2014年に極渦の崩壊で北米の一部は極端な寒波に見舞われました。 earthreview.net
極地の上空の成層圏を巡回している冷たい大気の渦を「極渦」と呼びますが、北半球の極渦に異常が起きているようです。
今年の夏、まず「南極」の上空で「成層圏突然昇温」という異常が起きていたことを記したことがありました。
気象メディアであるシビア・ウェザー・ヨーロッパのアナリストは以下のように述べていて、数ヶ月後に「北半球にも影響が出る可能性がある」としていました。
成層圏温暖化のような大規模な現象により、南極上空で長期にわたる高気圧異常が発生する可能性がある。そして、その後、数週間から数か月の期間を経て、成層圏突然昇温現象の影響が北半球に現れる可能性がある。
その影響なのかどうかはわからないですが、今度は北半球の極の上空に異常が起きています。
10月の北極上空の極渦が「過去 40年間で最も弱い状態となっている」ことが観測されているのです。
極渦が弱いと、どのような影響があるかというと、以下の図では、左が正常の極渦の状態で、北極上空をある程度の強い状態で正しく循環していれば、冷たい大気は北極にだけに閉じ込められます。
正常な極渦(左)と弱い、あるいは崩壊した極渦(右)
NOAA
ところが、極渦が弱い、あるいはその循環が崩壊すると、上の右側の図のように「冷たい大気が北半球の広範囲に流入してしまう」のです。
2019年1月には、北米のカナダとアメリカ北部が、この「極渦の崩壊」の襲来を受けて、壮絶な寒波に見舞われました。以下の記事にあります。
(記事)アメリカとカナダが史上最悪の北極からの旋風「極渦」に見舞われている。氷点下50℃近くの場所も
地球の記録 2019年1月28日
極渦の崩壊は、この 10年くらい、たびたび起きているのですが、今年の極渦は、
「 10月としては過去 40年で最も弱い」
状態となっているということで、今の状態が続いた場合、北米やヨーロッパの一部、あるいはロシアや中国の北部の一部などに非常に冷たい大気が流入する可能性があります。
もちろん、今後、時間の経過と共に状況が変化する可能性はありますので、必ずしも、この冬の北半球の一部に強烈な寒波がやってくるという断言はできないですが、現在の状況からは可能性が高そうです。
なお、極渦が崩壊しても、日本あたりの位置にまでは影響を与えるものとはならないですので、日本の冬の気温とは関係はないと思われます。
それでも、極渦の状態が 40年ぶり、などという異常な状態となっている上に、今後さらに弱くなる予測がなされていますので、以前よりも広い範囲に影響が及ぶ可能性もあるのかもしれません。
シビア・ウェザー・ヨーロッパの分析を簡単にまとめていた報道をご紹介します。
10月としては40年ぶりの弱い極渦が北米とヨーロッパの冬の天候に影響を与える可能性
Weakest polar vortex for October in 40 years could affect winter weather across North America and Europe
watchers.news 2024/10/04
2024年に北半球に形成されている極渦は、過去 40年間で 10月初旬としては最も弱い状態にあり、北米とヨーロッパの冬の天候パターンに影響を及ぼす可能性がある。今シーズンの極渦の異常な動きは、米国東部、カナダ、ヨーロッパの一部で寒波の大発生に大きな混乱をもたらす可能性がある。
今年、北半球の成層圏に形成されている極渦は、10月初旬としては過去 40年間で最も弱かった。
通常、極渦は北極の冷たい空気を閉じ込め、逃げるのを防いでいる。
しかし、現在極渦は弱体化しており、大気循環に変化を引き起こしている。この弱体化により、極地から冷たい空気が逃げる可能性があり、北米とヨーロッパの冬の天候パターンに影響を及ぼす可能性がある。
気象メディア「シビア・ウェザー・ヨーロッパ」が発表したアンドレイ・フリス氏の報告書によると、この現象により、米国東部、カナダ、およびヨーロッパの一部で寒波が発生する可能性が高まる懸念がある。
現在、極渦は例年より小さく、わずかにシベリア方向にずれている。太平洋上では成層圏で高気圧異常が発生しており、渦の中心が押し出され、その強化が制限されている。
通常、極渦は 10月中に強まり、大気の下層まで完全に広がる。しかし、成層圏レベルで渦を取り囲む高圧異常が渦に圧力をかけ、渦の発達を妨げ、構造に影響を与えている。
10月の最初の 2週間で、渦はさらに弱まり、過去 66年間のこの時期としては最も弱い状態に達すると予想されている。
これは、大気の上層と下層の混乱を示唆しており、それが下層に伝わり、気象パターンが変化する可能性がある。
グリーンランド上空の強い高気圧異常は極地の奥深くまで押し寄せ、渦を個々の領域に分割しそうになっている。同時に、北太平洋とアリューシャン列島の一対の高気圧と低気圧が成層圏にエネルギーを押し上げている。
極渦の強さと関係のある北大西洋振動(NAO)は、少なくとも 10月前半はマイナス値を維持すると予測されている。通常、NAO 指数がマイナスになると、米国東部全域で降雪や寒波が発生する可能性が高くなる。ただし、今後、このパターンが乱れる可能性があるため、米国での降雪や寒波の発生はまだ確実ではない。