
11月14日、ヨルダン川西岸地区で、イスラエル人入植者による攻撃を受けたモスクの被害を見つめるパレスチナの子どもたち。MEM
不可逆的なダメージを負う子どもたちが急増
前回の記事も、イスラエル関係のもので、「イスラエルを「メンタルヘルスの津波」が襲っている」というものでしたが、今回は、ガザで「深刻な聴覚障害が拡大している」という報道です。
考えみれば、あれだけガザ市民が生活している近くに次々と空爆や爆弾(特に、輸送車に爆発物を積み込み、遠隔操作で爆発させる車両)による爆発が起きてきたわけで、聴覚に問題がある人が増えるのも無理はありません。
停戦後、栄養状態のほうはどうなっているのかわからないですが、ガザ地区に対して、イスラエルが行ってきたことは、
「特に小さな子どもに不可逆的な後遺症を残すもの」
でした。
極度な栄養失調状態を経験した子どものダメージや成長の遅れは長く続くわけで、また、言葉を覚え始める頃のような小さなときに聴覚を失うと、やはり、その後の言語発達などに大きな影響を与えます。
そういう意味では、本当の意味でのガザの再建というのは非常に難しいことだと思うのですが、しかし、イスラエルは停戦後も何度も空爆などを行っており、停戦発効(2025年10月11日)以来のパレスチナ人死者数は 300人以上に上っています。多くが停戦違反と見られますが、イスラエルの容赦ない殲滅活動は続いています。
いまだにガザへの物資の搬入もイスラエル軍によりブロックされており、絶望的な状況が続いています。
聴覚障害の人たちの拡大についてのミドル・イースト・アイ紙の報道をご紹介します。
ガザ:イスラエルの爆撃で数千人が聴覚障害に。しかし、治療は阻止されている
Gaza: Israeli blasts deafen thousands as treatment is blocked
middleeasteye.net 2025/11/22
爆発によりガザ全域で聴覚障害が拡大しており、そして医療も届いていない

ガザ市のアル・シーファ病院で、イスラエル軍による難民キャンプへの攻撃で死亡したパレスチナ人の葬儀。
ガザ地区のアル・ワファ医療リハビリテーション病院で、パレスチナ人の少年 2人が並んで横たわっている。
母親のアヤ・アブ・アウダさんは子どもたちに優しく話しかけるが、どちらの子どもも反応しない。
5歳のエリアス・アブ・アルジビーンくんと 8歳のイスマイル・アブ・アルジビーンくんの兄弟は、8月31日にガザ市テル・アル・ハワ地区の避難キャンプでイスラエル軍の爆撃により負傷した。
この攻撃により、エリアスくんは完全に耳が聞こえなくなり、イスマイルくんは重度の聴覚障害を患った。
ちょうど1年前、アブ・アウダさんはイスラエルのミサイルでガザ北部の自宅が破壊され、夫が殺害された後、そこから逃げていた。
「私と子どもたちは最悪の状況を乗り越えたと思っていました」と彼女はミドル・イースト・アイ紙に語った。
「避難した後も、このような苦しみが私たちに付きまとうとは思いもしませんでした」
彼女が子どもたちと寝ていた仮設テントの中では、爆弾の破片が彼らの体を切り裂いた。
8歳のイスマイルくんは片目を失い、片腕と片足が動かなくなり、聴力もほとんど失った。
数週間後、母親は息子が自分の声に反応しなくなったことに気づいた。
脳幹聴力検査の結果、彼は右耳の聴力が 50%、左耳の聴力が 71%失われていることが判明した。
5歳のエリアスくんの容態はさらに深刻だ。
「エリアスは 18日間昏睡状態でした。目が覚めた時には、何も聞こえず、何も見えず、理解できず、動くこともできませんでした」と母親のアブ・アウダさんは声を詰まらせながら語った。
医師は彼の脳の周りに膿が溜まっていることを発見した。手術で膿を取り除き、限られた感覚を取り戻すことができた。
エリアスくんは現在、片方の体の麻痺、重度の言語・視覚障害、そして片方の耳の完全な聴力喪失を抱えて生活している。
もう片方の耳の治療が必要だが、イスラエルによる封鎖と病院の組織的な破壊のため、ガザ地区では現在、治療は受けられない。
「ほとんどの場合、エリアスは叫んで訴えます。私はこの子が何を求めているのか推測しようとしますが、たいていうまくいきません」とアブ・アウダさんは続けた。
「息子二人のために補聴器を探し回ったのですが、まったく見つかりませんでした」
パレスチナ保健省によると、先月の停戦合意後も、イスラエルの封鎖によりガザ地区の医療システムは危機的状況が続いており、病院の約 50%しか部分的にしか機能しておらず、医薬品や機器が慢性的に不足し、必須医薬品 229種がまったく入手できないという。
