兵
イスラエルのイェディオト・アハロノス紙によると、イスラエルは「メンタルヘルスの津波」に直面しており、依存症率が急上昇し、家族やコミュニティが崩壊する中、200万人が支援を必要としている。
同報道機関は金曜日 (11月21日)に発表した詳細なレポートの中で、メンタルヘルスの専門家たちが 2023年10月7日以降、支援を必要とする人が急増していると警鐘を鳴らしていると伝えた。
一方、セラピストやサポートサービスの深刻な不足があり、専門家はこれが壊滅的な結果をもたらす可能性があると警告している。
先週、8つの主要なメンタルヘルス団体の連合が政府に緊急警告を発し、イスラエルの状況を「その深刻さと範囲において前例のない精神疾患の発生」と表現した。
団体はこの危機を「壊滅的」と呼び、政府の即時介入を要求した。
同連合によれば、イスラエル社会には広範囲にわたる心理的苦痛の明らかな兆候が見られるという。
長期間にわたる紛争とトラウマにより、多くの人々がうつ病、不安、侵入思考 (自分の意思に反して突然頭に浮かぶ、望まない思考やイメージ)、疲労に苦しんでいる。
家族や地域社会は深刻な影響を受けており、団体は危機はまだピークに達していないと警告している。
彼らは「深く長期にわたる集団的トラウマ」と、国民の安全と信頼感の崩壊が進み、それが将来の世代に影響を及ぼす可能性が高いと警告している。
「イスラエル社会の心理状態と幸福は、かつて経験したことのないほどの最低水準にある」と連合は述べた。
「衝撃的な」数字
アハロノス紙が報告したデータは、全国的に精神衛生上の問題が急増していることを示している。
2024年のうつ病と不安障害の診断数は 2013年の 2倍となった。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断数は 2023年10月から 2024年末まで毎月 70%増加し、新規患者数は 23,600人となった。
イスラエル人のほぼ半数が現在、持続的な悲嘆の症状を訴えている。
メンタルヘルスのホットラインへの電話は 6倍に増加し、精神科薬の使用は倍増した。戦争中、睡眠障害は 19%増加した。
イスラエルの複数の研究所による調査によると、10月7日の攻撃の影響を受けた人々の 50%が、現在もなお苦境に立たされていることが明らかになった。一般人口の 5人に 1人は、精神疾患により重度の機能障害を抱えていた。
イスラエル保健省のデータによれば、10月7日以降セラピーセッションは 25%増加した。
短期心理療法の件数は 2022年の 3,500件から 2024年には 471%増加し、20,000件に達した。
しかし、これらの数字は提供された治療のみを反映したものであり、連合団体は、実際の状況ははるかに深刻であると主張している。
ハイファ大学のメラヴ・ロス教授は、クリニックでは子どもたちのうつ病、不安、依存症、夫婦間の問題、退行行動の急増が報告されていると語った。
ロス氏によると、現在 4人に1人が依存症のリスクにさらされているという。2018年には 10人に1人だった。
「この増加は恐ろしい」と、ロス氏は述べている。
政府の対応
イスラエル精神医学協会の会長、マリーナ・クプチク博士は、リハビリテーションへの緊急の投資が必要だと警告した。
「もし我々が国の精神的リハビリテーションに投資しなければ、2、3年後には労働日数の喪失、家族や地域社会の安定、職業機能の低下といった形で、より大きな代償を払うことになるでしょう」
イスラエル保健省は、心理学者の数を倍増し、給与を改善し、精神科病棟のグレードアップを図り、在宅および地域サービスの拡大を含む国家救済計画を発表した。
この計画には 17億シェケル(約 800億円)の費用がかかると見積もられている。
上級臨床医は、改革は広範囲にわたる必要があると強調している。
教育心理学者でイスラエル心理学者協会会長のヨラム・シュリアー氏は、資格を有する臨床医の研修期間が 8年であるのに対し、研修期間がわずか 3か月の研修生「メンタルヘルスアシスタント」に依存していることを批判した。
イラナ・ラック博士は、システムが圧倒されていると述べた。
「出血している傷口に包帯を巻くことができないような状況なのです」と彼女は言った。
「メンタルヘルス制度は根本から再構築されなければなりません」