何が「現実の壁」となり得るのか
アメリカの新たな保健福祉長官となったロバート・ケネディ・ジュニア氏 (以下、RFKジュニア氏)による、定期ワクチン接種の推奨などを含めたアメリカの保健福祉政策に対しての改善の希望が世間では広がっています。
保健福祉長官就任後に FOX ニュースに出演した RFKジュニア氏は、以下のように述べて、米 CDC の公式ワクチン有害事象報告である VAERS のシステム改善について、おおむね以下のように述べていました。X に動画があります。
2025年2月15日の FOX テレビより
ワクチンによる傷害の実際の数を反映するために CDC のワクチン有害事象報告システム VAERS を「すぐに」修正することを約束します。
現在、 VAERS によって捕捉されているワクチンによる傷害は全体の 1% 未満なのです。
ここで RFKジュニア氏が言う、
> VAERS によって捕捉されているワクチン傷害は全体の 1% 未満
というのは、これは本当で、4年前の In Deep で、その調査について記したことがあります。
これは、アメリカ保健社会福祉省の医療研究品質局が、ハーバード大学ピルグリム・ヘルスケアという組織に調査を依頼したもので、以下は、正式な連邦調査の最終報告書からの抜粋です。
ワクチン有害事象システムの調査の結果
2006年6月から 2009年10月にかけて 715,000人の患者について予備データが収集され、376,452人に 140万回のワクチン(45種類のワクチン)が投与された。
これらの用量のうち、35,570の可能な反応(ワクチン接種の 2.6%)が特定された。これは、1か月あたり平均 890の事象発生で、臨床医 1人あたり平均 1.3回の事象発生となる。
さらに、CDC の VAERS(有害事象報告システム)の調査員がパネルに参加し、予防的で自動化された有害事象報告を使用するシステムに対する臨床医師、電子 健康記録ベンダー、製薬業界、および FDA の視点を調査した。
その結果、薬物やワクチンによる有害事象は、過少報告されていた。
外来患者の 25%が薬物の有害事象を経験しているが、すべての薬物の有害事象の 0.3%未満だけが FDA に報告されている。重篤な有害事象でも、報告されていたのは、事象の 1〜 13%だった。
同様に、ワクチンの有害事象では、報告されていたのは全体の 1%未満だった。
RFKジュニア氏は、「このシステムを改善する」と述べていたわけで、それはよいことだと思いますが、「しかしなあ」と思わざるを得ない部分もあるのです。特にコロナワクチンのようなタイプのワクチンでは。
私は、アメリカでコロナワクチン接種が始まって以来、しばらくの間、この CDC のワクチン有害事象報告 VAERS のデータを毎週記録して、地球の記録の記事にしていました。
以下はひとつの例ですが、毎週この体裁で投稿し続けました。
・[定期]アメリカの7月23日までのワクチン接種後の有害事象報告は 50万件超、死亡例は 1万1940件。12歳から 17歳の有害事象報告が 1万件を超える
地球の記録 2021年7月31日
かなり続けたのですが、しばらくして、この更新をやめました。
いつ頃、更新をやめたのかは、はっきりとわからないですが、この記録には「果てしない限界がある」ことに気づき始めたからです。
たとえば、コロナワクチンあるいは、他にも mRNA タイプや DNA 混入が認められているタイプのワクチンの場合、
「障害がずっと後になってから現れることが多い」
ことを次第に知っていったからです。
CDC のワクチンの有害事象報告に寄せられる報告は、おおむね「接種直後から、長くとも 1ヶ月後くらい」までのものが多く、ワクチン接種との関連が明らかにわかる期間のものが多いです。
しかし、たとえばですが、
「ワクチン接種から 3年後にガンや自己免疫疾患になった」
などの事例を、ワクチンによる有害事象だと報告してくる医療関係者が果たしているのだろうか? と。
おそらく、いません。
つまり、中長期の後遺症や有害事象には、どのみち対応できるシステムではないのです。
それでも、CDC ワクチン有害事象報告に寄せられた事例が「全体の 1%未満」と考えると、その実際の数字はすごいものだろうなとは思います。
たとえば、以下は最近のワクチン有害事象報告のデータです。
2025年1月31日発表のCDCワクチン有害事象報告
VAERS
・死亡事例 3万7,869 件
・永久的な障害 7万2,003 件
・総有害事象数 192万1,131 件
などとなっていまして、これが全体の 1%未満だと考えると、実際の短期の有害事象の数はおびただしいものだったのかもしれないと思います。
しかし、今後、仮に報告数のパーセントが実際に正しいものと近づいたとしても、やはり、
「長期の有害事象が報告されることはない」
ことは避けられないと思われます。
避けられないというより、「因果関係がわかるわけがない」のです。
理屈や理論では、因果関係を証明することはできるかもしれないですが、実際のワクチンとの関係を 1人1人に当てはめることは無理です(対象が何百万人もいるため)。
10年後などの遠い将来、もしかすると、そのような因果関係が証明されて、正式に薬害として認定される可能性もないではないかもしれないですが、RFKジュニア氏の長官の任務期間は、普通なら 4年間。
その中でワクチン有害事象報告システムを完ぺきなものとすることは、非常に難しいことだと思わざるを得ません。
米メディアが、ワクチン有害事象報告システムを透明なシステムにするために、以下の点を挙げていました。
1. 医療提供者による報告義務
2. リアルタイム監視とデータ共有
3. 独立した監視
4. データへの公開アクセス
5. ワクチン被害に対する補償
6. 患者と保護者に対するより包括的なインフォームドコンセント
確かに、こういうことは大事でしょう。しかし、それでも、遅効性の有害性や長期の障害事象についての証明は著しく難しいと共に、実際は、「長期的な被害のほうが大きい」ことも確かだと思われます。
その問題をシステムとして克服するのは事実上不可能ではないかと。
そもそも、アメリカは過去 30年で以下のように、さまざまな疾患がすさまじく増えています。
米国の30年前からの各種疾患の増加率
indeep.jp
こういうことも、因果関係を「ひとつひとつ検証する」ためには、あまりにも膨大な検証の年月がかかるかと思います。
まして、「老衰が増えて、人々の寿命が縮む」などの何十年単位の影響など考慮しようがありません (In Deep の参考記事)。
RFKジュニア氏には頑張ってもらいたいとは思いますけれど、現実の壁が立ちはだかりそうです。