「その音は耳をつんざくような音だった」
サナア・バールさんは避難中にイスラエルの空爆や爆発物を積んだ車両にさらされ、聴覚障害にも苦しんでいる。
母親でもある 40歳の彼女は、2023年11月に妹とともに自宅から逃げ出し、ガザ市南西部のアルクドス病院近くに避難したと語った。
「突然、F-16ジェット機が通りを絨毯爆撃し始めたのです」と彼女は思い出した。
「赤い炎が部屋に入ってきた。その音は私の耳を突き破り、聴力の一部を奪いました」
彼女は治療をしてくれる場所を探したが、聴覚学の専門家のほぼ全員がガザ南部に避難しており、診療所もほとんどが破壊されていた。
「何とか耐えて生きようとしました」と彼女は付け加えた。「でも、爆撃は止まりませんでした」
数か月後、彼女が同じ場所に戻ったとき、近くで爆発車両が爆発した。
「気がつくと、私は 3メートルも投げ出されていました。ドアが崩れ落ちて、頭から耳がもぎ取られたような衝撃でした」と彼女は語った。
バールさんは現在、激しい痛み、両耳の絶え間ない耳鳴り、そして深い精神的苦痛を抱えて暮らしている。
「娘たちが話しかけても、聞こえないんです。娘たちは近くに座って声を張り上げないといけないんです」と彼女は付け加えた。
爆発物搭載車両は、退役した装甲兵員輸送車(APC)に爆発物を積み込み、イスラエル軍によって遠隔操作されている。
これらの爆弾は爆発する前に人口密集都市部に打ち込まれ、一度に約 20軒の家屋を破壊し、民間人に深刻な死傷者を出すほどの威力の爆発を起こす。
ガザではこれらは一般に「ブービートラップ付きロボット」と呼ばれ、イスラエル軍はこれを「自爆装甲兵員輸送車」と呼んでいる。
「重度の聴覚障害」
保健省の聴覚学専門家ユスラ・バジル氏は、ミサイルや爆発車両による数か月に及ぶ激しい爆撃が国民全体に「甚大な聴覚障害」を引き起こしたことを認めている。
「これらの爆発は多くの場合、神経細胞と聴神経を破壊します」とバジル氏は語った。
「他の場合では、鼓膜が破裂したり中耳骨が損傷したりして、持続的な耳鳴りを伴う部分的または完全な聴力喪失につながります」
バジル氏は、イスラエルによる2年間の大量虐殺中に負傷した 10人のうち 4人は何らかの形の聴覚障害を伴っていると推定している。
イスラエルは 2年間で約 7万人のパレスチナ人を殺害し、17万人以上を負傷させた。
バジル氏は、イスラエルによるリハビリセンターの破壊や訓練を受けた職員の追放や殺害により、医療機器や聴覚検査機器が深刻に不足していると説明した。
「ガザ地区には、人工内耳、補聴器、特殊電池、聴覚リハビリテーション用の医療機器など、重度の難聴に対するあらゆる治療法が不足しています。イスラエルが国境検問所を閉鎖しているため、これらはすべてガザ地区への立ち入りが禁止されているのです」と彼女は述べた。
アトファルナ聴覚障害児協会が 2023年から 2025年までのイスラエル戦争期間を対象に実施した現地調査で、イスラエルの F-16攻撃と爆発車両による爆発の直接的な結果として、3万5000人の子どもと大人が一時的、部分的、または永久的に聴力を失ったことが判明した。
「これは戦前の 3倍に相当します」とアトファルナ協会のファディ・アベド理事長は語った。
「緊急治療を受けなければ、部分的または一時的な難聴の多くの症例が恒久的なものになる可能性があります。特に避難所の過密状態、基礎医療の不足、栄養不良、そして中耳炎を含む感染症の蔓延により、特に子どもたちの間で聴覚障害が悪化しています」
最もリスクが高いのは 2歳未満の乳幼児で、次いで 12歳未満の子どもがリスクが高いと彼は述べた。
「その年齢での聴力は、発話と言語の発達に不可欠です。聴力を失うと、生涯にわたるコミュニケーションと発達の障壁が生じます」
「イスラエルによる聴覚障害者を支援する施設の封鎖と破壊は、危機をさらに深刻化させました」
アトファルナ聴覚障害児協会自体も破壊され、ガザ地区の障害者の 83%が車椅子、松葉杖、補聴器など、移動や聴覚に必要な用具を失ってしまった。
「彼らはもはや心理社会的支援、教育、その他の基本的なサービスを受けることができません」とアベド理事長は説明した。
彼の組織は戦争が始まって以来、国際機関から補聴器を確保しようと努めてきた。
「しかしイスラエルはほぼすべてを遮断しており、最小限の量しか許可していないのです」